第5回研究会

  • テーマ

「間合い: 同時性知覚と自他関係の生成」および一般

第5回研究会では、「間合い: 同時性知覚と自他関係の生成」というテーマを設け、主観的同時性の生成機序について研究されている宮崎真氏(静岡大学)、および、自己身体感覚と時間の関係について研究されている嶋田総太郎氏(明治大学)に招待講演をお願いしました。お二人の研究がつながることで見えてくる共創的な自他のあり方から、「間合い」について議論しました。「いま」という時間感覚がインターパーソナルに共有される中で自己と他者が共創されます。そのような非分離における分離という重層化された世界において「間合い」は時々刻々と立ち顕れるのです。そこで本研究会では、同時性知覚と自己身体感覚の関係に注目することで、自他関係としての「間合い」の生成メカニズムについて理解を深化させることを試みました。

  • 招待講演

    • 宮崎真氏 (静岡大学)

    • 嶋田総太郎氏 (明治大学)

  • 日時

2016年7月9日(土)12:30-18:10

  • 会場

東京工業大学すずかけ台キャンパス J2棟20階 中会議室

  • 共催

日本認知科学会研究分科会「知覚と行動モデリング (SIG P&P)」

  • プログラムおよび予稿

12:30-13:50 一般セッション (1)

12:30-13:10

「身体感覚に対する言語化の有効性を検証するための情報学的段階モデル」(予稿PDF)

山田雅敏 (常葉大学),砂子岳彦 (常葉大学),竹内勇剛 (静岡大学)

身体感覚を主観的に言語化する試行が,身体知の熟達に有効なツールであると報告されている.一方,残された課題として,先行研究では,教授者との間主観的インタラクション,言語化の統制やデメリットについて,十分に議論されていないことが挙げられる.そこで,本稿では,研究代表者のこれまでの研究成果の発展として,教授者の言葉による指導と,学習者の身体表現に注目し,身体知の熟達モデルを考察することを目的とする.

13:10-13:50

「日本人大学生の英語プレゼンテーションにおける効果的な間の取り方」(予稿PDF)

山下友子 (芝浦工業大学),冬野美晴 (九州大学),横森大輔 (九州大学)

プレゼンテーションにおいて、適切な「間」を取ることは重要な要素の一つである。本研究では、プレゼンテーションコンテストに出場した日本人大学生の英語スピーチを対象として、無音区間(ポーズ)および関連要素の定量分析を行い、その結果に基づき「間」の優れた取り方について考察した。具体的には、ポーズの生起位置・時間長・そしてポーズ中の非言語行動を分析し、これらとコンテスト審査員による評定との関連を示した。

14:00-15:20 一般セッション (2)

14:00-14:40

「多変量自己回帰モデルによる双方向インタラクションの定量的分析」(予稿PDF)

岡崎俊太郎 (早稲田大学)

実環境における社会的相互作用を定量的に分析するには,二者間でループする双方向のインタラクションを分離して考える必要がある。無意識の立位体動が見つめ合うだけで同期するというミニマルな社会的相互作用を対象に多変量自己回帰モデルを適用することで相手からの視覚姿勢制御量を定量化した。同制御を分離したことで,個人特性との関連性を解析することや,対等でない社会的相互作用の分析が可能となる。今後の展開を含め紹介する。

14:40-15:20

「共創のための気づきの共有 ―他者に化粧を施す時―」

天谷晴香 (東京電機大学)

顔に化粧を施す過程は、化粧品や化粧道具に触れた際の反応によって、顔の部位の形や肌の状態を認識していく過程でもある。他人の顔に化粧を施す時、どれだけそれらをよく認識できるかが出来上がりのよしあしに影響する。化粧品や化粧道具について理解している施す側と、自身の顔や肌について経験的な知識を持っている施される側の、互いの知識や認識がインタラクションの中で共有され、化粧の行程が進行していく。個々の知識やその場での気づきが共有されるタイミングとその伝達の方法について分析する。

※本発表はキャンセルされました.

15:30-18:10 テーマセッション「間合い: 同時性知覚と自他関係の生成」

15:30-16:30 招待講演 (1)

「主観的時間の確率論的最適化」

宮崎真 (静岡大学)

我々の主観的時間は事前に経験に応じて変化する.本発表では,時間順序判断における適応機構の一つとして,ベイズ推定に着目し,その理論モデルの概要と心理物理学的な観測例を紹介する.さらに,機能的共鳴画像,脳波,経頭蓋磁気刺激といった手法を用いたベイズ推定の神経基盤を探る試みを報告する.加えて,その研究過程で明らかになった触覚における主観的順序と主観的同時性の神経相関の違いに関する観測結果を紹介し,参加者とともに「間合い」について議論したい.

※講演資料は非公開となります.

16:40-17:40 招待講演 (2)

「自己と他者の脳内身体表現ダイナミクス」(講演資料PDF)

嶋田総太郎 (明治大学)

本発表では、自己と他者を区別する脳のメカニズムについて、多種感覚統合の観点から議論を行う。まず基本的な自己感とされる身体保持感と運動主体感について紹介した後、諸感覚間の時空間的整合性がこれらの自己感に与える影響について、行動実験および脳機能計測実験で得られた結果から考察する。さらに自己と他者の共有身体表現としてのミラーニューロンシステムについて紹介し、自他区別と自他癒合の脳内ダイナミクスについて議論を行う。

17:40-18:10 総合討論

18:30- 懇親会 (東京工業大学すずかけ台キャンパス内)