奈良県立医科大学医学部看護学科3回生の講義で使用します
奈良県立医科大学医学部看護学科3回生、他大学の看護師保健師学生、行政保健師、産業保健師等
ヘルスプロモーションについて理解し、効果的な健康教育を企画、実施、評価できる。
PC、インターネット環境、word, powerpoint等のソフト
1回 健康教育・ヘルスプロモーションとは
2回 個人、家族、集団、地域の健康課題と強みのアセスメント①, 健康教育演習1:対象自治体と健康課題の決定
3回 個人、家族、集団、地域の健康課題と強みのアセスメント②, 健康教育演習2:対象の決定
4回 健康教育の目的と目標、関連する理論, 健康教育演習3:目的と目標の決定
5回 健康教育のコツ①実施内容と頻度, 健康教育演習4:実施内容と頻度の決定
6回 健康教育のコツ②実施方法と場所, 健康教育演習5:実施方法と場所の決定
7回 健康教育のコツ③コストと効果, 健康教育演習6:費用対効果と費用便益の検討
8回 健康教育のコツ④評価の設定, 健康教育演習7:評価内容、評価方法の決定
9回 健康教育のコツ⑤振り返りとネーミング, 健康教育演習8:これまでの作成内容の修正、企画した健康教育に名前をつける
10回 健康教育のコツ⑥実践する際の要点, 健康教育演習9:発表原稿の作成
11回 健康教育のコツ⑦効果的な広報, 健康教育演習10:広報ポスターの作成
12回 健康教育のコツ⑧見やすくわかりやすい媒体, 健康教育演習11:媒体の作成
13回 健康教育のコツ⑨予行演習と修正, 健康教育演習12:グループ間で予行演習し修正
14回 健康教育のコツ⓾:実践, 健康教育演習13:発表と評価
15回 健康教育のコツ⑪評価に基づく改善, 健康教育演習14:改善案の作成
📌250 mesh Guardianでハイスコアを目指そう
以下の手順に従って実施する
①4人1グループを構成する
②https://gisphn.github.io/250mesh-Guardian/ にアクセスする(PC又はタブレット推奨)
③5分間でハイスコアを目指す(MAX133点)。スコアは画面左上のscoreの数字。Resetでやり直し可能。
④5分経過後に、自身のハイスコアをgoogle formに登録👉https://forms.gle/teuAKfS7D7z2SqJE7
⑤その後、グループでハイスコアを比較し各自が実施した戦略について共有する(5分間)
⑥いくつかのグループにハイスコアと戦略を発言していただきます
📌ヘルスプロモーションとは
ポイント
Health is, therefore, seen as a resource for everyday life, not the objective of living. WHO
健康は生きる目的ではなく、日々の生活のための資源と捉えられる。
なぜヘルスプロモーションが必要か
1960年代:感染症予防における一般的な抵抗力の強化、健康教育によって感染機会をさける
1970年代:疫学的なアプローチによる心臓疾患やがんなどの予防教育、喫煙や栄養などの危険因子に関する情報提供や教育
↓
1977:Health for All
1978:プライマリ・ヘルス・ケアに関するアルマ・アタ宣言
(ヘルスプロモーション、疾病予防、治療、管理、さらにリハビリテーションや緩和ケアなどを含む社会全体のアプローチ)
↓
1980年代:個人への教育を超え、社会科学的アプローチを前面に押し出した「総合的な健康政策」が展開
↓
1986:ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章
ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセスである
↓
1990年代:人々の生活の場(家庭、学校、職場、病院、地域、街)で健康を支援するプログラムが展開
2000年代:ヘルスプロモーション活動が科学的に評価される(EBM)
↓
2005:ヘルスプロモーションに関するバンコク憲章
ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセスである
👉健康の社会的決定要因:Social determinants of health。人々が生まれ、育ち、暮らし、働き、年を重ねるための社会的・文化的・政治的・経済的・環境的条件と、こうした日常生活の条件を生み出す権力、意思決定、金銭、資源へのアクセス権のこと。ヘルスプロモーション用語集
📌グループで健康の社会的決定要因について考える
以下の手順に従って実施する
①4人1グループを構成する
②以下をgoogle formに登録👉https://forms.gle/teuAKfS7D7z2SqJE7
③健康の社会的決定要因について各自で調べ、経験したり見たり聞いたりした健康の社会的決定要因を思い出す(10分)
④ 1人で③の内容を健康にするためにコントロールする方法を"具体的に"考える(7分)
⑤その後、グループで各自が入力した内容を共有する(5分間)
⑥いくつかのグループに発言していただきます
📌ヘルスプロモーションを達成するために
健康のための基本的な条件と資源
平和、住居、食物、収入、安定した生態系、生存のための諸資源、社会的正義と公正
👉専門職として地域全体での活動が重要であり、かつ、学際的な連携が必要
5つの戦略プロセス
オタワ憲章----①唱道--------------②能力の付与--------------------------------③調停
👇
バンコク憲章-①唱道---②投資---③能力形成------④法的規制と法制定---⑤パートナーと同盟形成
①唱道:人権と連帯意識に基づいた健康を導く
②投資:健康の決定要因に焦点を当てた持続的な政策、活動そして社会的基盤に投資すること
③能力形成:政策開発、リーダーシップ、ヘルスプロモーションの実践、知識移転や研究、そしてヘルスリテラシー(健康識字)のための能力を形成する
