分科会9
神道とLGBTQ
〜神社で同性と結婚式を挙げて感じた本来のあり方〜

ケータ、岩本健良(金沢大学准教授)

2月4日(日) 16:30~18:00

オンライン
会場都合により、ライブビューイングはありません
手話通訳/日本語字幕/アーカイブあり

内容

2022年6月神社本庁の政治部門、神道政治連盟のLGBTQ差別冊子配布事件を機に、神社本庁のLGBTQに対する差別が顕になった。
神道政治連盟のHPや機関紙には、同性婚反対、LGBTQパートナーシップ制度反対、トランスジェンダーに対するバッシング、選択的夫婦別姓制反対と、多様な性や家族の在り方に明確に反対していることが浮き彫りになってくる。
実際に、今回の登壇者のケータは2023年に地元の尼崎えびす神社で同性のパートナーと結婚式を挙げることができたが、それに至るまでに全国の神社32社に断られた。神道ってそんな偏屈な宗教だったんだっけ?
本分科会では、金沢大学准教授岩本さんと共に、神道とLGBTQの在り方について考えたい。

登壇者情報

ケータ(けいた)

5年間交際し、3年間パートナーシップ宣誓制度を利用している同性のパートナーと、ふとした経緯で、全国の神社32社に断られながらも、尼崎の神社で結婚式を挙げる。どこで祈れる(旧・私のお賽銭のゆくえ)プロジェクトのメンバー。

 岩本健良いわもと たけよし

金沢大学人文学類准教授(専門:ジェンダー学・教育社会学)。オフィストイレのオールジェンダー利用に関する研究会座長・LGBT法連合会監事・LGBT支援いしかわ会議世話人などとして、研究・教育・調査と実践両面からLGBTQのサポートに携わる。

関連資料、関連サイト、参考文献

企画者からのメッセージ

「同性愛は先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」、「個人の強い意志で依存症から抜け出すことは可能」、「同性愛からの回復治療の効果が期待できる」

そんな文言が書かれたLGBTQ差別冊子が、2022年6月神社本庁の関連団体、神道政治連盟と自民党国会議員が参加する会合で配布されました。

そんなニュースに、演壇者の私は一当事者として、大変なショックを受けました。

「神社って僕たちの存在を差別してるの!?」


いつか同性のパートナーと結婚式を挙げるなら神社で。和の文化が好きで、神社で御朱印をもらったり、和装をするのが好き。いつか結婚式を挙げるなら、タキシードよりも絶対紋付袴のが似合うようなあ…。そんな細やかな願いが暗雲に。

神社で同性のパートナーと結婚式ができるのかどうなのか。実際に、全国の神社にFAX, 電話、直接訪問して確認しました。結果、32社に断られてしまいました。

なんでこんなことになっているんだろう。


この分科会を見て下さったら、なぜ多くの神社は同性結婚式を断るのか、神道政治連盟って何なのか、神道はLGBTQを差別しているのかどうか、様々な気づきがあると思います。

本分科会では、金沢大学准教授岩本さんと共に、神道とLGBTQの在り方について、考えます。

奇跡的にも、地元の神社が引き受けてくれて無事に結婚式を挙げることができました。その動画も流しますので、神社で結婚式を挙げてみたい方はもちろん、神社で同性同士で結婚式を挙げるってどんな感じかな〜とご興味ある方、ぜひご覧くださいませ。

報告書

報告者:濱崎はるか

 

ケータさんは、神社で同性のパートナーと結婚式を挙げることを求めて、積極的に活動しました。その経験を共有しました。

2022年に神道政治連盟が差別冊子を配付した事件から、LGBTQとしてどの神社に初詣ができるのかを問う署名を集めたり、同性の結婚式ができるのかを問い32社の神社にFAXを送付したりしました。電話でも問い合わせたり、直接訪問もして質問しましたが、「神道で結婚式は男女でするものとされている」「神道の教義とはずれる」(※1)などと断られてしまったそうです。

これらの苦難を乗り越え、ケータさんは尼崎えびす神社で、同性パートナーとの神前結婚式を挙げました。宮司さんがLGBTQとしての悩みや辛さに親身に寄り添いながら、挙式にあたっては名前の呼び順や祝詞など、異性カップルと異なる部分もきめ細やかに配慮してくださったそうです。

 

岩本さんは、現在では当たり前となっている神社の風習をもとに、神道が実は社会のさまざまな変化に対応してきたこと(※2)を明らかにしながら、差別的な政治活動ではない、宗教が本来あるべき姿勢を問いかけました。

