高田 秀重 (たかだ ひでしげ)
教授 (環境汚染解析分野)

研究室で行っている研究の内容

 環境問題というと,すぐにみなさんの頭に浮かぶのは環境汚染だと思います。私たちの研究室ではまさに,その環境汚染を調べています。合成洗剤,農薬,環境ホルモンなど様々な汚染物質による川や海の汚染を調べています。フィールドでの調査が多いです。東京湾やその周辺の河川によく調査に行きます。私たちのもう一つの重要なフィールドはアジア・アフリカの川や海です。ベトナム,ラオス,カンボジア,マレーシア,インド,ガーナ,ケニア,南アフリカ,モザンビークなど,世界中の環境汚染の現場に学生さんと一緒に環境調査に行っています。環境を保全していくためには,まずはその実態を知ることが必要です。すなわち,どこがどれくらい,どのような原因で汚れているのか,それを知ることが,汚染を予防したり,修復していくための基礎になります。環境保全に一番必要なボトムを研究しています。

主な担当授業科目とその内容

 学部1年生対象の講義「地球化学」を楊先生,木庭先生,畠山先生と一緒に担当しています。この講義で私は,水の循環や元素の循環について講義をしています。地球温暖化,東京湾などの赤潮・青潮,地下水の汚染,などについてお話しています。この講義の中では「マーカーを使った汚染源の推定」についても話します。これは環境鑑識という分野で,探偵が指紋や様々な証拠から犯人を割り出していくのと似ていて,環境中の有機化合物の測定から,環境汚染源を突き止めたり,環境変化の原因を明らかにしていくものです。日本では,本学の環境資源科学科にしかないユニークな講義です。

学部2年生の後期には「環境汚染化学」という講義を担当しています。この講義では石油汚染,ダイオキシン,環境ホルモン,医薬品・抗生物質,プラスチックなど,様々な化学物質による汚染について最新の研究成果を盛り込みながら,体系的に解説していきます。地球規模での汚染物質の大気輸送,生物濃縮,汚染物質の食物連鎖を通した増幅,生殖異常,などの環境汚染について,化学物質の物性に基づき解説していきます。一つ一つの汚染物質のことがわかるようになるだけでなく,環境汚染という現象を体系的・法則的に捉える,すなわち,環境汚染のサイエンスの講義である点が,他の大学や他の学科にないユニークな講義です。

環境資源科学科を希望する受験生に向けて

 人類がこれまでに合成した化学物質の数は数千万種にのぼります。その多くは,私たちが健康で快適な暮らしを送るために,必要なものです。しかし,残念ながらそれらの化学物質の一部が環境に放出され,汚染を引き起こしています。私たちは増え続ける化学物質とうまくつき合っていけません。そのための,重要な方法が,環境モニタリングです。環境に漏れている化学物質をいち早く見つけ,それに基づく汚染防止対策を講じていくことが必要です。私たちの研究室では,そのような環境モニタリングを地球規模で,世界各地のボランティアや NGO のみなさんと協働して行うインターナショナルペレットウォッチ( http://www.pelletwatch.org/ )という世界的な活動を行っています。海岸に落ちているプラスチックの粒を拾って,農工大の私たちの研究室に送ってもらい,それを最新の機器を使って分析し,その結果をホームページで公開しています( http://www.pelletwatch.org/maps/map-1.html )。地球全体の汚染を世界中のボランティアと一緒に監視しています。インターナショナルペレットウォッチを世界ではじめに提唱し,実行しているのが,私たちの研究室です。みなさんも,農工大の環境資源科学科に入り,世界中の方と手をたずさえて,地球環境を保全する活動に参加しませんか。

より細かい情報

研究室ホームページ: http://www.tuat.ac.jp/~gaia/Index.html
インターナショナルペレットウォッチ( http://www.pelletwatch.org/