第八回 「里山研究フィールドにおける活動成果」
高知工科大学の修士課程では,「里山工学」という授業を開講しています.里山の再生・維持・活用に関するテーマを設定し,香美市佐岡地区にある里山研究フィールドで,学生それぞれの専門分野を活かしながら取り組んでいます.今年度は,「農地班」「防災班」「階段班」「発電班」の4グループが結成されました.今回のゼミナールでは,その活動成果を報告し,皆様のご意見を伺うことで,今後の活動に繋げていきたいと思います.
第八回 「里山研究フィールドにおける活動成果」
高知工科大学の修士課程では,「里山工学」という授業を開講しています.里山の再生・維持・活用に関するテーマを設定し,香美市佐岡地区にある里山研究フィールドで,学生それぞれの専門分野を活かしながら取り組んでいます.今年度は,「農地班」「防災班」「階段班」「発電班」の4グループが結成されました.今回のゼミナールでは,その活動成果を報告し,皆様のご意見を伺うことで,今後の活動に繋げていきたいと思います.
登壇者:農地班
発表テーマ:耕作放棄地周辺の整備を通した農地環境の再構築
概要: 里山研究フィールドにおいて耕作放棄地で活動する際,熱中症の対策にもつながる休憩場所の確保が必要となっていたことから,今回,休憩施設の設計と施工を行ないました.放置竹林の竹材を利用し,ドーム型の休憩施設を設置するとともに,暗渠も敷設して農地環境の整備も行いました.
座長の解説:農地班のメンバーは,耕作放棄地の問題に対して,まずは休憩施設から作りたいということで,その設計・施工を行ってくれた.材料は,放置林がら竹を切り出して使うという提案のため,竹細工の専門家から竹の資材化や竹ドームの作り方を学んだ.竹を四つ割りにし,2本継ぎで骨格を作成するのに,繋ぎ目の重ねしろの長さで形状と強度が変わるので,試行錯誤を重ねたようだ.農地に溜まる水の排水路も防災班による瓦礫処理で出てきた廃材を使って整備した.非常に自給率の高い成果であると同時に,鬱蒼とした耕作放棄地が心地よい場所に生まれ変わった.
登壇者:防災班
発表テーマ:つながる里山 〜地域連携拠点・動線の整備〜
概要:里山研究フィールドにおける老朽化した納屋が2024年6月に倒壊しました.瓦礫が金峯神社への山道を塞いだため,道路啓開を行うべく,瓦礫処理の計画と実施を行いました.また災害時に研究フィールドから避難する際のルートを確保するため,里道を探索していくつかのルートを選定し,その評価を行いました.
座長の解説:納屋の倒壊は,残った部分が母屋に倒れて被害が拡大する恐れがあった.そこで防災班のメンバーは,瓦礫の撤去と道路啓開,避難経路の確保という課題に取り組んだ.彼らはまず瓦礫置き場の敷地を確保するため,除伐や草刈を行い,瓦礫を分別しながらバケツリレーで移動させた.何人で何時間かけ,どれくらいの瓦礫処理ができたか,ドローンで上空から撮影しながら記録し,残りはどのくらいで処理が完了するか,見積もることもできるようになった.母屋から避難する場合の経路についても検討し,隣の集落へのアクセスのため,昔の山道を歩いて確認し,土砂崩れの危険性がないかも評価して,避難経路マップを作成した.瓦礫の撤去と避難経路マップは,来るべき地震に備え,有益な活動となった.
登壇者:階段班
発表テーマ:神社の参道中の階段改修における ステップ材料の変更による耐久性向上
概要: 2020年に里山工学の取り組みにおいて,金峯神社に通じる山道が急斜面であったことから階段が設置されました.それから5年が経過し,ステップの木が腐朽したため,測量によって雨水の流れを解析するとこで劣化状況と比較を行いました.階段の改修においてステップは,耐久性を高めるため,竹を型枠として作成した竹筋木灰コンクリートを提案しました.竹の型枠は外さずに,そのまま現地に設置することとしています.
座長の解説:階段班は,まず写真測量により,三次元形状を把握し,雨水の流下状況を解析した.解析結果により雨水が集中する場所が特定され,その部分に階段の劣化が激しいことが確認された.劣化の激しい段鼻部分は,竹を型枠とした木灰コンクリートで置き換えることとなり,農地班と連携して竹を切り出した.耐久性を高めるために木灰コンクリートに鉄筋の代わりに竹筋を用いた.木灰はアルカリが強いため,鉄筋が劣化しやすいと判断されたためである.実験室で強度試験も行い,十分な強度を確認している.型枠として使っている竹の表面が滑らないかとの心配はあるが,耐久性は向上しているので,5年後の状況が楽しみである.
登壇者:発電班
発表テーマ:貯水池を利用したマイクロ水力発電経路整備
概要: 里山研究フィールドでは,災害時における電力確保が課題となっています.そこで,マイクロ水力発電の設置に向けた水理システムの構築を目的としました.まず希少な水生昆虫が生息している既存の貯水槽の生物環境を維持しながら水を発電に利用する手法を立案しました.そして渇水期でも水が供給できるように谷に堰を作って取水する施設を設置しました.
座長の解説:発電班は,渇水期における水の確保に苦労した.貯水槽横の谷は,夏場は水量があるものの冬場は非常に少ない.谷の上流部にある水溜りに木灰コンクリートと木灰モルタルで堰を作り,貯水槽まで導水したところ,3日で1回の発電分の水量が確保できた.電力量にすると43Wに相当し,大きくはないが,災害時の通信用に使うことはできそうである.里山研究フィールドでの発電は,これまで学生たちは幾度となく挑戦したが,実現に至っていない.この貯水槽を用いたマイクロ水力発電には期待できそうである.
ゼミナールを終えて:今回は,学生たちが取り組んだ活動の報告だった.今年度の学生たちは,真面目に取り組んでくれたおかげで,5つのグループそれぞれの成果を披露できた.年によっては,3月にならないと成果が出ていないというグループもあったので,指導者としてはホッと胸を撫で下ろした.
それぞれの成果は,彼ら自身で汗をかきながら実行したもので,材料も現地で調達しているものが多く,自給率は高い.便利な材料や道具がなくとも,知恵を絞り,周りにあるもので,力を合わせて行動すれば,何とか達成できると感じてくれたはずである.
ただ,発表した学生たちは大学院生なので,学内や学会で研究発表の経験はあるが,一般の人に向けて話す機会はほとんどない.今回の発表でも専門用語についての解説がなく,分かりづらい発表となってしまった点は,私も反省しなければならない.学生たちも一般の人向けへの発表の難しさを痛感したことだろう.
これらの経験は,現代の学生たちに必要なことである.来場者の方々にはお聞き苦しい点もあったと思うが,ご容赦いただきたい.次年度も学生たちと面白い成果が生み出せるよう頑張っていきたい.