分科会3
ろう韓国人トランスジェンダーが語る
アメリカ移住経験
Trans gendered Korean Deaf man to share his experience and challenges
Wonha Park(パク・ウォンハ)・山本芙由美
翻訳:Deaf LGBTQ Center
2月2日(金) 16:30~18:00
※演者のパクさんは交流会には参加されません。
※翻訳担当のDeaf LGBTQ Centerの山本芙由美さんは交流会に参加予定です。
内容
パク・ウォンハ(38歳)は、ろう者の韓国人トランスジェンダー。10年前に韓国からアメリカに移住し、現在はサンフランシスコのベイエリアに住み、ケアプロバイダーとして働いている。自身のカミングアウトストーリーを語り、他のろう者クィアやトランスジェンダーのアジア人・太平洋諸島の人々に、自分たちは孤独ではないことを知ってもらいたいと願っている。
Wonha Park, 38, is a Deaf Korean transgender man. He moved to the United States from Korea 10 years ago and currently resides in the San Francisco Bay Area, where he works as a care provider. In this video, Wonha shares his coming-out story and hopes it will inspire other Deaf Queer and Trans Asian and Pacific Islanders to know they are not alone.
登壇者情報
Wonha Park(パク・ウォンハ)
2019年9月1日からBAADA(Bay Area Asian Deaf Association)の会長に就任しましたパク・ウォンハです。2014年に留学生として韓国から渡米した際、サンフランシスコのベイエリアで多くの人と出会いました。何人かの友人たちは私に夢を追いかけるよう励ましてくれ、私は自分の夢のために一生懸命がんばってきました。現在はフルタイムで働きながら、カリフォルニア州立大学イーストベイ校(CSUEB)で勉強しています。
I am Wonha Park, and I’ve been the president of BAADA (Bay Area Asian Deaf Association) since September 1st, 2019.
When I moved to the United States from South Korea as an international student in 2014, I met many people in the San Francisco Bay Area. Some of my friends encouraged me to pursue my dream, and I have worked so hard for my dream. Currently, I am working full-time, and I am studying at the California State University of East Bay (CSUEB).
山本芙由美(やまもとふゆみ)
Deaf LGBTQ Center代表。シスジェンダーのクィア。兵庫教育大学大学院博士前期課程修了。日本財団の支援を得て2015-2017年ギャロデット大学(米国)で、ろうLGBTQ 学を専攻、修了。現在『ろう×LGBTQ+サポートブック』の発行や講演、原稿執筆、ろうセクシュアルマイノリティ全国大会運営(第5回大会まで)、東南アジアろうLGBTQ会議等、幅広く活動。
実行委員からのメッセージ
「学校での話し言葉が理解できず、韓国手話も理解できず、私は自分の人生には価値がないと感じるようになリました。」パク・ウォンハさんは、韓国で生まれ幼いころの事故で聴覚を失いました。両親が一般校に入学させたため、音声言語も手話言語も不十分な理解の状況に長年置かれていた苦悩を振り返ります。しかし、強い意志によって、ろう学校での学びを実現。一方で、自分の女性らしくない振る舞いのせいで頻発する、名前のない困難に悩まされます。アメリカへの留学からのアメリカへの亡命、精神病院への入院、グリーンカードの取得まで、紆余曲折を経ながら進む姿は心に迫ります。そして、山本芙由美さんとの出会いがきっかけで、やっとたどりつけたトランスジェンダーという概念、アイデンティの獲得、仲間たちとの出会い。現在「Bay Area Asian Deaf Association(BAADA)」の会長を務めるウォンハさんの、自信に満ちた表情は、ご自身の言葉が未来を切り開くことを体現しているようです。「勇気は幸せとともにやってきます。」
後半は、山本芙由美さんが大学の先輩だったウォンハさんとの思い出について語ります。大学生活やアメリカ横断旅行、その過程で遭った差別事件など、アメリカのろう者の状況について知ることができる貴重なトークですので是非ご参加ください!インターセクショナリティについて考えたい人にイチ押しの分科会。
【話に出てくる単語の解説】
ツールワークス:ツールワークスは、1975年にサンフランシスコで設立された、障害を持つ人々が仕事と住居を見つけるのを支援する非営利団体である。ツールワークスは、地域社会への統合、支援付き雇用、住宅提携、職業紹介、地域生活、清掃員訓練などのプログラムを提供している。
「誰かに完璧な仕事を見つけ、誰かを新しい家に引っ越しさせ、建物をきれいに保ちます。これが私たちが毎日行っていることです。雇用主の皆さん、私たちはあなたのために労働力を用意しています。障害のある方向けのサービスをご用意しております。ビル管理者の皆様、私たちはあなたのためにスタッフを用意しています。1975 年以来、ベイエリアを代表する社会的企業として、Toolworks は障壁を取り除き、コミュニティ内のつながりを構築することに取り組んできました。私たちのサイトをチェックして、自分を機会に結び付ける方法を見つけてください。」
ツールワークス ホームページより
報告文
ウォンハさんのお話は、ろう者としての苦難とトランスジェンダーとしての孤独や困惑に悩んだ子ども時代を経て、アメリカ移住を決心し決行する過程や、山本さんとの出会いをきっかけにジェンダーアイデンティを獲得し、仲間と出会う喜びが臨場感あふれる手話で語られました。Bay Area Asian Deaf Association(BAADA)の会長として、会の活動内容や、仲間と共に活躍する現在のウォンハさんの様子も写真を交えて報告頂きました。
その後、山本芙由美さんからウォンハさんとの当時の思い出が語られました。世界中から来る、ろうの留学生との言語と文化を超えて協力し合いながらの学生生活や、日本では行われていないろう者によるろう者への高等教育を経験できたことは、本当に良い機会だったそうです。また、アメリカというまだまだ白人至上主義社会で、アジア人として、移民として、ろう者として、クィアとして生きることはまさに、インターセクショナリティの複雑さに身を置くことでした。印象的だったのは、Deafhood(デフフッド)という概念です。それはろう者としてどのように自分を世界に位置づけ、人生を生きていくかという探求の態度です。ウォンハさんもデフフッドという概念を通じて、自分の使命を見つけ出したようです。
Q&Aでは多くの質問がでて、韓国のLGBTQの状況や、情報アクセシビリティの話、同じアジア人や、LGBTQ当事者が手話通訳者になることのニーズなど、いろいろなトピックにコメント頂きました。日本においても、ろう者として、クィアとして、インターセクショナリティを生きる人々をつないで行く活動がまだまだ必要ということで、「ろう×LGBTQ+サポートブック第三弾」の紹介もされました。
■参考サイト
関連サイト(Youtube動画)
Deaf Trans Asian Coming Out Stories: Wonha Park