④規制と法制定:すべての人々の健康と well-being を達成するために、有害なものから高水準の保護と、平等な機会を保障する
ための規制と法律を制定する
⑤パートナーと同盟形成:持続可能な活動を創造するためにパートナーシップと公的組織、民間組織、非政府組織そして市民社会による同盟をつくる
👉行政保健師はすべての戦略プロセスを保健師活動として具現化している。
👉国や地域が変われば柔軟に変化させる必要がある。
5つの重要な活動
行政保健師は5つの活動の全てに関与している
①健康的なルールや制度をつくる(健康的な公共政策づくり)
健康に関する取り組みは、保健分野だけの問題ではない。たとえば、交通や教育、働き方などの分野でも、健康を守るためのルールや制度(政策)を考える必要がある。誰もが自然に健康に良い選択ができるようにするのが目的。
②健康を守れる環境をつくる(健康を支援する環境づくり)
人は環境の影響を強く受ける。たとえば、住んでいる場所や職場、遊ぶ場所が安全で快適かどうかが、健康に大きく関わる。だからこそ、日常の環境を健康的に整えることが大切。
③地域の力を高める(地域活動強化)
地域の人たちが自分たちの健康について考え、行動できるようにすることが大事。自分たちで問題を見つけて、解決する力(=エンパワーメント)を持つことでよりよい健康につながる。
④生活に役立つ知識やスキルを身につける(個人技術の開発)
健康を保つには正しい情報を知ること、そして自分の生活に活かす力が必要。病気を予防したりうまくつき合ったりするためのスキルを身につけることで、自分自身の健康を守る。
⑤保健医療のあり方を見直す(ヘルスサービスの方向転換)
病気になってから治すだけでなく病気を防ぐ・健康を守る方向にも医療をシフトさせることが大切。そのために保健師や医師だけでなく、住民や地域のグループも一緒に取り組む必要がある。
📌グループで5つの重要な活動について考える
以下の手順に従って実施する
①4人1グループを構成する
②5つの重要な活動の具体例を考えgoogle formに登録👉https://forms.gle/teuAKfS7D7z2SqJE7(10分)
③その後、グループで各自が入力した内容を共有する(5分間)
④いくつかのグループに発言していただきます
📌健康教育
健康教育とは
健康教育とは知識を増やし、モチベーションに影響を与え、ヘルスリテラシーを向上させることによって、個人とコミュニティの健康改善を支援するためにデザインされた学習体験の組み合わせのことである。
👉つまり「教育」の単語から想起される「一方的な指導」ではないし、対象者が具体的な行動に移すことのできない画一的な内容でもない。
👉健康教育には健康の決定要因、個人の危険因子、医療制度の利用などに関する情報の伝達が含まれる。
👉健康教育には、予防接種や健(検)診への参加、服薬アドヒアランス、健康行動の変化など、あらかじめ決められた行動を支援するためのタスクベースのコミュニケーションが含まれる。
👉一方、人々が健康に関する様々な決定を自律的に行い、状況の変化に適応できるようにするための汎用・伝達可能な健康のためのスキルを身に着けるためのスキルベースのコミュニケーションも含まれる。健康の決定要因に対処するための行動を可能にする知識とスキルの開発も含まれる。
健康教育演習1:対象自治体と健康課題の決定
📌今回以降の演習では、行政保健師が実施する健康教育の企画・実施スキルを習得します
📌この授業から、講義中のタスク項目📝を各自で作成してください
word, pptx, canva, notionなど作成媒体の制限はありません。
文字だけでなくグラフやマップ等を用いる工夫が必要です。
講義終了後、PDF形式での提出を求めます(成績評価の対象です)。
📌健康教育で介入する健康課題を決める重要性
健康課題には様々な要因が複雑に絡み合っている。
健康課題が複数の自治体で同一だったとしても、地域の強みや影響要因は必ず異なる。
強みや影響要因が理解できると、健康教育が普遍的にならずに自治体に適したオリジナルな内容になる。
✍️ 用語の確認
健康課題:地域に存在する健康上の問題点(例:低栄養、受診率の低さなど)
強み:地域にある、健康課題の解決を助ける力(例:住民組織、保健師の配置など)
影響する要因:課題や強みにポジティブまたはネガティブに関係するもの(例:交通手段の有無、制度の存在など)
📝タスク:地域の健康課題と強み、影響する要因とそれらの根拠を記述する
奈良県内の市町村を1つ選択し記述する
健康課題を抽出する対象分野を以下の9つから1つ選択し記述する
①親子保健
②成人保健
③高齢者保健
④障害保健(精神)
⑤障害保健(身体)
⑥障害保健(知的)
⑦難病保健
⑧健康危機(災害)
⑨健康危機(感染症)
【地域の健康課題・強み・対象者を整理するための記述手順】
①市町村と分野の選定後、健康課題・強み・影響要因をできるだけ多く調べて整理する
あなたが選んだ市町村と、対象とする健康分野(例:高齢者、母子、生活習慣病など)について、
(1)地域の健康課題(顕在的・潜在的な問題)
(2)地域の強み(問題に対処できる力)
(3)影響している要因(課題や強みに影響する要素)
をできる限り多く調べ、リスト形式などで整理して記述してください。
※情報が不足している部分や、他地域との比較で気づいた点も忘れずに書きましょう。
②上記の内容を裏づける「事実(データや情報)」を要約して書く
それぞれの健康課題・強み・要因について、どんな事実やデータに基づいているのかを簡潔に記述します(1つずつ根拠を示す)。
例:健康診断の受診率が市全体より低い → 「○○市健康増進計画(2023年)」より 受診率45%(市平均60%)など
※統計、行政の計画、報道、論文など、信頼できる出典を明記してください。
※地区名の特定が可能な情報は、必ず明記してください(例:○○地区、○○校区など)。
③ 自分自身でアセスメント(評価・解釈)を行い、推論を書く
要約した事実をもとに、自分なりに健康課題や強みをどう捉えるか推論を記述します。
