分科会17
研修報告会 アメリカで感じた強い風
〜IVLP結婚平等への闘いを通して〜
心韻(ろい)
2月11日(日) 13:30~15:00
現地会場とオンラインのハイブリッド
手話通訳/日本語字幕/アーカイブあり
手話通訳/日本語字幕/アーカイブあり
内容
報告者紹介
心韻/ろい/LOY
京都レインボープライド代表
在日韓国人、トランスジェンダー/FTM
講演や自身の持つラジオ番組を通して、
LGBTQ+の当事者などの生きづらさ等について発信したり
交流会等を通じて当事者支援活動を行なっている。
IVLP=インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム
日本と米国の相互理解を政治・経済・教育・文化などあらゆる分野で促進し、
人物交流を通じ広範な種々の課題について両国が共有することを目的とするプログラム
その中でも、社会人・専門家対象のプログラムで、政治・経済・文化等、
各分野のリーダーによる3週間の米国研修。
2023年9月16日〜10月8日に行われた研修の報告を行う。
登壇者情報
心韻(ろい)
アーティスト。 6月26日生まれ。兵庫県出身。B型。 男性的でもあり女性的でもある両声を持つ。 在日韓国人で日本語、韓国語のバイリンガルシンガー。
トランスジェンダー/FTM。
幼少期から自分の性別・身体に違和感があり、子供の頃から自分は周りとは違うと感じていた。
現状の日本の、性別の戸籍変更制度に疑問を感じており、SRSやHRTは施さず産まれたまま、ありのまま生きている。
LGBTQ+イベントのオーガナイザーなども務め、トランスジェンダーの当事者である。
京都レインボープライド(KRP)代表。京都レインボープライド(パレードフェス)主催
LGBTQ+コミュニティ「そらにじ京都」代表。
ラジオ・パーソナリティ
エフエムひめ放送局 番組名「ロイネイロ」 毎週日曜日20:00〜21:00放送。
書籍(共著)
『LGBTQの家族形成支援 ― 生殖補助医療・養子&里親による』信山社出版株式会社
発表者からひとこと!
日本ではどうして同性同士で結婚できないんだろう。外国ではできてるのに日本は遅れてる…!
そう思うのは簡単ですが、それは本当なのか!?
率先して同性婚が認められたかに思えるアメリカでも、全米で同性婚ができるようになったのは2015年のことでした。
そして、そこに至るには本当に長い長い歴史があり、そのためには強い風を吹かせる必要があったのです。
その長い長い歴史と、そこにいた人たち、そして今もアメリカで風を吹かせ続けている人たちのこと、そして、アメリカの経験を日本で同性婚を実現するためにどのように生かしていくかについて考える分科会です。
京都レインボープライド代表・トリリンガルシンガーロイが、日本語、韓国語、関西弁の3か国語でお届けします。
報告文
アメリカの制度として国務省人物交流プログラムというものがあります。国務省というのは日本の外務省のことで、国務省の事業として、日本とアメリカの相互理解を促進して、人物交流を通じ、たくさんの課題について両国が共有することを目的とするプログラムが毎年行われています。その中でも、社会人・専門家対象のプログラムがあり、それが、IVLP(インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム)です。政治・経済・文化等、各分野のリーダーによる3週間のアメリカでの研修になります。
LOYさんが参加したのは、2023年9月16日から10月7日までの「fight for marriage equality」(ファイト・フォー・マリッジ・イクオリティ、結婚の平等へのたたかい)を学ぶ研修でした。訪問地は、ワシントンDC・ボストン(マサチューセッツ州)・デモイン(アイオワ州)・アトランタ(ジョージア州)の4都市です。
最初にアメリカでの結婚平等についての歴史を振り返りました。以前は人種差別のため、多くの州に異人種間結婚(白人と有色人種が結婚すること)を禁止する法律がありましたが、人々が裁判に訴え戦った結果、人種に関係なく結婚できる平等を獲得しました。同性婚の成立の過程でも多くの人が訴訟を起こし戦った歴史があります。この研修は、同性婚運動を牽引した人たちに実際に会って話を聞く貴重な機会です。下記に研修の内容を抜粋します。
