分科会11
ひとりからできる市民活動のコツ
〜電話一本で社会は変えられる〜
ケータ
2月9日(金) 13:30~15:00
オンライン録画+ライブQA
内容
演者はただの市民です!が、様々な面において社会を変えてきました。同性のパートナーとのホテルの利用拒否に対して行政指導をさせたり、市の条例の文言を変えたり、保険会社に同性のパートナーを対象に入れるように約款を変えたり、パートナーシップ制度の署名活動や、要望書・誓願書を提出したり、神社での同性結婚式を実現させたりしました。
それらはほとんど一人で動き、しかも、たった一本の電話で実現したものも多いです(プロジェクトで複数のメンバーで行なったものもありますし、それ以外も多くの人の協力や助言があってのことですが)。
この分科会では、そのような市民活動のコツを皆さんにシェアをし、「社会を変える」ってこんなに気軽にできるものなんだと感じてもらえたらと思います。ワークショップではこれからどんな市民活動ができるのか共に考えられたらと思います。
紹介事例
1)ラブホテルでパートナーとの利用拒否→電話→利用OKに
2)自動車保険、同性パートナーは対象外→抗議→利用OKに
3)兵庫県議会議員選挙にて政策アンケート→投票の参考に
4)兵庫県パートナーシップ・ファミリーシップ制度の制定の署名1280筆を提出→2024年4月から実施
5)長崎県諫早市議会でパートナーシップ制度の制定の請願→全会一致で採択
6)神社のLGBTQ差別に問題提起→全国の神社32社に断られながらも神社で結婚式
登壇者情報
ケータ(けいた)
ゲイで尼崎市民。ただの市民です!
三重県出身。2023年に同性のパートナーと神社で結婚式を行い、幸せいっぱいです。近々、パートナーの地元の長崎県にUターン予定で、関西を離れるのが寂しいです。趣味は柔道、キャンプ、温泉・サウナ、写真、ジムニー(車)です。
普通の市民でも社会は変えられます!
実行委員から一言
市民活動は、活動家がするもので一般市民はするもんじゃない。そんな風潮が感じられます。一方で、単なるいち市民である自分には、社会を変える力などない。という諦めムードもないですか?そんな思い込みに力いっぱい「NO!市民こそ力がある!」「市民だからこそたくさんできることがある!」とケータさんが実績を示しながら勇気づけてくれる分科会。ケータさんがいち市民として、電話一本から実際に制度を変えてきた事例をコツとともにご紹介。
軽やかさが圧巻!こんなにも本当に電話一本から社会が、制度が変えられるなんて!自分になど何の力もない、と感じているすべての諦めムードな人に見てほしい、そして市民社会を民主主義を維持したいすべての人にも実践的なコツを獲得できる分科会として、絶賛おすすめ!みんな、できるよ、やっていこう!
報告文
本分科会では、「一人からできる市民活動のコツ」と題して、私が今まで行ってきた市民活動(1人で行ったものが中心ですが複数人で行ったもの含む)を紹介しながら、活動は一市民が気軽にできるものとして市民活動のコツをお話ししました。
私が行った市民活動として挙げたのが下記の6点です。
尼崎市内のラブホテル2軒で同性のパートナーとの利用拒否に遭ったものの、保健所に電話し、行政指導が入り、利用可能となりました。このようなことが2度と起きてほしくないという思いから、新聞社にも連絡し、2社において掲載。さらには個人的に市内全てのラブホテルに電話をして半数以上が同性カップルに対して拒否または不当な価格設定をしていることが判明しました。その結果を、LGBTQに関して質疑をしていた市議に相談をし、議会でも取り上げてもらいました。市からは市内の全部のホテルに啓発に入ってもらう回答を得ました。2024年1月、改めて尼崎市内全てのラブホテルに電話をしましたが、18軒中18軒全てが利用可能でした!