自分の視点や仮説も交えながら、「なぜこの課題が重要か」「この強みがどう活かせるか」を推論として説明してください。
※ここでは「あなたの意見や読み取り」が重要です。データの背景を想像しながら考えましょう。
④調べた健康課題をストラテジーマップを使って「優先順位づけ」する
複数の健康課題のどれから優先的に取り組むべきかを考えます。
ストラテジーマップ(重要度×対応可能性など)を活用し、各健康課題についてABCDを付与してください。
また、なぜその区分になったか理由を添えて記述してください。
⑤優先順位が高い健康課題の中から、健康教育で扱うものを1つ選び、理由とともに記述する
最終的に健康教育として取り組むべき「1つの健康課題」を選びましょう。
選んだ理由は、地域性、対象者のニーズ、介入可能性などを踏まえて記述してください。
📌タスクのポイント:地域の健康課題と強み、影響する要因を探す = プチ地域診断
コミュニティ アズ パートナーモデルが道しるべとなるため、以下のweページが参考になる
まずは、自治体が策定している計画を読み解いてください
・健康増進計画、高齢者福祉計画、介護保険事業計画、自殺対策計画、医療費適正化計画、データヘルス計画、障害福祉計画、障害児福祉計画、保育計画
・医療計画、がん対策基本計画、循環器病対策基本計画、感染症予防計画
・その他、自治体独自の計画もある
・疾患だけに注目するのではなく、地域における活動や地域全体の健康にも目を向ける
影響する要因も計画に記載されていることが多い。
・自治体が計画に要因として記載しているもの以外にも多くの要因がある
・自治体のHPや広報等を参考に幅広い視点で要約、推論する必要がある
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:5分間
📌各列の代表1グループを決定し、タスク実施内容を発表:10分
📌レスポンスシートに入力:2分間
📌健康教育で対象を決める重要性
対象の設定を誤ると健康教育の効果が発揮されない
行政保健師が活動する"地域"は実に多様な人々が存在している
できる限り具体的に詳細に設定する必要がある
📝タスク:健康教育の対象とする健康課題の対象について、以下の各項目について設定する。また、設定した根拠も各項目ごとに併せて記述する。
【健康教育の対象】
方法:集団を対象とする
①対象の大枠:当事者、家族、地域住民、支援者、関係機関など、組み合わせもok
②当事者の属性:診断済み、予備軍、通院中、未受診、内服中、内服中断、未治療など
保育園児、幼稚園児、在宅保育、遊びの場に来ている児など
在宅生活、入所中、通いの場に通っている、ひきこもっているなど
健康危機経験者、未経験者など
③地域住民の属性:誰でも、当事者の近隣住民など
*健康教育の対象を当事者や家族とした場合、日常生活で関与する可能性のある地域住民を候補とする
例:スーパー、駅、職場など通常の日常生活で触れる機会の多い場所が挙げられる。
④支援者、関係機関の属性:職名、職位、公的機関、民間機関
⑤年齢:全年齢、年代を限定
⑥国籍:限定しない、限定する(国籍を記載)
⑦上記を満たすと考えられる候補:自治体全体、小学校区名、自治会名、特定のサークル、ボランティア等の組織、会社、団体など ※選択済みの自治体に実在する名称を特定し記載すること
📌個人で実施:30分間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:10分間
中間共有のため個人作業の途中で構いません
📌個人で実施:残り時間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:5分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
📌各列の代表1グループを決定し、タスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
📌 目的とは(最終的に目指す姿)
1つに絞る
健康教育を通じて実現したい理想の状態
抽象的で広い視点から、健康課題の解決やQOLの向上を見据える
長期的・全体的な方向性を示すもの
<例>
地域住民が生活習慣病を予防できる
妊産婦が安心して出産・育児できる地域社会を実現できる
📌 目標とは(目的に近づくための具体的な到達点)
複数設定する
目的を実現するための具体的な行動指標
数値や行動、期限を含めて、評価可能な状態にする
短中期的な視点で、成果を測定できる
<例>
3か月以内に○○地区の30代女性の健診受診率を20%から30%に引き上げる
来月末までに妊婦教室への参加者数を平均5人から10人に増やす
📌 健康教育に役立つ行動変容理論(5つ)
出典: 米国国立がん研究所, 国立保健医療科学院(訳)『一目でわかるヘルスプロモーション(Theory at a Glance)』
PDF全文:https://www.niph.go.jp/soshiki/ekigaku/hitomedewakaru.pdf
① 健康信念モデル(Health Belief Model:HBM)
🔑 キーワード:「行動を起こすかどうかは、リスクの認識と自信しだい」
主な構成要素と意味:
要素---意味---例
認知された脆弱性----「自分にも起こるかも」という実感---自分も糖尿病になるかもと思う
認知された重大性---病気になったら大変そう、怖いという認識---糖尿病は失明することもある
認知された利益---行動すればいいことがあると思える---健診を受ければ早期発見できる
認知された障害---行動することに対する不安・面倒---健診は時間がないし面倒
行動のきっかけ---実際に動くきっかけ(外部からの刺激)---ポスター・医師の声かけなど
自己効力感---自分にもできると思える---健診を予約する自信がある
ポイント: 6つの要素すべてが行動に影響するため、健康教育ではそれぞれを意識した支援が必要!