宗教/宗教法人は、差別やヘイトとは異なる立場で、困難を抱える人に寄り添い支えるべき組織として期待されているはずだ、と岩本さんは強調します(※3)。しかしながら、神道政治連盟は差別的な政治活動を継続してきました。神社の公共性と公益性について考える時、今の矛盾した状況からどのような共感に基づく支え合いや交流があるのか、宮司、神職だけでなく神社や信仰に対する向き合い方を参加者に問いました。

 

※1 神道は、創始者によって明確に定められた教義や教典がありません。

※2 たとえば、七福神の7柱のうち6柱の神様がインドや中国などほかの地域をルーツとしています。

※3 LGBTQへの支援を示す宗教団体もあります。全日本仏教会はレインボーステッカーを作っています。


参加者の感想

「実家が大阪で九州在住なので、地元の神社がいっぱい出てきて、ショックでした…

 

ケータさんたちの結婚式に関する報道はリアルタイムで見ていました。関連の署名もしてました。それなりに当事者意識を持って情報を追っていたつもりでしたが、甘かった…

 

姉が生まれたときお宮参りに行った、高校入試も大学入試も、試験といえば必ずお参りした、いとこの結婚式に私も参列した大阪天満宮。

パートナーと離れて住んでいたころ、パートナーの住んでいる九州に遊びにきたとき一緒に行った太宰府天満宮も、宇佐神宮も、宮地嶽神社も。

自分の両親と家族がこちらに遊びにきたときに、みんなで行った宗像大社も。

とくに信仰が深いとかなくても、人生の節目や転機のけっこう大事なところにいつも神社があったんだなと改めて気づきました。そんな大切な場所から、LGBTQは排除されてたんだなと…いま書いていて改めて涙出てきた。なんでこんなこと。悔しい。悲しい。

話聞いただけの自分でさえ、こんなにも痛くて苦しいのだから、お二人はどんなに苦しかったことかと…

 

なのに黙らない、あきらめない姿勢に感銘を受けました。じぶんもあきらめちゃいけないわと思いました。

強大な権力のにおいがしてきてからも、あきらめていない姿勢がすごいし、応援したいし協力したいと思いました。

 

岩本先生からこの「権力のにおい」について、根拠をあげて明快にご説明いただけたこととあわせて、すばらしい分科会だったと思います。交流会でどなたかが「帝国主義と宗教の関係について興味がある」とおっしゃっていましたが、昨今のこの日本の状況は既に帝国主義と宗教の癒着なんじゃないのか、とおそろしくなりましたし、こんな流れなんとか止めなければならないでしょう。お教えいただいたことに本当に感謝します。これを機にいっそう報道などに気を配り、勉強を続けようと思います。

 

初詣にも行けやしないなんてポイズンです。福岡だけかな?九州には「三社参り」という習慣があって、初詣は3ヶ所回ることになってるんです!が!こんな状況で3つも行ける神社ないじゃないですか!ひどい!

神社本庁にばれないように、神社本庁に属さない神社リストや、LGBTQフレンドリーな神社リストをこっそり流通させる手段とか、ほんと何かないですかね。

ほんと初詣にも行けやしないなんてポイズンです。とりあえずお寺にいけばいいのかな…福岡だけかな?九州には「三社参り」という習慣があって、初詣は3ヶ所回ることになってるんです!が!こんな状況で3つも行ける神社ないじゃないですか!ひどい!

レインボーステッカー貼ってるお寺もわかるといいな。インスタとかでハッシュタグあればいいのかも(既にあったら教えてください)

ケータさん、九州でお待ちしています!!」

「ケータさん、岩本さん、どちらのお話も良かったです。いくつもの神社から断られ、あるいは無視されたケータさん、きつかったと思いますが、地元の尼崎えびす神社へ安心してお参りできるようになり、結婚式をあげることもできた… 話を聞いていて、良かったなあと思いました。岩本さんのことは、社会学方面でお名前だけは存じていましたが、さすが社会学のお話で、こちらも良かった。オンラインで少しずつ視聴していて、ケータさんのもう一つの話もまだなのですが、そちらも近いうちに視聴します! まだ月末まであるので、周囲の人にもこの分科会アーカイブを紹介しようと思います。ありがとうございます。」


報告者から一言

実行委員の濱崎はるかです。実は私は結婚式という祝祭行事がどうも苦手でした。が、この分科会にかかわって、ケータさんのお話を聞き、「結婚式を挙げたいという人がいるのに、その選択の自由が奪われていることはおかしい」と思うようになりました。岩本さんの解説の中にときどき挟まれる一見ギャップのある引用は、わかりやすいだけでなく、核心を鋭く突いています。今回は神道や宗教の話が中心となりましたが、岩本さんは本当にさまざまな現場でLGBTQのサポートに尽力されています。多くの方々に届きますように!