災害報道の特徴

大事故が起きたあとの論評では,小さな障害が無数にある状況で真の問題を見ぬく難しさを取り上げるべきなのに,そうした記事にはめったにお目にかかれない。当事者である会社や関係官庁も,事故当時はまだ他にいくつも安全問題があったなどと,宣伝しようとは決して思わない。マスコミは,同時に存在していた他のさまざまな問題について耳にしていたかもしれないが,そんな事実は記事には邪魔なだけだ。記者は,明快で人びとをひきつけるテーマ,すなわち「取り返しのつかない問題につながる初期の徴候に気づきながら,経営者は何も対策を講じなかった」というようなテーマを探しているのだ。

ジェームズ・R・チャールズ(著) 高橋健次(訳) (2006). 最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか 草思社 pp.293.