皆さんの多くは,高知県外の出身と思います.高知に来て自分の地元と比較し,地域性の違いは感じましたか?自然や文化が異なれば,おのずと建築・土木の施設にも反映されます.ただ,現在は近代化が進んで,地域の伝統的な建物や施設が減り,それを知る機会は減ってきています.下の写真は,里山研究フィールドにおける古民家です.高知の伝統的な農家建築の様式となっています.土佐山田の市街地にもこのような様式の家屋が見られると思いますので,注意深く観察してください.
香美市を流れる一級河川の物部川は,土佐山田の水源の一角を担っていますが,河岸段丘の上に位置する土佐山田は,昔から水不足に悩まされていました.江戸期には野中兼山が山田堰を築き,舟入川を用水路としました.明治期には吉野川水系の穴内川に向けて導水トンネル(甫喜ヶ峰疎水)を築き,水道橋やサイフォンを通じて水を確保してきました.現在水路は,複雑に張り巡らされています.
高知県では,今なお神祭が盛んに行われています.下の写真は,氏神さまの神祭の様子です.私の住む香北町の集落では,年3回もの祭事が行われていて,地域の絆を深めていると同時に,地域の伝統が継承されています.土佐山田町には八王子宮をはじめとしてたくさんの神社や祠があります.商店街の辻々には秋葉さまが祀られていて,火事が起こらないように見守ってくださっているとのことです.
高知県は太平洋に面し,年間降水量は3000ミリを越えます.さらに日射も多いので,植物の成長に適した条件を備えています.高知県の地元の野菜を食べて驚きませんでしたか?トマトやナス,キュウリなどの園芸野菜は,地元の露地物が抜群の美味しさです.私は,特にタケノコの美味しさに感動しました.
一方で,災害も多く発生します.下の写真は,2018年の西日本豪雨の時に大豊町の高速道路を破壊した斜面災害の現場です.1998年の豪雨災害は,現在のあけぼの街道沿いで浸水被害をもたらしました.古くは1972年に現在のJR繁藤駅を押し流す大規模崩壊が発生し,多くの消防団員の命が奪われました.将来は,南海トラフ地震も想定され,自然災害に対する備えが重要な課題となっています.
さて,皆さんが地域について学んだのは,小学校・中学校の時,社会科の授業の一部としてだけではないでしょうか.建築・都市デザインで学ぶ皆さんは,これから様々な施設の設計を学ぶことになりますが,その技術的な側面だけでなく,自然・歴史・文化的な側面を十分知った上で設計に至る必要があります.土佐山田で建設について学ぶのも何かの縁です.まずは,土佐山田の自然・歴史・文化とそこにある建築や土木施設を結びつけて深く学んでください.
下のサイトは,高知工科大学で運用しているフィールドデータベースです.様々な研究者がそれぞれの視点で作成したものです.このデータベースを活用して土佐山田周辺の興味のある施設を見学してみてはどうでしょうか.その際は,地域の方に迷惑のかからないよう,くれぐれも気をつけて行動してください.また,見学に先立って,その施設について詳しく調べておくと感動が広がります.インターネット検索すると,たくさんの情報が得られます.フィールドデータベースにないポイントも自分で見つけて見学候補地としましょう.
まずは自分で見学のテーマを設定し,見学の道順となるルートマップを作成しましょう.Google Mapsの機能のマイプレイス,マイマップを使えば簡単にルートマップを作成することができます.
そして実際にその場所を訪れ,新たに発見したポイントをマイマップ上に追加して,オリジナルのマップを作成してください.