智史(なかば さとし) 

准教授植物環境分野)

研究室で行っている研究の内容

 現在、地球温暖化や資源、エネルギー問題が地球規模の問題となっており、それらの問題の解決策を模索する中で、再生産可能な資源である木質資源への関心が高まっています。木質資源は、樹木が光合成により大気中の炭素を固定した結果として生み出される細胞の集合体ですので、構成要素である一つ一つの細胞の性質が木質資源全体の性質を決定しているといえるのです。したがって、木質資源を構成する基本単位である細胞が、どのようなメカニズムで生み出されるのかを詳しく知ることは、木質資源の性質をより良く理解することだけでなく、さらには私たちが木質資源をもっと有効利用できるような新しい技術を生み出すことにもつながります。そこで私の研究室では、細胞が生まれてから死ぬまでの一生を通じて、細胞レベルでどんな変化が起こるのかを明らかにするという研究を行っています。

主な担当授業科目とその内容

 私は、TATⅡ生物学実験(1年生後期)と環境資源科学実験(3年生前期)という学生実験と森林資源科学(2年生前期)と森林資源形成学(3年生前期)という講義の一部を担当しています。木質資源の大部分を占める樹木の幹には、光合成によって大気中から二酸化炭素として取り込まれた炭素の多くが固定されています。私の担当する実験では、樹木の中身を解剖し、顕微鏡による細胞レベルの観察を行うことで、樹木の幹がどのような構造をもつのか、幹を構成する細胞がどのようにして生み出されるのかを理解します。さらには、地球上には様々な種類の樹木が存在していますが、種それぞれの幹の構造の違いを知ることで、重い、軽い、腐りやすい、腐りにくいなど、私たちが利用する際の特性の違いがどのようにして生み出されているのかを理解します。加えて、木質資源の形成について細胞レベルでの視点で理解することの重要性や樹木に特有な生命現象の中でも特に木質資源の特性に関わる利用上重要なものについて講義を行っています。普段何気なく眺めている樹木の中身をマイクロメートルの世界という普段とは違うスケールで覗いてみることで、身近に存在する樹木が違ったものに見えるかもしれません。

環境資源科学科を希望する受験生に向けて

 環境資源科学科では、環境問題や資源問題を自然科学の視点から解決するための基礎的な知識や実験方法について学ぶことができます。大学で勉強する中では、これまで皆さんが学校で勉強してきたものより専門的な知識を身につけることも当然重要ですが、主体的に学ぶ姿勢を身につけるということがとても大切です。特に、卒業研究では、実際に自分で最先端の研究に取り組むことができます。研究を通じて、自分で課題を発見し、多くの情報の中から必要な情報を収集し、試行錯誤しながら解決策を見出していく能力を身につけます。また、本学科では基礎研究も行っており、どのようにして自然界が成り立っているのかを理解すること、さらには、すぐに結果が出るものにとらわれず、物事を本質的に理解しようとする価値観に触れることも重要だと思います。私は、樹木の研究に携わっていますが、樹木が同じ場所で数十年、時には数百年もの間、外界から様々なストレスを受けながらもたくましく生きていく仕組みがいかに精巧なものであるかに驚かされています。加えて、大学ではこれまでの高校生活とは異なり、様々な背景や考え方をもった学生が集まってきます。異なる価値観に触れることで学ぶことも多く、皆さんの将来の糧となると思います。人と人とのつながりを大切にするという視点も忘れずもっていてください。  

   環境問題や資源問題の解決は一筋縄とはいきませんし、将来これまでになかった新たな問題が生じる可能性もあります。刻一刻と変わりゆく状況の中でも、自然科学の視点をもって物事を本質的に理解し、解決策を見出すことができる人材を育て、社会に輩出していくのが私たちの使命だと考えています。皆さんが、環境資源科学科で大いに楽しみながら学び、社会で活躍されることを期待しています!

より細かい情報

研究室website   http://web.tuat.ac.jp/~tokusei/
研究室名  木質資源特性科学研究室
居室  府中キャンパス1号館 3 階 304 号室
専門分野  樹木生理学、細胞生物学、木材解剖学