分科会12
LGBTQとキリスト教
寺田留架、早川かな、川口弾、もんた
2月9日(金) 16:30~18:00
オンライン録画+ライブQA
内容
信仰を持っている人が少ない日本で、クリスチャンであるとはどういうことなのか。また、LGBTQを罪とみなしているイメージが強いキリスト教コミュニティで、LGBTQであることはどういうことなのか。教会での迫害、LGBTQコミュニティでの疎外感、それらを当事者はどのように感じているのだろうか。
この分科会では、日本のLGBTQのクリスチャンが置かれている状況について、また、それぞれのご経験や、集まりでの活動について、「約束の虹ミニストリー」のメンバーにお話しいただく。
登壇者情報
寺田留架(てらだ るか)
キリスト教福音派の両親の元に生まれ育ち、一度就職した後に牧師を志して東京聖書学院に入学し3年間学びました。在学中、キリスト教とLGBTQ+という課題に当事者として取り組む必要性を痛感し、卒業後、牧師ではなく信者の立場で、キリスト教の中のLGBTQ+の居場所を作るための活動として「約束の虹ミニストリー」を立ち上げました。
トランスジェンダー男性(FtM)で、ホルモン治療や手術などは今のところせずに生活しています。性的指向は広い意味ではバイセクシュアル、狭い意味ではゲイです。
普段は建築設計事務所にて完成予想CGの制作などをしています。趣味は大好きなバンドのライブを観に行くこと。
早川かな(はやかわ かな)
私はシス女性で、以前はバイセクシュアルだったので、男性と結婚し離婚した経験があります。子供もいます。現在はFTXの人とお付き合いしています。クリスチャンになったのは出産後なので、セクシュアリティと宗教、どちらにおいてもマジョリティとマイノリティの両方を経験しました。約束の虹では当事者とアライが集まるミーティング「虹ジャム」で司会をしたりしています。牧師たちの集まりなどに参加して、これから教会はどのように変わっていったらよいかなど話し合っています。職業は整体師、趣味は歌と映画鑑賞です。
川口弾 (かわぐち だん)
現在、古着屋店員と塾講師として働きながら、性的少数者と共に祈る団体「約束の虹ミニストリー」のメンバーとして、マイノリティの居場所づくりや講演活動に携わっています。
福音派の牧師家庭で育ちましたが、ある時同性のパートナーができたことで自分のセクシュアリティと信仰に引き裂かれるような体験をし、生き続ける上での手がかりを見つけようと、大学・神学校で、哲学やキリスト教神学、クィア理論を学びました。
趣味は落書き・鼻歌です。
もんた(司会)
トランスジェンダーFTM。関西在住。
キリスト教(聖書)を母体とした高齢者施設で働いたのをきっかけにLGBTQを罪とみなすイメージで人は大好きだけどクリスチャンは唯一怖かったですが、ひとりひとりを多様に素晴らしく創造された神様の大きな存在を否定できなくなり2003年京都綾部川で洗礼受ける。現在はクリスチャンとなった昔の介護仲間達とNPO法人を建てあげて地域で教会を軸とし高齢者や障がいの方々をサポートする働きして今年15年目を迎える。
趣味はアウトドア全般。
企画者の推し!ポイント
「両親が熱心なクリスチャンで教会に行くことが習慣のような暮らしの中、LGBTQはだめなんだろうなという雰囲気はあった」「子どもの頃、オカマとか馬鹿にされたこともあったけど、そのおかげで宗教色が消せて救われた面も」
日本で信仰を持つということは、それだけで特別な目で見られることが多いです。宗教二世である寺田留架さん、川口弾さんは、子どもの頃を振り返ります。大人になってからクリスチャンになった早川かなさんは、LGBTQフレンドリーな教会探しの過程で、電話で断られたり、信者同士の会話でLGBTQが問題視されていることに傷ついてきました。聖書の中にある様々な禁忌の中で、LGBTQだけ救われればそれでいいのか?という疑問も。クリスチャンであることと、LGBTQであることを3人がどのように感じ、折り合いをつけてきたのでしょうか。そして約束の虹ミニストリーが開催する「虹JAM」の意義とは?
