- 2012年の日記 -
2012年12月03日
電卓が一般家庭に普及するきっかけとなった「カシオミニ」が発売されて、今年で40年。「答えイッパツ♪ カシオミニ♪ 」のCMフレーズは、私と同じ40代半ば以上なら、ほとんどの人の耳に残っているはずです。
私はカシオミニよりも、さらに昔の電卓を所有しています。父から譲り受けた41年前のシャープ製電卓で、今でも普通に使えます。1971年11月に発売されたもので、製品名は「電子ソロバン KC-80A」。シャープのOEM(=相手先ブランド製造)で、販売元は事務用品を扱うコクヨです。当時の値段で 36,900円。
▼最近の写真だということを証明するため、iPhone5の画面に、私が書いた道新スタッフブログの画面を表示して隣に置きました。電卓の表示部分はグリーンに発光する電子管で、数字のデザインは独特の曲線基調です。何だか今の電卓よりも温かみと優しさが感じられます。
▼内部を見てみましょう。この頃の電子機器は「ゆったり配線」なので、ネジを外してケースを開ければ、基盤を簡単に見ることができます。
▼基盤には製造年月日がプリントされています。昭和46年(=1971年)10月22日の製造です。今年で製造後41年。前年の1970年はアポロ13号が「奇跡の生還」をした年。映画の「アポロ13」でも、操縦席のコンピューターの計器表示は、この電卓のような電子管を多用していました。
▼基盤上のLSIチップはシャープ製で、型番はNRD2256。ネットで調べたところ表示の電子管を制御するLSIチップです。当時の電子機器は、キーボード入力・演算・表示用などの専用LSIで構成されていました。電卓はこの後「ディスプレーの液晶化」「太陽電池の搭載」と、まさに現在シャープが得意とする技術革新を続けていくことになります。今は苦境に立たされていますが、シャープには日本のエレクトロニクス産業を支えてきた、百年企業の意地と底力を見せてほしいと思います。
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自営業だった父は、ソロバンは得意ではなかったようで、帳簿の計算を速く正確に行いたいために、大枚はたいて、この「電子ソロバン」を購入したのでしょう。保育所通いの幼い私は、夜な夜な父がこの電卓で帳簿計算をしていた光景を、今でも鮮明に覚えています。
いまだにキーも表示管も壊れず、現役で動作するということは、父がこの電卓を大切に使っていたという証拠であり、シャープ製品の信頼性の高さを裏付けるものです。
41年間お疲れさまでした。次は「製造50年、現役電卓」を目指して、昔の父の記憶とともに、このシャープ製電卓を大切に保管していきます。
(文と写真・立花幹彦)
2012年01月02日
本年もよろしくお願いします。年初にあたり、故郷の網走で昨日撮影した、初日の出の写真を掲載します。荘厳な瞬間を、今年は特別な思いで迎えました。
斜里岳の美しいシルエットを引き立たせるように、稜線(りょうせん)から上る希望の光。両親も、故郷の町並みも、そして私自身も変わっていくなかで、遠い昔から変わることのない輝きを放つ、私の「心の原風景」であります。
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私は「IBM-5535-M19」という、年代物のパソコンを持っています。いまでも正常動作します。1992年ごろに職場で購入し、耐用年数が過ぎて廃棄扱いになったものを譲り受け、自宅で主にワープロ機として使い続けました。当時は「ノートPC」ではなく、「ひざの上」という意味の「ラップトップPC」と呼ばれていました。
2001年にウィンドウズPCを購入するまでは、私の右腕として活躍してくれました。その後、時代に取り残されていき、近年は電源も投入しなくなりましたが、テキストデータなら今でも最新ウィンドウズ機とデータ交換できます。
今回、この「20年物・ビンテージPC」を使って、ブログ原稿の一部を実際に書いてみました。執筆完了後、フロッピードライブ経由でウィンドウズPCに原稿を取り込み、このブログに無事アップできました。
▲IBM-5535-M19全景。いまでも通用する端正なスタイル
▲IBM-5535のロゴ。IBMはすでにPC製造から撤退しています
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「あぁ、カラーじゃねえ。マウスもねぇ。インターネットやメールねぇ。ハードディスクは30M。メモリたったの2Mだけ…」昔ヒットした歌謡曲のフレーズのようです。「結局ビンテージPCって、何ができるの?」と言われれば、いまの時代には何の役にも立ちません。しいて言えば、ワープロや表計算ソフトが動きます。さらに私の世代には懐かしいBASIC(ベーシック)というプログラミング言語が動きます。
BASIC言語が完全動作するマシンという意味では、かなりの希少価値があります。趣味というよりも「絶滅危惧種を守っているボランティア」に近い活動ですね。
自動車なら、たとえば30年前に購入した愛車を大切に乗り続けるというスタイルが、ひとつの文化として確立されています。しかしながらIT機器はそうはいきません。発展産業から成熟産業に移行しつつあるこの分野についても、「長く大切に使い続ける」というスタイルを確立できないものでしょうか。
昨今は、中古PCや再生PCの市場も盛況ですが、1台のパソコンの組み立てや再生にも、石油資源や電力を消費するでしょうから、長く使い続けることで、資源節約や節電の効果が期待できます。高齢者にとっても、なじみのある機器は使いやすいことでしょう。
▲執筆中の画面。当時としては優れた「かな漢字変換」を実装しています
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私の「ビンテージPC」は、いつ故障してもおかしくない状態です。中古市場を探しても、部品調達は難しいことでしょう。このブログ執筆が最後の仕事になるかもしれません。
それでも、同世代のほとんどのマシンは「2000年問題」をクリアできずに姿を消していったでしょうから、2012年まで現役でいられたことは奇跡に近いことです。動作不能になった後は「アンティークPC」として保管し続けます。他人には「ガラクタ機械」と思われても、私には愛着のあるマシンですから。
(文と写真・立花幹彦)
※各文章と写真については、2012年~2018年に「道新スタッフブログ」に掲載したものです。2019年「道新スタッフブログ」閉鎖に伴い、ブログ管理者に了解を得て、私のWebページに移設しました。