芳賀 尚樹 (はが なおき) 

准教授(環境物質科学分野)

研究室で行っている研究の内容

  私の教育研究分野では,環境中のさまざまな有機化合物が光によって引き起こされる反応を研究しています。例えば,ヒトの DNA の成分である核酸塩基は,紫外線と反応して,二量体と呼ばれる化合物になります。この反応が起こると,遺伝情報が正確に伝わらないので,太陽光の紫外線を浴びることは生物にとって非常に有害です。また,ゴミ焼却炉から大気中に放出されて問題になったダイオキシン類は,太陽の紫外線によって簡単に反応して,複雑な化合物を生成することがわかってきました。環境中には,まだ誰も発見していない光化学反応が無数に眠っているはずであり,それらを探索することが研究の目的です。

主な担当授業科目とその内容

(1)有機化学(2年次前学期)
高校の有機化学をさらに発展させて,理系の大学生として必要な最低限の実力を身につけることを目的としています。高校で学ぶ有機化学は,どちらかというと暗記科目の印象が強いですが,大学の有機化学は官能基の性質や反応を理詰めで講義します。例えば,エステルが加水分解されるのはなぜか,ベンゼンが付加反応しないのはなぜか,フェノールがアルコールよりも酸性なのはなぜか,というような問題を考えます。この講義を通して,化合物の性質や反応を合理的に理解できるようになることが目的です。

(2)生化学(2年次後学期)
前半では,生体を構成するさまざまな成分,すなわち糖類,脂質,タンパク質,核酸,酵素,ビタミンなどの基本的な性質に関して講義します。生化学の理解には有機化学の基礎知識が不可欠であることに気づかれると思います。講義の後半では,それらの成分の代謝,すなわち生体内で合成されたり分解されたりする反応に関して講義します。生命活動は,実に驚くほど多くの化学反応によって成り立っていることが理解されると思います。

(3)環境資源有機化学(3年次前学期)
2年次の有機化学の発展コースとして位置づけられる科目です。官能基ではなく,反応の種類によって分類した有機化学を学びます。同じ対象を異なる視点から眺めることで,より深い理解を得ることが目的です。

(4)化学実験(化学系基礎)(1年次後学期)
環境資源科学の専門家になるために不可欠な,基本的な化学実験の素養を身につけることが目的です。環境資源科学以前に,理系の大学生ならば誰でも修得しなければならない化学実験の基礎の基礎を, 8 項目の実験によって学びます。必修科目ですので,単位を落とすと卒業できません。尚,この科目と環境資源科学実験 II は,化学系の複数の教員が分担します。

(5)環境資源科学実験 II (化学系応用)(2年次後学期)
化学実験で学んだ基礎技術をもとにして,環境資源科学の各分野に典型的な化学実験 8 項目実施し,環境資源科学における化学実験の特徴を修得します。一連の化学実験を通して,試薬や器具の取り扱い方などの技術を身につけるだけでなく,自然科学に携わるために不可欠な,注意深く観察し理論的に考える習慣が養われることを期待します。

環境資源科学科を希望する受験生に向けて

 この HP を読んでいる皆さんは,程度の差はあっても,環境や資源に関心をもっていることと思います。中には,既に自分の将来に明確なビジョンをもっていて,環境や資源の分野に関わった職業に就きたい,と決意を固めている人もいるかもしれません。そうした強いひた向きな気持ちが大切であることは確かですし,非常に立派なことだと思います。しかし同時に,若いうちはできるだけ視野を広くもって欲しいと思います。大学に入る前から自分の将来をあまり限定してしまわない方がよい。視界が狭くなると,本来なら見えることも目に入らなくなり,せっかくの可能性を自分から捨ててしまう恐れがあります。視野をできるだけ広くもって,あらゆる可能性を考慮しながら,しかし情報の洪水に流されることなく,時間をかけて自分の進む方向を決めて欲しいと思います。環境資源科学は,あなたたちが進むかもしれないたくさんの選択肢の一つにすぎません。

 もう一つ。どの分野に進むにせよ,基礎学力を十分につけてから大学に来て下さい。高校の教科書を十分に理解しないまま大学の授業に臨む学生さんが,最近数年で確実に増えていることをひしひしと感じていますので。

より細かい情報

居室: 8 号館 106 号室
専門分野:一般化学,有機化学,光化学