② 変化のステージモデル(トランスセオレティカルモデル:TTM)
🔑 キーワード:「人はステップを踏んで行動を変える」
5つのステージ:
無関心期(禁煙に関心がない)
関心期(禁煙したい気持ちはある)
準備期(具体的な行動の準備中)
実行期(実際に禁煙を始めた)
維持期(禁煙を続けている)
ポイント: ステージごとに、必要な支援(声かけ・教材など)を変えることが重要。
③ 計画的行動理論(Theory of Planned Behavior:TPB)
🔑 キーワード:「行動の意図があれば動ける」
主な構成要素:
要素---意味
行動意図:これまでに行動をとったか、または行動をとる可能性はどれくらいか
態度---行動を良いと思っているか
主観的規範---周囲(家族・友人など)がその行動を応援してくれそうか
行動コントロール感---自分ができると思えるか(環境・スキル面含む)
ポイント:2~4が行動意図(やろうと思う気持ち)に影響し、実際の行動につながる。
④ 社会的認知理論(Social Cognitive Theory:SCT)
🔑 キーワード:「周囲から学び、“やればできる”と思えれば行動できる」
主要な考え方:
相互決定論:行動、個人的要因、環境が相互に影響しあう
行動能力:ある行動をとるためには、何をどのように行うかを知る
期待:その行動で良い結果が得られそうという期待
自己効力感:自分にできると思える力(最重要)
観察学習:他人の良い行動を見て学ぶ
強化:行動後に褒められる・感謝される経験・報酬をもらえる
ポイント: 行動変容を支えるのは「周囲の支援+本人の自信」
⑤ 予防行動採用プロセスモデル(PAPM)
🔑 キーワード:「知らない→気づく→考える→やってみる→続ける」
7つのステージ:
危険を知らない
知っているが行動しない
行動するかどうか考えている
行動しないと決めた
行動すると決めた
行動している
維持している
ポイント: 「知らない人」「考えている人」「行動中の人」では教育の仕方が全く違う
📝タスク:
①対象者を最終決定し決定した理由とともに記述する。
・当事者や家族、地域住民、支援者など多様な候補から、講義で実施する健康教育の対象を決定し理由とともに記述する(例:当事者だけ。家族だけ。当事者と家族 など)
②健康教育で使用する理論を上記から選択し、選択した理由とともに記述する
③目的と目標を設定し、設定した理由とともに記述する。
📌個人で実施:30分間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:10分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
「行動を変える学びをデザインしよう」
~健康教育の内容・頻度・方法・場所を一貫して企画する~
📌 この演習のねらい
第5回、第6回の演習では、対象者に応じた効果的かつ継続可能な健康教育プランを設計します。
以下の4つの視点を一貫させながら、現場で実施可能なレベルの教育案を完成させることが目標です。
内容(何を伝えるか)
方法(どのように届けるか)
頻度(どれくらい・いつまで行うか)
場所(どこで・どの環境で行うか)
1. 健康教育の内容とは?
健康課題に対して「どのような学び・気づき・行動のきっかけ・スキルの取得」を提供するか
単なる知識提供ではなく「行動変容に導く学習体験」を設計する
提供する知識やスキルは科学的エビデンスに基づく内容とする(出典を明記)
厚生労働省などの行政機関、国立の研究機関、学会などが望ましい。
特定のクリニックの医師のwebページなどを利用する場合は、掲載内容の出典元を必ず確認すること。
対象、健康課題、目的及び目標、理論との整合性を確保する
健康教育を健康教育シートとして【導入、展開、まとめ】の3パートに分け各項目について作成する
第10回以降ではこの内容をもとにシナリオ(原稿)や広報ポスター、媒体等を作成する
禁煙を目標とした健康教育の一例
1-1.健康教育の内容と提示方法の工夫
ただ読むだけでは効果は出ません —
(1)健康教育で最もやってはいけないこと
健康教育において最も避けるべきことは、作成した文章を一言一句そのまま読み上げて終わることです。
それでは参加者には何も伝わらず、行動変容にもつながりません。
健康教育の効果は教材そのものではなく、「いかに保健師がその教材を使いこなすか」にかかっています。
スライドや配布資料、プロジェクター、ホワイトボード、ICT教材などを使っていても効果的に提示できなければ意味がありません。
(2)健康教育でのポイント
健康教育は単なる情報提供ではなく、参加者と共に学び行動変容を促す実践活動です。 講師が自由な発想で楽しさ・わかりやすさ・共感・気づきを盛り込んでこそ、参加者の心に届きます。
「教材をどう工夫して活用するか」は、保健師の専門性の一つです。 皆さんが根拠に基づきながら自由な発想で工夫し、読み上げではなく“魅力的で伝わる”健康教育を目指しましょう。
(3) アプローチによって「見せ方」が変わる
ポピュレーションアプローチの場合:
面白く・楽しく・親しみやすく・魅力的に
参加者全体が「楽しめる」ことが重要
自己紹介では、名前+趣味+地域の名産などを交えて興味を引く
健康課題(熱中症・禁煙など)について、参加者自身の経験を聞く
クイズ形式、選択肢提示、前に出ての発表など、巻き込み型の設計を工夫
ハイリスクアプローチの場合:
出典:Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る
ハイリスクアプローチの健康教育では参加者は、リスク(顕在的・潜在的)を抱えていることが多く、「自分の状態を語ることに不安」を感じるケースもあります。
教育の導入時点で「ここは安心して発言できる場である」ことを明確に伝え、心理的安全性(Psychological Safety)を担保する必要があります。
