解読ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

Decoding Max Weber:

Protestant Ethics and The Spirit of Capitalism


解読ウェーバー

『プロテスタンティズムの倫理と

資本主義の精神

定価:本体1900円+税

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『プロ倫』はなにを解き明かしたのか?

本当にその試みは成功していたのだろうか?

いま受け取るべきメッセージはなにか?

超難解書の全体像を、平明で丁寧な文章で徹底解説。

「天職」概念や二重予定説といったプロテスタントの教説から、

いかにして資本主義を駆動するものが生まれ出でたか。

「近代という問題」の核心をえぐる思考のエッセンスを汲み、

これまで気づかれなかった現代的意義を探りあてる。

これが、ウェーバーの言いたかったことだ!

【裏表紙】


刊行あいさつ

『解読ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』』刊行あいさつ

謹啓

 年々温暖化とともに、予期しない雨や曇りの日が多くなってきたように感じられます。

皆様、いかがお過ごしでしょうか。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

 このたび、拙著『解読ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』』を上梓いたしました。ウェーバーの同書についての入門的な解説書でありますが、同時に、自分なりの解釈を示しております。皆様のご高配を乞う次第です。

拙著では、とくに二つのことを主張しています。一つは、従来の「プロ倫」テーゼ解釈は、誤りであるということ。もう一つは、「プロ倫」は新保守主義の観点で読むと、これまで見えにくかったものが見えてくる、ということです。

プロテスタンティズムの倫理は、その意図せざる結果として、資本主義の精神を生み出したといわれます。ではその背後にある論理構造は、どのようになっているのか。「プロ倫」テーゼのいわば謎を解明する、というのが拙著のモチーフになっています。

 振り返りますと、小生がウェーバーを知ったのは大学の学部生のころで、内田芳明先生の講義やゼミを通してでした。約30年前になりますが、その頃に受けた知の刺激は、いまでも鮮明に思い出します。

もし内田先生がご存命でしたら、拙著をみて「橋本君、「ウェーバー」じゃなくて、「ヴェーバー」だよ、「ウ」に「点々」だよ」と指摘されるかもしれません。

それはともかく、拙著をなによりも、内田先生にささげたいと思います。内田先生、当時の小生は、ウェーバーを読んでも歯が立ちませんでしたが、いまようやく『プロ倫』に向き合い、生きることの意味をいくばくか掴んだように思います。当時の小生を寛容に導いていただき、ありがとうございました。

 最後になりましたが、皆様のご健康を、心よりお祈り申し上げます。

謹白

20197

橋本努



目次

解読ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

講談社選書メチエ2019年7月刊行

橋本努

目次

はじめに

序章 ウェーバーってどんな人?

0-1 こんな人生だった

0-2 業績の簡単なまとめ

0-3 『プロ倫』はどのような本か

第一章 「問題」はどこにあるのか?

1-1 プロテスタントの人たちは、なぜ経済的に成功したのか

1-2 問題をさらに練る

       【コラム】ドイツにおけるカトリックとプロテスタントの割合の推移

第二章 資本主義の精神とはなにか?

2-1 ゾンバルトの定義を超えて

2-2 ベンジャミン・フランクリン

2-3 資本主義以前にも存在した?

     【コラム】ウェーバー主義者とマルクス主義者の対話

2-4 金銭欲を否定する精神

2-5 伝統主義を克服する

2-6 人はなぜ働くのか

2-7 理念型について

      【コラム】オランダの貿易商人ベイラント

      【コラム】アルベルティの『家族論』

第三章 「天職」の概念が生まれた

 3-1 「天職」概念の由来

 3-2 マルティン・ルターの人生

 3-3 ルターに同居する「革新」と「伝統」

 3-4 プロテスタンティズムのキーワード解説

第四章 禁欲的プロテスタンティズムの倫理とはなにか? 1

 4-1 二重予定説の登場

 4-2 ジャン・カルヴァンの人生

 4-3 二重予定説の心理的インパクト

 4-4 二つの間奏:カルヴァン派による近代化の特徴

      (1) 脱呪術化と音楽

      (2) ヴォエティウス vs. デカルト

 4-5 四つの類型:中世の日常、修道院、ルター、カルヴァン派

      【コラム】修道院の生活

 4-6 ルター派は重商主義の精神?

第五章 禁欲的プロテスタンティズムの倫理とはなにか? 2

 5-1 定義には二つの極がある

 5-2 敬虔派

 5-3 メソジスト派

      【コラム】メソジスト派の方法

 5-4 洗礼主義の信団(バプティスト派・メノナイト派・クエーカー派)

      【コラム】日本人クエーカー、新渡戸稲造の職業論

 5-5 まとめと考察

第六章 天職倫理と資本主義

 6-1 「倫理」と「天職倫理」のあいだ――断絶説

 6-2 バクスターの天職倫理

 6-3 天職倫理をかかげる社会

 6-4 新保守主義とは?

 6-5 「プロ倫」テーゼを定式化する

 6-6 梃子と幼少期と育成

第七章 現代社会で生きる術を考える

 7-1 ウェーバーの答え

 7-2 「最後の人間」

 7-3 新しいリベラルに向けて

補論

 8-1 ルターの「ベルーフ」論をめぐって

 8-2 「プロ倫」テーゼは正しいのか?――実証的検証

あとがき


紹介エッセイ(1)「ウェーバー『プロ倫』に隠された謎とは」

(「ウェーバー『プロ倫』のタネ明かし」『本』所収のネット版)