河上リサ、山科みき
オンライン録画+ライブQA
昨年2月の大会後、2023年は大きな出来事がたくさんあった。6月にはLGBT理解増進法の施行、7月には経済産業省に勤務するトランス職員にトイレ使用制限した対応は違法とする判決、人気タレントの自死、10月には性別変更の手術要件は違憲というはじめての判決が出るなど、めまぐるしい年だった。そうした出来事のたびに過激さを増していくトランスジェンダーへのヘイトに対して、カウンターとしての立場表明、イベントや映画祭、書籍出版など、差別と偏見に対抗する動きも活発になってきている。
この分科会は、リバイバル上映会でも好評を博した前大会の分科会「トランスジェンダーのリアル~あまり知られていないホントのところ~」にご出演頂いた河上りささん、山科みきさんをお招きし、怒涛の1年を振り返りつつ、今後を展望する。「トランスジェンダー女性の悪魔化」を煽動するようなヘイトの実際とその「嘘」や現実との乖離、「GID特例法」について当事者でさえ引きずられる「嘘」や誤解、そして「トランスジェンダーの『問題』」(トイレ問題・風呂問題など) として世間で認識されている「嘘」と本当の「問題」についても取り上げ、トランスジェンダーを取りまく「問題」の「リアル」を知って欲しい。そして、それぞれの場所で肯定的なメッセージを発信してほしい。トランスジェンダー当事者も、社会のどこにでもいる一人の人間で、存在の有無やその処遇の如何を他人に「議論される」存在ではないのです。
河上リサ(かわかみ りさ)
『トランスジェンダーのリアル』製作委員会メンバー
1982年 大阪生まれ。18歳より大阪市内のショーパブでニューハーフダンサーとして、24歳で戸籍上の性別を男性から女性に変更し、関西の専門学校と大学にて心理学や精神保健福祉を学ぶ。卒業後は就労移行支援施設や人権文化センター等で生活支援員や相談員として従事した経験を持つ。現在は無知から来る偏見や差別に喘ぐトランスジェンダー当事者のリアルな姿を可視化すべく情報発信や、性別移行中のトランスジェンダー当事者向けの女性声獲得のためのボイストレーニングを行っている。
山科みき(やましな みき)
1972年京都市生まれ京都市在住
GIDのことを知った上で結婚した女性配偶者と二人暮らしです。子供なし。
14年間のサラリーマン生活の後、ネット起業で小売業を始め、法人化を経て14年経過。幼少時から性別に違和感は感じるものの、本格的に性別移行を開始できたのは48歳から。性別適合手術を受けたものの、婚姻中のため法律上の性別の変更はできない。
2021年よりYouTubeへの出演やTwitter投稿を通して、トランスジェンダーのリアルな姿を社会に発信し、理解を広めてもらうように努めている。
「避難所で、トランス女性がシス女性からナプキンを奪おうとしてる、必要ないくせに!」ありとあらゆるデマが繰り広げられるSNSというカオス。トランス女性への偏見や差別を助長する投稿は日々繰り返されています。(ちなみに、手術後しばらくはもちろんのこと、術式によっては常にナプキンが必要なトランス女性もいます。)
トランスジェンダーの問題と騒がれていることのほとんどは、当事者のリアリティからかけ離れたものです。あまりにデマが出回りすぎて、あなたも知らず知らずのうちにひとつぐらい信じてしまっているかも。Youtubeで様々なトランスジェンダーへのインタビューを公開している河上リサさん、SNSでトランスのリアルを発信している山科みきさんが、デマを切る!
さらに、2023年に違憲判決が出た性別変更の手術要件について、当事者だってジェンダーやセクシュアリティにまつわる概念や価値観の変化についていけなかったり、翻弄されているという点など、ご自身の葛藤も含めて語ります。トランスヘイトに抗うために、様々な当事者の声を聴いてほしいので企画した分科会。トランス当事者にもおすすめ!
テーマの一部
トランスの問題はトイレとお風呂だけ?
トランス女性には生理用ナプキンは必要ない?
メディアもあおりに加担、女装男性逮捕のニュース
トランス女性は犯罪率が高い?
特例法は廃止すべき?
シス女性とトランス女性の利害は対立する?
トランス女性は性被害にあわない?
トランスジェンダーは権利など主張せず遠慮して生きるべき?
