逃げようと思えば

ハリケーン「カトリーナ」のあと,680人のニューオーリンズの住民を対象にした世論調査で,なぜ嵐の前に避難しなかったのかという質問がなされた。回答はさまざまだった。実際に移動手段がなかったという回答は50パーセントを少し超えた。だがそれは最大の理由ではなかった。それほどひどい嵐だとは思わなかった,という回答がもっとも多く,64パーセントにのぼったのだ。実際,「ヘンリー・J・カイザー・ファミリー財団」や「ワシントン・ポスト」紙のために行われた調査結果によれば,避難しなかった人たちの半数は,本当にそうしたいと思えば立ち去る手段を見つけることができた,と振り返っている。つまり,重要なのは移動手段よりも動機づけだったのだ。

アマンダ・リプリー 岡真知子(訳) (2009). 生き残る判断 生き残れない行動:大災害・テロの生存者たちの証言で判明 光文社 pp.71-72