最初に「グランドルール」を明示すると効果的です
ハイリスクアプローチにおけるグラウンドルールの実践例
①安心して参加できる場をつくるために
この教室ではどんな意見も否定されることはありません。
ここで話した内容は外部に持ち出さず、守秘を徹底します。
わからないことや不安なことがあれば、遠慮なく共有してください。
② 互いを尊重するためのふるまい
発言者の話はさえぎらず、最後まで聞きましょう。
うなずき、アイコンタクト、相手の方に身体を向けるなど、話を聞く姿勢を持ちましょう。
理解できたときは「なるほど」「わかります」と肯定的に返しましょう。
否定的な言い方(例:「なぜそんなことを?」)ではなく、解決策に焦点を当てる表現を心がけましょう。
③対人関係において開かれた姿勢を示す
自分の考え方や行動の背景も少しずつ共有してみましょう。
他の人の行動や考えに驚いたり違和感があっても、受け止めようとする姿勢を大切にしましょう。
仕事や家庭に関する雑談も交えて、人間関係のあたたかさをつくりましょう。
④意思決定を尊重し合う
意見の違いは学びのチャンスです。異なる視点は大歓迎です。
他の人の発言をさえぎらず、必要なら場を整えて話しやすくしてあげましょう。
チームとしてこの教室を「よくするために」、あなたの感じたことや思ったことが必要です。
(4)教材提示・話し方のテクニック
スライドをそのまま読むのではなく:
強調すべきキーワードは繰り返す・発言の際に抑揚を加えたり間を空ける・身振りを加える
声のトーンやスピードに変化をつける
視線誘導が大事:
プロジェクター、ホワイトボード、指差し、発言での補完で「今どこを話しているか」を明確に
一方的ではなく双方向に:
「どう思いますか?」「似た経験ありますか?」など、参加者の声を引き出す
(5) 教材そのものにも「動き」を
紙の資料だけでなく:
ホワイトボードやマグネット、アプリ、リアルタイム投票などを活用
内容を視覚的・感情的に届ける工夫:
ストーリーテリング(事例紹介)
絵・図・グラフ
動画や音声
(6) まとめの場面でも「仕掛け」を
教育の効果を確認するには:
クイズ
理解度を手挙げや拍手の強さで測る
簡易アンケートをその場で配布/Webで実施(QRコード提示)
次につなげるための「問いかけ」や「宣言カード」なども効果的
2.効果的な学習法の例
学習法---特徴---例
講義(知識提供)----短時間で多くの情報を伝えられるが、定着しにくい---保健師による食習慣の講義
ワークショップ---自分の意見を出し学び合いながら気づく---食事記録を見せ合いながら減塩アイデアを共有
体験学習---手を動かしながら記憶に残す---減塩みそ汁を作って味の違いを体験
ロールプレイ ---状況を再現しながら行動スキルを学ぶ---喫煙場面の断り方を演じて練習
ピア・エデュケーション---似た立場の人同士の学びが行動を促す---若年妊婦による体験談
3.開催方法(届け方)を考える
方法---特徴---注意点
対面(集合)---交流しやすく体験しやすい---会場までのアクセスと人数制限
オンライン,オンデマンド---移動不要、反復視聴も可能---デジタル格差や通信環境
訪問型---信頼・継続に強い---人的リソースが必要
混合型(ハイブリッド)---柔軟対応可能---設備と運営がやや複雑
4. 頻度を決める視点
行動の定着には複数回必要(例:週1回×3回、月1回×6か月 、年1回など)。間隔も重要。
評価の時期を逆算して設計(中間評価・最終評価)
忙しい生活に配慮した設計(夜間・休日など)
実施者側の負担(職員の時間外業務と休日出勤)や資源&コストとのバランス
5.ポイント:「続けたくなる工夫」(行動経済学)
出典:OECD (2019). Tools and Ethics for Applied Behavioural Insights: The BASIC Toolkit. OECD Publishing.
続けてもらうためには「学びの頻度」と「心理的なハードル」を両方考える
行動経済学のナッジ(Nudge)の定義
①Thaler & Sunstein, 2008:「ナッジ(nudge)」とは、人々の行動に予測可能な影響を与える選択設計(choice architecture)の要素であって、選択肢を禁止したり、経済的インセンティブを大きく変えることなく行われるものである。その介入は簡単に回避できるものでなければならない。たとえば、果物を目の高さに置くのはナッジだが、ジャンクフードを禁止するのはナッジではない。
②Hansen, 2016:「ナッジ」とは、以下の2つの条件を満たす人々の判断・選択・行動に影響を与える試みのことである
1.人間の認知的限界・バイアス・習慣・ルーチンなどによって合理的な判断が妨げられている状況で
2.それらの心理的仕組みを意図的に活用して行動変容を促す
ナッジのポイント
ナッジは「選択の環境」を整える行為であり、「禁止」や「強制」ではない
人間の行動が必ずしも合理的ではないという前提に立ち、選択の構造を整えることで意思決定を導く
意識に訴えるのではなく行動そのものを変えることができる
実務上はポスターの位置・色・デザイン、選択肢のデフォルト、リマインダーなど、軽微で目立つ工夫がナッジとなる
代表的な整理としてMINDSPACEとEASTがある
6.場所と会場配置図を考える
場所と会場配置図を決めるポイント
対象者が来やすい場所か?(駅近、バスあり)
※対面開催の場合は実際に各自が選択した自治体に存在する場所(保健センターや公民館、会議室など)を調べてみよう
安全で快適か?(照明・空調・椅子・バリアフリー)
必要な設備があるか?(調理台、スクリーン、託児室など)
オンライン限定の場合はどのプラットフォームを利用するか検討する(zoom?Youtube?)