LGBTQであることのみならず、教会から排除されがちな人たちのための居場所を作りたいという3人の対話からは、誰もが安心できる場つくりのための重要なヒントが得られること間違いなし!コミュニティ運営者や支援者に見てほしい分科会!(穏やかで安定感のある3人の対話に癒される~)
テーマ
日本のキリスト教の中でLGBTQが置かれている状況
約束の虹ミニストリーという活動を始めるに至ったかという経緯と活動内容
セクシュアリティと信仰の折り合いはどうやってつけてる?
セクマイクリスチャンによってキリスト教会が変わっていく可能性
約束の虹 今後の活動の展望
報告文
地球では信仰を持つ人の方がマジョリティですが、日本ではほとんどの人が信仰を持っていません。私は4年ほどカナダで暮らしたことがあり、信仰を持つことが普通である社会に暮らしたその経験によって、日本で無宗教で生まれ育った私は宗教を持つ人に対して偏見を持っていたと自覚することができました。何かを信じること、拠り所となる精神的な支えを持つことは、人として生きる上でとても自然なことだと考えるようになりました。しかし、そうは考えない人が多い日本では、障害や人種などと異なり「選べるんだから自己責任」「いやならやめたら」のように考える人が多いとは思います。
この分科会で、日本のキリスト教の中のLGBTQという問題の、LGBTQコミュニティでの可視化として、入門的なお話をしてもらえたことは、今の現状に即していてとても良かったと思います。ルカさん、ダンさん、かなさんのそれぞれの語りによって、クリスチャンの多様性が伺えました。
日本社会におけるマイノリティ集団である教会コミュニティは、その立場ゆえに保守的にならざるを得ないことは想像に難くありません。その中でセクマイであることに気づき、子どものころから教え込まれてきた教義を、ひとつずつ本当にそうなんだろうか?と立ち止まり問い直し、考え直す作業は、とても大変だったようです。クローゼットのまま教会に参加し、他の信者の差別的な言動に同調せねばらならないとか、そもそもフレンドリーな教会を探す困難もまだあります。
それでも辛い時、迷う時に信仰に救われてきたこと、セクマイだからこそ信仰に救われてきたことも聞くことができました。内的な世界の豊かさを感じます。そしてセクマイクリスチャンの可能性、役割についても3人が明るい展望を持っていることに希望が見えました。演者の皆さんがコミュニティを大切にする態度や工夫、理念はキリスト教にベースを置くものと思いますが、排除されてきた人を迎え入れる精神はあらゆるマイノリティの居場所作りにつながるものと感じました。
Q&Aは短かったですが、演者と参加者は交流会で有意義な時間が過ごせたようです。
当日時間がなくてお答えできなかったご質問には、追って「約束の虹ミニストリーのブログ」にてお答え頂けるようですのでチェックしてみて下さい。
【参加者の感想】
キリスト教以外でも約束の虹ケミストリーさんのようなご活動が必要だと思いました。
よかったです。
あたたかく、本音や自由な発言のできる雰囲気でよかった
ダブルマイノリティの問題はずっと大会の分科会に出てきていたわけですが、この分科会に参加して、キリスト教徒の抱える問題はちょっと肌合いが違いました。
分科会が終わって感じていることは、「キリスト教がセクシュアルマイノリティにどう向き合ってきたか?」という視点と、「キリスト教のコミュニティの中でセクシュアルマイノリティであること」&「セクシュアルマイノリティのコミュニティの中でキリスト教を進行していること」という視点があって、それらが、セクシュアルマイノリティであるキリスト教者個々に程度の差はあるものも、生きずらさに繋がっていると感じました。今後も、大会で取り上げていただきたいテーマです。
互いの言葉を否定しない、ゆるく、安心できる繋がりは、マイノリティの人のみならず、どんな人にとっても安心できる場所になるのだと思いました。そういう教会や共同体のあり方が、もっと広がって行くといいなと思います。