開始前に現在の到達度をチェックしましょう
このセクションでは、抽出した健康課題に対して1つの事業化を実施します。
具体的には、①事業計画書の作成 ②ポンチ絵の作成 ③部長模擬査定 の3つを行います。
事業化は行政保健師として新任期からどの部署でも実施する必須スキルです。
予算編成や組織として意思決定プロセスを踏まえた健康課題解決の具体化を行います。
政策:行政課題に対応するための基本的な方針の実現を目的とした行政活動
施策:政策を実現するための具体的な方策や対策
事業:施策を具現化するための個々の行政手段
横浜市での実際の運用例として、以下のように公表されています。
出典:横浜市 令和6年度 政策-施策-事業体系図
事業には様々な種類があります。
・直営実施、委託、補助、システムづくり、組織開発、部局横断などなど
事業化は自治体の全部局で行われます。各組織に解決すべき課題があるため、保健部局で事業化を行うことは健康課題の重要性や解決することの効果を、保健以外の他部局や財政担当課にも理解してもらう必要があります。
つまり、地域診断とエビデンスとコスト意識に基づく事業計画書を作成し、上司及び他部局の理解を得る必要があります。
また、スクラップアンドビルドの視点も大切です。事業化だけを行うと事業数が膨大になり本当に必要な事業がわからなくなります。そのため事業を実施する期間や対象範囲、事業評価を明確にすることで真に必要な事業に予算を割くことができます。
(実際は法令や国の指示により事業化を実施することが多い)
保健師が住民の背中を押すことで、住民自身が健康になるように支援することができる事業かどうかも検討する必要があります。これは、保健師として大切な視点です。
事業を実施するにはコストがかかります。行政活動におけるコストの原資は税金が中心であり、大切に使用する必要があります。
予算では一般的に3つの財布を駆使します。国費(国から支給される財源)、都道府県費(都道府県から支給される財源)、市区町村費(市区町村の財源)。事業化する際に国や都道府県の補助や交付金を受けられる場合は、使用することも大切です。
予算編成という業務を通じて、1年間に実施する事業の必要性やコストを算出し上司や財政担当課の査定を受けて適正な使用を目指します。
上司や財政担当課の査定を受けることで、行政保健師1人の意見ではなく自治体という組織として事業を実施する判断を行うことも特徴です。
時期や内容の具体例は豊中市HPがわかりやすいため、以下のURLを開いてみましょう。
予算編成の流れにおいて部長査定は4行目に記載されています。
保健師が所属する課で作成した事業計画が初めて課以外で細かく精査される場です。
部長査定を第1関門とし、財務部査定→市長副市長査定→市長査定2→議会での議決 を経て事業が認められます。
原資である税金を使って事業を行うので、保健師1人よがりの事業にならないよう、根拠にもとづき組織として意思決定し事業を進める必要があるため、このような編成作業を行っています。
では実際に行政保健師として事業計画書を作成してみましょう
②のポンチ絵作成、③部長模擬査定 のベースとなる計画書です。
抽出した健康課題のうち、事業計画書を作成する健康課題を1つ決定する
決定のポイント
・step2で作成する事業計画書を見ながら検討するとよい
・決定した健康課題に属するすべての原因について対応する事業ではない。いくつかの原因に対応する事業とする。
・"保健師"が行う必要性や、他部署の所管業務、ストラテジーマップを用いた優先順位等を判断する。
G-CHAMテンプレートの事業計画書案シートに入力し作成する
<作成項目一覧>
事業名
予算区分
→款・項・目(かん・こう・もく)を記載する。款項目とは予算内訳の区分名を示す。
→保健師活動の場合、款:衛生費 項:保健衛生費 であることが多い
→目はweb検索で「自治体名 予算書」と検索し、一般会計予算書PDFの中で「保健衛生費」と検索し確認する
自治体総合計画(企業経営 戦略)の該当目標
関連計画の該当目標
根拠法令等
現状と課題(現状の取り組みも含む)
長期目標
短期目標
評価指標(数値で評価。評価方法も記載)
→アウトカム評価、アウトプット評価、プロセス評価、ストラクチャー評価であり以下の資料を参考にしてください
・国立保健医療科学院 令和5年度【短期研修】「生活習慣病対策健診・保健指導の企画・運営・評価に関する研修」
2日目Ⅱ-2.PDCAサイクル推進のための保健事業の評価 5ページ目
資料 国保・後期高齢者ヘルスサポート事業ガイドライン(令和5年4月改訂版) 107ページ目
6月8日【演習】『保険者が行う特定健診・特定保健指導の事業評価』
事業内容
必要経費の積算(例)会場費:2,000円×2回(〇〇公民館)
→積算は経費の内訳のこと。事業を実施するために必要な経費をすべて計上する
→積算内容の根拠を上司や財政担当課に説明できる必要がある