東京レインボープライドにプラチナスポンサーとして出展している自動車保険アクサダイレクト社のサービスにおいて、同性パートナーは対象外とされた件に対して、コミュニティに対する問題提起の意味も込めて東京レインボープライドのブースの前で抗議活動を行い、早期に利用可能となりました。抗議活動は穏やかに行ったものの、主催者側に警察に通報をされるという言論弾圧を受けました。(警察は抗議活動に何も問題がないとすぐに立ち去りました。)その点においては、差別の改善を訴えた当事者よりもLGBTQを差別する側のスポンサーを優先した東京レインボープライドの体制については、何のためのパレードなのか?と疑問を持たざるを得ませんでしたし、商業主義に陥っているという疑念が確信に変わる出来事でした。抗議活動の動画は本分科会でも放送しています。
2023年の兵庫県議会議員選挙に伴い、候補者に政策アンケートを送付し、候補者の1/4から回答を得て、そのほとんどが前向きな回答でした。アンケート内容は他団体のものを参考にし、政党に転送依頼をし、非常に敷居の低い活動でした。投票の参考になるのはもちろん、その後、LGBTQフレンドリーな議員さんたちと繋がることができて、その後の活動にも有効でした。
兵庫県パートナーシップ・ファミリーシップ制度の制定のオンライン署名活動を行い、1280筆を兵庫県庁に提出しました。そのことを記者クラブに1枚資料を送付したところ、新聞2紙社、TVのニュース番組でも報道してもらえました。その後、県議会議員に制度の拡充を求め電話で相談をしたり、パブリックコメントの呼びかけの活動を経て、2024年4月から「ファミリーシップ制度、事実婚を含むという進んだ形でのパートナーシップ条例の制度が開始することとなりました。
長崎県諫早市議会に対して諫早市パートナーシップ制度の制定を求めて請願を行い、全会一致で採択されました。諫早市はパートナーの故郷で、パートナーに以前からUターンをしたいと言われており、話し合いの結果、一緒に移り住むこととなりました。そこで問題に上がったのが、諫早市にはパートナーシップ制度がないこと。「なかったらつくればいい!」という思いから制度の請願に至りました。請願とは要望を議会で議論してもらうことです。やったことは今までと同じ流れで、議会の議事録で、LGBTQに関して質疑している議員を検索し、連絡を取り、請願の賛同をしていただきました。諫早のパートナーシップ制度について取り上げていたアナウンサーの方、その他つてのない新聞社にも連絡をし、各社取り上げていただきました。請願が全会一致で採択されることは非常に珍しいことで、諫早の皆さんが賛同してくれたことが嬉しかったです。
全国32の神社に断られながらも地元の尼崎市の神社で無事に同性結婚式を行うことができました。神社で結婚式を行えるかどうか気軽な気持ちで問い合わせたところ、軒並み断られてしまったものの、地元の神社が快諾してくれて、無事に式を行うことができました。一方で、神社界のLGBTQに対する認識の遅れを感じることともなりました。こちらについては詳細は分科会9「神道とLGBTQ」にて説明しています。
市民活動のコツとしてお伝えしたのが、当事者であり、自治体の住民であることを伝えることが何よりも武器になるということです。(この際に、名前などのプライベートな情報を晒す必要はありません。)議員や自治体、マスコミも、当事者の実際の声がないと動きにくい現実がありますが、一度声さえ上げれば、確実にものごとが動いていくことを実感してきました。この分科会のサブタイトルにもしているように、電話一本だけでも、議員、自治体、マスコミが想像以上に動いてくれて、社会が変わっていきます。
分科会の後半では、ワークショップを行い、参加者がどんな市民活動を行ってきたのか、どんな市民活動ができるか、アイディアを共有していただきました。この分科会をきっかけに、自分がしてきたことも立派な活動だったんだとか、これだったらできるかも?と気づきを得ていただいたようで嬉しく思います。
この分科会でお伝えしたかったことは、市民であること、当事者であることはどんな肩書きよりも強いということです。自分は一市民だから社会を変える力なんてないと思う必要はなく、市民だからこそ社会を変えられるんです。皆さん、一緒にこの社会をよりよいものに変えていきましょう。
■参加者の質問
政治家の目線に立って考えたことがあまりありませんでした。差別発言などをみるたびに残念な気持ちにさせられますが、私はノンポリだし特定の議員が自分なんかの味方になってくれるんだろうか?とあきらめてもいました。自分から何か働きかけることの重要さを感じました。
・ケータさんの活動のお話を聞いて、個人の活動がいろいろなものを動かすことに驚きました。「行政への電話のコツ」とっても参考になりました。動いてみようと思います。
・ 政治家に対してあまり良い印象を持っていなかったが、想像以上に私たち一般市民の声を汲み取ってもらえる事を知って、声を上げる必要性を感じました。
・役所はたらい回しにされるイメージがあり、そう決めつけてる自分が損してる!と気付かされました。