【ワシントン】
■セオドア=クリストフ教授連邦制に関する講演
「前進と後退を繰り返しつつも、戦いを続けることが重要」「結婚の平等が認められている社会であり続けるために、風を吹かせ続けなければならない」
■アンディ=ボー氏、レジナルド=グリア氏、ワリッド=ゼファー氏との懇談@国務省
■ワシントンDCジョージ・ワシントン大学ストレイダー先生
「最も過小評価されているグループの問題を解決すれば、大きな範囲の問題が解決される。」
■介護育児休業法などについての講義@労働省
【ボストン】
■GLBTQ・リーガル・アドボケイト・アンド・ディフェンダーズ(GLAD・グラッド)にてメアリー=ボナウト弁護士との面談
「もし伝統が何かを阻むなら、その伝統に今も従うべき理由があるのかを問うべきだ」
■アダム=キャンバー氏との面談@マサチューセッツ司法長官公民権局
■ホープ=フリーマン氏との面談@タフツ大学LGBTセンター
「州によってはLGBTQ差別が禁止されていない」
■スコット=ノックス氏との面談@ボストン平等基金
「LGBTQコミュニティのニーズに対応するために永続的な基金が必要」
【デモイン】
■LGBTQの権利擁護活動を行っている民間団体ワン・アイオワ訪問
■マーシャ=ターナス弁護士と面談
「結婚は、宗教ではなく、市民の契約である。民法上のその他の契約と同様に、平等でなければならない。」
「数字によって、コミュニティに大きな影響を与えていることを資料化して、企業を説得・協賛させている」
■モーラ=ストラスバーグ教授
■人種、宗教、SOGI(ソジ)などによる、雇用や住居における差別についての苦情申立てを受け付けるLGBTQ諮問委員会訪問
■アイオワ州議事堂見学
【アトランタ】
■ジェフグラハム氏@ジョージア・イクォリティ
■マリック=ブラウンさん他@アトランタ市役所
「クィアアート展:アトランタは非常にクリエイティブな芸術の街で、すべてのLGBTQアーティストを網羅しての展示をすることでLGBTQの権利擁護で力を注ぐ」
■ラムダリーガル:人権問題専門法律事務所で資金調達方法や他団体との連携などのお話
研修の間に、文化活動として博物館・美術館・水族館に行ったり、ミュージカルを観たり、ドラッグショーに参加するなど、観光もとても楽しそうな研修でした。
個人的には、ストレイダー先生の「平等が実現されれば、トランスジェンダーだけが利益を受けるわけではない。トランスの権利を保障すれば、女性の権利も保障される。女性の権利を保障するためにも、LGBTQを含めた少数者の権利保障が大事なのだ、ということを強調すべきだ。」という言葉が印象的でした。
参加者からの質問もたくさん寄せられましたが、時間切れでお答え頂けず残念でした。しかし、現地会場では参加者がLOYさんに直接質問し、報告内容をさらに深めることができたようで良かったです。
【参加者の感想】
ろいさんのアメリカの現状わかりやすく勉強なりました⭐︎同性婚認められたアメリカでも可視化していくこと声をあげて戦っていく(継続)必要感じましたv vもっとも過小値されてる問題を解決すれば多くの問題解決することば心に響きました♡
このような現地を知る旅行(文化活動も含めて^ ^)参加したい人多い思うので今後サクマイ大会オリジナルで研修旅行企画してほしいです⭐︎⭐︎
重なり合う差別、進展と後退を繰り返すという言葉など、学ぶことがたくさんありました。
とても楽しくお話を聞かせて頂きました。ありがとうございました。
こんな素晴らしいプログラムに参加できるのが羨ましいです。
貴重なお話しをありがとうございました。
法体系やさまざまな状況は日米で違うと思いますが、日本もアメリカの活動と連帯して協力しあうことはできないでしょうか。
同性婚について、EU圏では「多様な人間関係を認めよう」、北米では「家族という素晴らしいシステムから同性愛者が排除されているのは問題だ」というロジックで進められてきたとのことです。日本の同性婚推進では北米型の進め方を取っていますが、それはそれでカップル志向を強化するとも思います。いつも悩ましく思っています。