他の計画との関連(波及効果や類似事業有無)
※このセクションではLTを実施しません(部長査定までお互いの内容を秘匿するためです)
作成した事業計画書の内容を基にポンチ絵を作成します
ポンチ絵は事業計画書を他部局や事務職、市民にもわかりやすく説明するためにまとめた概要図です。予算編成の概要図や資料としてHPに掲載されていることが多いです。
③部局長模擬査定 で使用します
図やイラスト、デザインを駆使して作成しますので、以下を参考にしてください
参考を真似る必要はありません。各チームで検討しよりよいポンチ絵を作成してください
ポンチ絵作成のルール
・スライド1枚で作成
・予算金額を記入
・初めて見る人が理解できるように
※このセクションではLTを実施しません(部長査定までお互いの内容を秘匿するためです)
以下のGoogle formにアクセスし今回の取り組み内容をフィードバックしてください
行政保健師として作成したポンチ絵と事業計画書を基に、上司に説明し事業化の許可をもらいましょう
A4コピー用紙と太いマジック、セロハンテープを準備してください
グループが複数ある場合は、説明チームと部長チームそれぞれの役職と交互に実施する順番を決める
説明チーム:課長(事務系)、係長(保健師)、担当保健師を決める
部長チーム:部長(事務系)、副部長2人(医療系副部長、事務系副部長)を決める
A4用紙を三つ折りにして席札とする。各自の役職を記入する(マジックで太く)。
3面あるうちの1面に説明チームの役職、もう1面に部長チームの役職を記入する。
チームとチームの間は机1つ分の隙間をあけて対面するように配置する
課長(事務系)
・部長への説明者。部下である係長と事業化担当保健師が作成した事業化を実現したい。
・事業計画書とポンチ絵の記載内容は把握しているが、より詳細な内容は担当保健師に説明して欲しいと思っている。
係長(保健師)
・部下である事業化担当保健師が作成した事業化を実現したい。
・事業計画書とポンチ絵の記載内容は把握しているが、より詳細な内容は担当保健師に説明して欲しいと思っている。
担当保健師
・初めて作成した事業化を実現したい。一般的な事業にならないよう、担当地域に適した事業化を行った強い思いがある。
・詳細の部分については説明を任すと係長より伝えられている。でも答えられないときは係長や課長に助けて欲しい。
部長(事務系)
・今回の事業化以外に把握する5つの課から計50以上の事業化提案を受けている。
・今回説明される事業案が他の事業案と比較しても実施する価値があるかどうか査定したい。
・自治体のあるべき姿や各種保健福祉関連計画との関連を考えている。
・判断ポイント:自治体の目指すべき姿や方針、各種計画との整合性、他部局が所管する事業との類似性や関連性
副部長(医療系)
・部長と同席しこれまですべての事業化提案を受けてきた。
・医療系副部長として事業案を保健医療の観点から査定して欲しいと、部長より指示されている
・査定ポイント:、いつまで実施して地域がどうなればいいのか、これまでの事業との違いや特徴、保健医療の観点からの妥当性、エビデンスの妥当性、ヘルスプロモーションの視点
副部長(事務系)
・部長と同席しこれまですべての事業化提案を受けてきた。
・事務系副部長として事業案を予算や事業管理の観点から査定して欲しいと、部長より指示されている
・査定ポイント:自治体全体や他事業の予算及び他の事業(過去も含めて)との妥当性、事業管理(進捗管理、事業終了時期、評価など)の妥当性
各チームに分かれて作戦会議を実施し以下を検討します
説明チームは部長チームにポンチ絵を提示してください(PCに表示して渡してもok)
※事業計画書は手持ち資料とするため、部長チームには見せない
・説明チーム:ポンチ絵を用いた3分間での説明内容、想定される質問と回答内容をメモ
・部長チーム:10分間での質問内容を考え、質問者を分担しメモする
質問のルール
質問内容はポンチ絵や各自の立ち位置、自治体のHPなどを参考にする
論破や批判はしない。この場の全員が所属自治体をよりよく、住民により健康になって欲しいと思っている。
質問は的確にわかりやすく。質問自体が長くならないように。
回答に納得するまで深堀りする。空気は読まない。ふとした疑問、ささいな疑問、なぜ?本当?を大切に。
・説明チームプレゼンを行う(ポンチ絵) 3分間
・部長チームがPCのポンチ絵を見ながら質問を行い、説明チームが回答する 10分間
・終了後、各チームが感想をディスカッションする 4分間
この後、説明チームと部長チームを入れ替え、全チームが終了するまで繰り返す。
各自のスキルアップを可視化するため、以下のフォームに回答してください
G-CHAM実施前後に同じ質問に回答することで、スキルアップを可視化します
地域診断について:https://forms.gle/qRXPdQnDqaZC3i6H9