分科会13
インターセックス(性分化疾患、DSDs)
当事者の現在
ゆうき
2月10日(土) 10:30~12:00
現地会場とオンラインのハイブリッド
手話通訳/日本語字幕/アーカイブあり
手話通訳/日本語字幕/アーカイブあり
内容
日本のインターセックス(性分化疾患、DSDs)当事者の現状や課題は、まだあまり可視化されていない。
この分科会では講師に、JNI SafeGarden(Japan Network of Intersex SafeGarden)共同代表のゆうきさんをお招きし、インターセックス(性分化疾患、DSDs)についての基礎知識、ご自身の当事者としての経験や想い、当事者活動の現状や国際的なつながりなどについてお話しいただく。
インターセックス・アウェアネス・デイの10月26日にあわせて、タイで開かれた国際会議に参加された際のお話も伺う。
登壇者情報
ゆうき
京都府京都市生まれ、金沢大学法学部法学科卒業、金沢大学大学院法学研究科中退。
インターセックス(性分化疾患、DSDs)に関する団体、「JNI SafeGarden」(Japan Network of Intersex SafeGarden)共同代表。もう1人の共同代表と組織の立ち上げ、そして各種活動に関わる。Intersex Asia(インターセックスに関する国際組織のアジア支部)との関わりもある。
本人も、インターセックス(性分化疾患、DSDs)当事者であり、当事者の立場から各種活動やネットワーク作り、ピアサポート(ピアカウンセラー資格所持)などを実施している。
参考書籍
『境界を生きる〜性と生のはざまで』(毎日新聞「境界を生きる」取材班)(毎日新聞社)
『「境界」に立つジャーナリスト』論集中、「「性分化疾患」ータブーにしたのは誰なのか」(丹野恒一)(早稲田大学出版部)
『みんなで考える性分化疾患〜本人と養育者と医療者のために』(大阪母子医療センター監修)(診断と治療社)
実行委員からのおすすめコメント
保険証を見ながら「産まれた時は女性だったってこと?産まれた時から男性と言うこと?女性だった時期はありますか?」と言われたり、「産婦人科通っているけどどういうこと?」と待合室で他の人がいる前で言われたり。緊急搬送の際に、インターセックス/DSDs当事者であることや関連疾患のせいで受け入れ拒否にあうことさえ。医療者の知識不足、想定不足で医療にかかる時に不快な体験をすることは当事者あるある。
身体の状態に対して真摯に向き合ってくれたり、
「常識」にとらわれず、状態に向き合ってくれたり、
医療面だけでなく、日常生活や人生全般についても共に考えてくれる
そんな医療者が増えてほしい。医療従事者に望んでいること、こんな医療機関だったら行きやすいというリクエストもお伝えします。
また、様々なLGBTQコミュニティに参加するフットワークの軽いゆうきさん。インターセックスの国際会議Intersex Asiaにも出席されています。LGBTQコミュニティとの連携の重要性を主張する立場で、アジアのインターセックス運動を牽引するIntersex Asia理事、Hiker Chiuさんからのビデオメッセージもあります。
報告文
実行委員の塩安です。長年、私自身もトランスジェンダー当事者として、学校現場で研修などをするにあたり、性の多様性という枠組みで、どのようにインターセックス・DSDsの方に言及するのが良いのか悩んできました。私たちはもっともっと、多様な当事者の声に耳を傾ける必要があると思い、この分科会を企画しました。
この分科会は、当事者であり、Japan Network of Intersex SafeGarden共同代表のゆうきさんに会場にお越し頂き、ハイブリッドで開催しました。
医学的な話が多くて眠くなったらごめんなさい、という前置きをされましたが、全く眠くなる要素はなく、インターセックス・DSDsの基本から丁寧にご説明くださり、終始大変重要で貴重なお話をしてくださいました。
18歳の時、ろくな説明もなしに治療をはじめられてしまったこと、インターセックスであることを知って性自認がゆらいだこと、更に最近の身体の変化や新たな発見によって、また性自認がゆらぎ、最終的には「考えるのめんどくさいジェンダー」に落ち着かれたというお話に(ネーミングセンスの良さに)笑ってしまいましたが、逡巡された末の言葉に説得力がありました。
当事者がインターセックスと名乗ることについては、当事者の自由(当事者が自身のことをどう捉えるかの問題の自由)とのお考えでした。
また、昨今の性教育教材で見られる「性の4つの指標」の図において、「性自認」「性表現」「性的指向」と異なり、「身体的な性」のみ、男女の間に引かれたグラデーションの線が、中央で切断され、男女に二分されていることがよくあります。この件に関してゆうきさんは、海外では一直線につながっているものが主流であり、つながっていることに特に問題は感じないとのことでした。「性スペクトラム」の研究も進んできているそうです。
インターセックスであることに関連した合併症については、命に係わるものもあるそうです。疾患という側面もあるけれど、押しつぶされないように、個性や特徴として割り切るようにしているとのことでした。それがゆうきさんが生きるリアリティなのだと知ることができました。
医療従事者向けに意識したメッセージをお願いしていたこともあり、医療従事者にされて嫌だったことや、嬉しかったこと、お願いしたいことやこんな病院あったらいいなということも具体的に挙げて下さいました。更に、インターセックス(性分化疾患)と性同一性障害(性別違和)の問題で共有出来る部分、違う部分なども具体的に挙げて下さり、今後の協力関係つくりに大変ヒントになるお話でした。
最後は、ご自身が共同代表を務めるJNIについての活動、国際ネットワークのIntersex Asiaの会合についてもご報告いただきました。LGBTQコミュニティとの連携や、国際的なつながりの重要性を説くIntersex Asia代表のHiker Chiu氏からのビデオメッセージもあり、今後の展開にさらに期待したいと思いました。
Q&Aではたくさんの質問が届き、交流会ではゆうきさんと現地参加者とで対面での交流ができ良かったです。
【参加者の感想】
貴重な当事者の話を直接聞けたのは重要な体験でした。
話しづらい内容を軽やかにお話くださり、本当にありがとうございました。
インターセックスという言葉自体は知っていたが、どのようなものかぼんやりしていたため、具体的な困り事も含め知ることができたのはとても大きかった。また、ゆうきさんが個人の体験も含めて話してくれたのは、ただ知識だけでなく困っている個人を知ることもでき関心を持ち続ける助けになると感じた。
ゆうきさんのお話、とてもよかったです。インターセックスのことを初めて聞いたのは、ハッシーさんから。それ以来、「性のゆらぎ」について、規範でがんじがらめの環境でしたので、自分が間違っているのかと悩んできましたが、新たな事実を提示されて、思想界に新たなステージが始まると思いました。このテーマの当事者ではありませんが、とてもとても救われます。インターセックスの当事者の方にもいろいろな状態、考え方の方がおられることを直に聞けて心から安心しました。
今回の催しを企画してくださり、ありがとうございました。子宮内膜症の保険適用が戸籍上「女性」に限定されている、というお話を聞いて、インターセックス当事者の方をはじめ様々な人に不当な負担を強いる現在の日本の二分法的な性別を前提とした医療制度に怒りを覚え、変えなければならないとの思いを新たにしました。インターセックス当事者の方と、アライとして協働できるよう、さらに学んでいきたいと思いました。
交流会があることが今後にも繋がりとても良いと思いました。
よく開催してくださいました。感謝しかありません。