おススメの事前学習動画の紹介です。
分科会の演者である河上リサさんが、セクマイ実行委員の今将人と、塩安九十九にインタビューをしてくれました!長年コミュニティに関わってきた立場として、今思っていること、過去の思い出などを振り返ります。直接セクマイ大会の話ではないですが、こうした話もふまえながら、分科会「トランスジェンダーのリアル2024」を見て頂いたり、大会運営を見て頂くと、より深くお楽しみ頂けるかもしれません。
■河上リサ×今将人(セクマイ実行委員会)
「性別適合手術をしなくても戸籍上の性別変更が可能に。当事者の中に賛否が分かれる歴史的な決定に当事者として思う事。」
■河上リサ×塩安九十九(セクマイ実行委員会)
「“トランスジェンダーが分かりません"自分たちこそが真のトランスジェンダーである!トランスジェンダーの中に分断を作った性同一性障害という診断の功罪」
■河上リサ×塩安九十九(セクマイ実行委員会)
「トランスジェンダーコミュニティを分断させない為に作られた暗黙の了解7箇条とは」
■河上リサ×塩安九十九(セクマイ実行委員会)
『私の事をなぜ認めてくれないの!』周りとトラブルを起こしがちなトランスジェンダー当事者に必要な事
2/2(金)にプレミアム放送!
■河上リサ×今将人(セクマイ実行委員会)
「トランス男性とトランス女性から考える性別適合手術に対する立場の違い」
【参考サイト・書籍・論文】
「Xジェンダーはなぜ名乗られたか」武内 今日子(2020)
「トランスがわかりません!!揺らぎのセクシュアリティ考」(2007)
少なくない人が感じているヘイターとの不毛な戦いへの疲弊感。河上さんがX(旧ツイッター)に辟易して辞めたという話には、わかる~という共感の声が聞こえてきそうです。荒れ果てるSNSに希望を見いだせなくなってきているけれど、ヘイターを野放しにできない。でも圧倒的少数のトランス当事者がズタボロになりながら戦う価値があるのか?
しかし、手を変え品を変え、抵抗をやめないお二人。黙らないのえらい!最前線に立つ人たちへのエールとしての分科会です。表に出て発言するというリスクを負って登壇してくれているお二人に感謝です。(しんどい人は無理しないようにしましょう。)私たちは、がんばっている人に、感謝を伝えるべきです。叩かれている人には目に見える形で、具体的な言葉で、エールを送るべきです。そうすれば助かった命があるかもしれません。
トランスジェンダーの「問題」と言われるデマや誤解、トランスの悪魔化が、どこから来るのかをマイノリティの扱われ方や人の弱さ、差別構造から分析します。トランスの多様性や、人は性別という記号ではなく、社会的な動物である人間としてこの世に生きること、トランスジェンダーだからこそ見えてくる性別というシステムの運用の実際などにも触れながら問題を丁寧に整理してくださいました。また、トランス当事者の中にある内面化された抑圧、同族嫌悪、ヘイターのデマを信じてしまう孤立したトランス当事者の存在にも言及します。手術要件緩和をめぐる当事者間の戸惑い、世代間格差などの渦中で、分断ではなく連帯して行くためにはどうしたらいいのか。排除は根本的な問題を解決しないし、孤立はトランス当事者に人生の肯定感をもたらさない。今、まさに今一度トランスを含むLGBTQ+コミュニティの在り方を再検討していくことが、ヘイトが蔓延る社会をサバイバルしていくのに必要なことではないか、と考えさせられます。幼少期から性別移行して生きている当事者、これから産まれてくるトランスジェンダー、中高年でトランジションする人などなど、それぞれのリアルに耳を傾け続ける必要を感じました。河上さん、山科さんのいろんな立場の人のことを慮る態度に、思考を柔軟にしておくことの大切さも感じました。Q&Aも多くの質問を頂き、盛り上がりました。
昨今の話題にかんするお二人のご意見が伺えて勉強になりました。貴重な企画をありがとうございました。随所で解説が入るのも理解しやすくて良かったです。お二人についてのご紹介が多少あってもよかったかもしれません。河上さんが仰ってた。トランスの漫画が足りないっていうの、本当にそうですね。
トランス差別言説に影響されてしまっている人達に知ってもらいたいことばかりでした
なかなか、届けたいひとに届かない、というじれったさがありますが、それでも、「淡々と」「トランスジェンダーのリアル」を届けることの大事さを感じています。
リサさんみきさんの話がリアルでトランスのモヤモヤを代弁(表現)してくれてうれしい^ ^
日ごろから、お二人それぞれのSNS投稿、動画をみているので、今回のトークが目新しさを感じなかった。日ごろと変わらない感じでした。日ごろ語られる内容の延長での感じでした。
自分からセクシャルマイノリティ、人間として…人権のこと…を学んでいこうと思えました。登壇してくださったお二人の意見や考えは、セクシャルマイノリティとか、どうとかっていうより、人としての言葉に聞こえました。それがとても安心できました。
6日間で大切な内容情報が盛り沢山なのでまだ消化しきれてない自分ですが笑; ボランティアとして参加して現場での実行委員スタッフさんの丁寧な対応フォロー打ち合わせ振り返り編集作業等々をみてこの大会が成り立ってますので心から感謝してます。当該サイトのように、「まとめサイト」の機能で「対談を視ることができる」ことに価値を感じます。