対面の場合は、会場配置図を作成する。椅子や机をどのように配置するか図形や手書き、エクセルなどで作成してもよい。
会場配置図は学習法や内容によって工夫する必要がある。
📝タスク:
①使用する学習法、開催方法、頻度、場所(対面の場合は実在の名称を記載)と会場配置図、想定参加者数を決定し理由とともに記述する
これまでの解説をよく読み作成する
これまでに決定した対象、健康課題、目的及び目標、理論との整合性を確保する
② ①を踏まえて健康教育の内容を健康教育シート(以下の表)として作成し、表の下部に作成の意図について記述する。
これまでの解説をよく読み作成すること
特に、必ず「1-1健康教育の内容と提示方法の工夫」を読み自分なりのアイデアを考え作成すること
ナッジ理論を用いること(理論や要素の個数は指定しない)
注意:作成する健康教育の時間は15分間とする。
進捗の目安
第5回:タスク①完成、タスク②を作成開始できるとベスト
📌個人で実施:30分間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:5分間
📌個人で実施:残り時間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:10分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
https://forms.office.com/r/NWKnAdCnVY
第6回:タスク①②完成
📌個人で実施:45分間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:5分間
📌個人で実施:残り時間
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:10分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
📌なぜ「コストと効果」を考えるのか?
「お金があればいくらでもいい健康教育ができる」はNG
健康教育には必ず「ヒト・モノ・カネ」のリソースがかかる
行政保健師の活動資金は税金が基本であり、「企画した健康教育で、どれだけ効果があったか?」が問われる
1.コスト(費用)
健康教育の費用を評価する際は、「見えやすい費用」だけでなく、「見落とされがちな費用」も含めて正確に積算する必要あり
以下は保健師が実施する健康教育教室にかかる費用の代表的な項目です。
以下の例以外にも様々な費用が発生し、金額も多種多様です(以下の表の金額は根拠のない金額でありコピペしないこと)
2. 費用対効果(Cost-Effectiveness Analysis, CEA)とは?
「いくらかけて、どれだけ効果が出たか」を測る考え方
効果が金額以外でも使用可能(例:体重減少、血圧改善、禁煙率上昇など)
「成果となる1単位ごとに何円かかったか」で効率性を比べる。
「効果」指標の例
血圧が10mmHg下がった
BMIが2ポイント改善
運動習慣の定着率が50%上昇
QALY(質調整生存年)で+0.02年改善 など(QALYについて今回は割愛)
3. 費用便益(Cost-Benefit Analysis, CBA)とは?
「かかったお金に対して、どれだけの金銭的メリットがあったか」を見る考え方
効果も金額に換算して、利益(便益)−費用で判断する
「この取り組みは経済的に得か損か」を明確にできる
効果における「1単位あたりの効果金額(円)」を調べて設定する必要あり
金額換算しにくい効果(例:満足度の点数、行動変容人数、健康スコアの改善)については、仮の便益となる金額を想定すること。
(1)例:「満足度が1点上昇すると医療機関の受診回数が平均1回減る=医療費5,000円の削減」など、文献や公的機関の報告を参考に、前提を明示して計算することで効果の便益化を試みる。
(2)仮に想定する便益は「どんな根拠でその金額を設定したか」を出典とともに記載する
「〇〇市の健康づくり報告では、HbA1cが0.1%改善で医療費が△円減少」といったような、信頼できる先行事例の引用を推奨。
(3) 「仮定によって結果がどう変わるか」を数値を変化させて確認する
例:「満足度1点あたりの価値を3,000円とする/10,000円とする/換算しない」でそれぞれ便益がどう変化するかを比較。
効果(便益)に含まれるもの:
将来の医療費削減
就労継続による所得の維持
介護予防による施設利用費の回避
本人や家族のQOL向上による貨幣換算
まとめ
📝タスク:
①費用対効果、費用便益を計算するための費用、効果、1単位あたりの効果金額を調べ設定した理由とともに記述する
費用:ペン1本まで細かく調べる。会場等は選択した自治体の実際の金額とする
効果:自治体や公的機関の例を調べる(出典も記載すること)。どうしても根拠が発見できない場合は想定で可。
例:医療経済研究社会保険福祉協会:禁煙政策のありかたに関する研究~喫煙によるコスト推計~報告書.医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構,2010
② ①を元に以下のWebサイト(堀池作成)で計算する
健康教育コストと効果計算アプリ:https://gisphn.github.io/cost-benefit-health-edu/
③Webサイトの「計算過程をコピー」を押下し自身の課題ファイルにコピペする
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:10分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
📌評価は健康教育の実施前から行われるべきである
健康教育プログラムを「体制/構造・過程・実施量・結果」に分類し、評価計画を立てられるようになる
厚生労働省様式の事業評価シートを使い、行政で求められる実践的な視点を身につける
実施前と実施後に決定すべき評価項目を区別して記述できるようになる
1. 評価とは何か?(導入)
評価とは結果を測るだけでなく、「次の改善」「見直し」のために必要な視点