・今まで、署名活動に参加したりしたことはありましたが、なかなか積極的には参加できず、当事者性があることでも不満を我慢してしまい、市民活動って具体的にどうすればいいんだろう?と思っていたので、今日の分科会はとても参考になりました。小さなことからでいいんですね。また、成功した活動について聞くと元気が出るし、とても勇気づけられました。ありがとうございます。
・ケータさんのお話を聞いて、自分も何かできるかも、と思いました。ありがとうございました。
・あの事件もこの事件もこのひとのしわざだったのか!と知ってとてもおもしろかったです。私も行政のLGBT研修や新聞報道などにはなるべくメールで感想を返すようにしていますが、直接電話をしてしまう、というのはハードルが高いと感じていました。今回お話をきいてみて、意外と楽しそうな気がしてきました!いろんな意見や体験が行政に届くことが重要だと思います。参加者のひとたちがどんなアクションをしてるのかを今回聞けたのもよかったです。
・そういえば私、兵庫県パートナーシップ制度の署名したし、たしか前にパブコメも出しました。県外の自分が出していいのか迷ったのですが、人生ではじめてパブコメというものを書きました。
私は、自分の住んでる自治体で33組目のパートナーシップ宣誓者でした。約100万人の市民のうち、たったの66人だったのか!道理で会ったことないわけだわ!と納得?しました。
片方がノンバイナリーで法律的に異性カップルの申請は初めてだったそうで、マイクロアグレッションに満ちた質問攻めにあいました。間違いとか勘違いとかじゃなく、諸々調べて検討したうえで、法律婚でも事実婚でもなくパートナーシップ宣誓を選んだんです、というのをめっちゃ説明する羽目にあいましたが、話し合ってるうちに、あーこの人たちも初めてでびっくりしただけなんだな、と思いました。
数が少ないからこそ、やった意味があったんだなと。
「市民運動」のつもりは全然なく、ただ自分たちの生活上の必要のために申請したのですが、これも市民運動のような意味があったのかもしれない、と感じました。
私は元々パートナーの住んでいたこの市へ移住したのですが、移住を決めた決め手のひとつは、既にパートナーシップ宣誓制度をやっていたことでした。当時は同性カップルしか対応してなかったので、自分たちに関係ないといえばなかったのですが、それでも「LGBTQに理解があり、この土地から歓迎されている」と感じたのです。
そして数年後、その戸籍上性別の要件は消えていて、どこかに必ず声をあげてくれた当事者がいて、それを聞いて動いてくれた議会や行政機関があったんだ!と気づき、そして自分も「声を上げる当事者」のひとりになりたい、と願ったのを覚えています。
制度導入したら市民にとってこんないいことあるよ、の一例かなと思い、どこかの県のパブコメにこのこと(移住の決め手になったこと)を書いた覚えがあります。それがたぶん兵庫県だったんじゃないかなあ…
この数年で、いま住んでいるURが結婚・婚約していなくても住めるよう規約が変わってました(私たちが契約したときはまだ、ニセ?の婚約届を書いて出したのです)。やっぱり、誰かが声をあげてくれて、変わったんだなと。バレたら追い出されるんか?とおびえて暮らしてただけの自分を反省しました。いち市民の生活上の必要から、声をあげること、できることはたくさんあったんだ、これからはやるぞ!と決心したできごとでした。
市営住宅にも申し込んでみました。受付で「わーLGBTQの方はじめてですー!」と言われました。抽選ははずれたけど、市の事例のひとつにはなれたから、よかった。
…そう、宣誓前も後も、自分たち以外でこの制度使った人、会ったことなかったんです。法的な拘束力のないこの制度を選ぶ不安もとても強くて、怖いんです。具体的に何についてどこで相談したらいいのかも、イマイチわからなかったのです。みんなどうしてるのか知りたいとずっと思ってました。
どこでどうやってほかの当事者と会えたり話せたり友達になれるのか、地方在住では全然見えなくて、めちゃくちゃ不安です。
「○○の会」みたいに組織しないで、それぞれが自分の必要からそれぞれの場所で声を届けている、そうしてる人たちとどこかでゆるくつながれて、はげましあったり情報交換できたら、すごくいいなと思いました。そんなプラットフォームがどっかにあったらいいなと今日すごく思いました。(今日の交流会もまさにそんな場所ですが、連絡先交換しそびれたというのと、個人間で個人の連絡先交換はちょっとハードル高い…てのもあって、一人活動はげましあいグループチャットとか交流サイトみたいなのとか?どっかにあったらいいなと思いました。匿名にするとセキュリティとかいろいろ難しそうだけど、なんとかならないかなあと妄想)
昨日もネットで「LGBT活動家」を口汚く叩くヘイト書き込みを見てしまい、一人へこんでました。ほんと、みんなどうしてるんだろ。心折れないよう、はげましあって生きていきたいなと思います。
「議員さん」「マスコミ」という選択肢は今まで全く遠いものだと感じてました。
それも選択肢になるという実例を見せていただき、驚くとともに、必要なときには思い出してやってみようと思います。
今日はほんとうにありがとうございました。