評価の目的:説明責任(Accountability)、業務改善(Improvement)
「評価」は失敗を見つけるためでなく、改善と継続のための設計図
保健師の活動を見える化し、政策や予算につなげるための「武器」である
実施前にしっかり評価項目を立てておけば、振り返りがスムーズになる
2. 評価の枠組み(4分類)
枠組みとして4つの違いを理解する(これが重要)
健康教育の流れの時間軸と評価の枠組みは一致する
企画・準備 → 開催中 → 終了直後 → 終了後長期視点
👇 👇 👇 👇
ストラクチャー → プロセス → アウトプット → アウトカム
例の記載内容はあくまで一例であり、各自の健康教育に適切な内容を検討する必要がある
3. 評価シートの構成(厚労省様式)
評価項目:何を評価するか(構造/過程/量/結果)
評価指標:具体的に測れる数値・行動
指標の数値:どのくらい達成したいか(測定できない/数値化できない内容が適切なときもある)
評価手段:どうやって評価するか(アンケート、記録、データなど)
評価時期:いつ評価するか(当日/1週間後/3か月後など)
評価体制:誰が行うか(実施者、保健師、委託業者など)
※「評価結果」「成功要因」「未達要因」「今後の方向性」は実施後に記入
評価シートの出典:https://www.niph.go.jp/soshiki/jinzai/koroshoshiryo/tokutei29/hyouka/program/H5.pdf
評価シート
評価シート(記入例)
📝タスク:
①評価シートを各自の課題ファイルにコピペし、評価項目~評価体制までの各項目を入力する
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:7分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
参考文献
・国立保健医療科学院 令和5年度【短期研修】「生活習慣病対策健診・保健指導の企画・運営・評価に関する研修」
2日目Ⅱ-2.PDCAサイクル推進のための保健事業の評価 5ページ目
資料 国保・後期高齢者ヘルスサポート事業ガイドライン(令和5年4月改訂版) 107ページ目
📌 ~伝わる・覚えられる・行きたくなる健康教育のネーミング戦略~
1.この回のねらい
健康教育の参加率を高めるには内容だけでなく「タイトルとキャッチコピーの魅力」も重要
第3回~第8回までに設計した健康教育プログラムに対して、適切な名前を考え、ポスターや広報物への展開も意識した“キャッチーなタイトルとキャッチコピー”をつける
行動経済学・認知心理学・ブランド戦略の知見を活用し、参加者の記憶に残り行動を後押しするネーミング技術を習得する
2.導入:なぜ「名前」が大事?
認知心理学の知見より「短く、覚えやすく、音の響きが良い名前」は記憶に残りやすい
⇒ 語感が柔らかく語呂のよいネーミングは購買意欲や態度にポジティブな影響
健康行動の促進にはネーミングが持つ印象がモチベーションに影響する
⇒ 感情に訴えるスローガンは行動変容の後押しになる
3.良いネーミングのポイント
✅ シンプル・短い・覚えやすい
文字数は5~15文字程度に
短く、簡潔で、繰り返しやすいものが記憶に残る傾向がある
記憶の容量を意識(例:「減塩チャレンジ教室」より「しおケアくらぶ」)
✅関連性(Relevance)
健康教育の目的と行動変容目標に一致した内容であることが重要
健康教育の目的や対象者と合っている
住民にとって意味がある(例:対象が高齢者なら、信頼・安心のイメージ)
✅独自性(Differentiation)
他と被らない言葉、印象に残る独自の視点やアプローチを示す
✅ 対象者の感情や共感に訴える
感情を喚起することで、記憶に残りやすく行動への動機づけとなる
不安 → 安心へ(例:「認知症予防教室」→「ずっとスマイル教室」)
希望 → 期待へ(例:「糖尿病予防教室」→「未来カラダづくり」)
✅ 行動のベネフィットを明示
行動の結果何が得られるのかを名前で伝える(例:「10分ウォーキング」→「10分で筋力アップの歩き方」)
✅ 音の響きと語感(Phonetic Symbolism)
高音の子音や母音は軽やかさ・明るさ、低音は重厚・信頼感の印象を与える
柔らかい音(例:あ・ま・さ・や) → 優しさ・親しみ
強い音(例:か・た・つ・け) → 力強さ・真剣さ
4. タイトルとキャッチコピーの違い
📝タスク:
①健康教育の「タイトル」候補を作成(3つ以上)する
②健康教育の「キャッチコピー」候補を作成(3つ以上)する
③「タイトル」と「キャッチコピー」を1つずつ決定し、決定した理由とともに記述する
*生成AIを利用する場合はこれまでの健康教育企画内容と一貫性があり、「3.良いネーミングのポイント」「4. タイトルとキャッチコピーの違い」が考慮されていることを必ず確認すること
④時間が余れば:作成中の各自の健康教育を修正および充実させる
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:7分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1グループからタスク実施内容を発表:10分
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからタスク実施内容「タイトル、キャッチコピー、決定理由」を発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
参考文献
・Chiranjeev Kohli, Lance Leuthesser, Rajneesh Suri: Got slogan? Guidelines for creating effective slogans, Business Horizons, Vol.50, No.5, pp.415-422, 2007.
Tina Lowrey, L. Shrum: Phonetic Symbolism and Brand Name Preference, Journal of Consumer Research, Vo1.34, pp.406-414, 2007.
― 単調な朗読を避け、相手に伝わる原稿を作る ―
1.この回のねらい
健康教育実施時の口語体原稿を作成することで、事前練習を行うことができる。
健康教育の内容や媒体の活用方法、評価のタイミングを漏れなくセッティングできる。
2.原稿の作成
原稿には以下の内容含める
①保健師が話すセリフ:開始~終了までのすべてのセリフ(口語体)
・最初に自己紹介、教室名、目標を述べる。
・参加者同士の会話や発言を促す場合は参加者に投げかけるセリフも
(参加者の想定される発言に対する保健師の返答や反応も記載する)
②媒体や教材:使用タイミングや動かし方など(スライドの場合は場面ごとのスライド番号)
*セリフの構成により媒体が最終確定するため、媒体を作成するのはセリフを完成させた後にする
③評価:教室中に評価のため参加者を観察する場合はタイミングと観察方法
④質問:質問を設ける場合は、想定される質問と模範解答
📝タスク:
①15分間で実施する健康教育の原稿を作成する
「2.原稿の作成」に記載されている①~④を必ず含めること。
健康教育の内容や評価等と一貫性があるか確認する
②15分以内に収まるか確認するため、開始~終了まで読み上げる
※ゆっくり読む。早口になってしまう場合は原稿を短くし調整すること。
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:7分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌レスポンスシートに入力:2分
― 行動を促すメッセージデザインと視覚戦略 ―
1. 本講義のねらい
参加者が健康教育の目的・内容・意義を理解しやすくするための「伝え方」を考える。
ターゲットに響く「広報戦略」と「メッセージデザイン」の基礎を学ぶ。
第9回で考えたタイトル・キャッチコピーを用いて、視覚的に効果的なポスターを作成する力を育てる。
2. なぜ広報が重要か
健康教育は「伝わって初めて意味がある」。
優れた企画であっても参加されなければ効果は発揮されない。
行動経済学の視点でも、情報の提示方法(ナッジ)が人の意思決定に大きな影響を与えるとされている(第5回+第6回参照)
3. 広報に必要な要素
4. ポスターに必要な7要素(実務でよく使う構成)
タイトル(印象に残る・意味が伝わる)
キャッチコピー(共感や行動を誘う言葉)
ねらい(対象者が理解しやすい目標)
実施日時・場所
内容の簡潔な説明
参加方法・申込方法
主催者・問合せ先
イラストなど
(必要な場合のみ)持ち物など
5. デザインTips(行動経済学 EAST・MINDSPACEを応用)
第5回+第6回に記載されている、MINDSPACEとEASTを活用すること
📝タスク:
①健康教育のポスターを作成する(保健センターや公民館に紙で掲示することを想定)
Canva、PowerPointなどのソフトウェア推奨。Wordはデザイン性が不足するので避ける。
A4 1枚 片面 カラー とする
ポスターは画像で出力し、タスクを記述しているWord等に貼りつけること
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:7分間
各列の代表となった場合の発言者も決めておくこと
各列の代表1グループも決定しておくこと
📌各列の代表1人からタスク実施内容を発表:10分
スクリーンにポスターを映しながら発表する
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてからポスターを発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
~スライド1枚で伝える力を磨こう~
1. 講義のねらい
健康教育において「視覚的に伝える」媒体の重要性を理解する
わかりやすく印象に残るスライドを作成する基本スキルを習得する
対象に応じたレイアウトや言葉の選び方を実践的に学ぶ
媒体作成のポイント
文字サイズ:本文は最低でも24pt以上。会場の広さやスクリーンの有無で調整する
配色:背景と文字のコントラストを高くする。色覚異常の方にも配慮が必要
フォント:視認性のよいユニバーサルデザインフォント(UDフォント)を用いる。装飾は避け、蛍光ペン機能や下線で強調
BIZ UDゴシック、BIZ UDPゴシック、BIZ UD 明朝、BIZ UDP 明朝、UD デジタル 教科書体など
色の使い方:3~4色に抑え、意味のある色分け(例:赤=注意、青=安心)にする
図表・イラスト:文字よりも図表やイラスト、フロー図が直感的に理解されやすい。アイコンを用いるのもよい。
スライド構成の工夫:初めに健康教育の流れを説明する
余白の活用:スライド全体にぎっしり詰めすぎず、余白で見やすさを確保
視線の誘導:左から右に読む、上から下に読むといった自然の流れで構成。注目して欲しい箇所を大きく目立たせる。
アンケート作成のポイント
評価との関連性:評価項目を網羅されているか確認する
FormsやGoogle Formで作成:2次元コードを提示するだけで回答が可能。
手入力の手間とミスを回避。自動集計機能により効率化
設問数:多すぎると回答者が不適切に回答してしまう
設問:不明瞭にならないよう、人によって回答がブレないよう表現する
選択肢:できれば連続尺度で回答してもらう(平均値等の分析が可能)
とてもそう思う(5)・・思う(4)・・ といった選択肢は平均値等を算出不可のため使用に注意。
自由記述:参加者の質的な意見を得るために重要。計量テキスト分析を用いると分析の幅が広がる。
作成後のポイント
原稿、媒体、アンケートを全て使用し15分以内に収まるか練習する。
練習の結果をもとに修正する
📝タスク:
①媒体を作成する
健康教育で実際に使用する教材:PowerPoint等のスライド作成ツールでスライドとして作成する
→教材は練習後に修正した最終版を、スライド4枚ごとに1枚の画像としスクリーンショットで画像として保存。タスクを記述しているWord等に貼りつけること(スライド12枚であれば、3枚の画像を貼る)。
健康教育で実際に使用するアンケート:Goole Form, Microsoft Forms等のオンラインフォームで作成する
→アンケート設問と選択肢をテキストの形式で、タスクを記述しているWord等に貼りつけること。
原稿、媒体、アンケートを全て使用し15分以内に収まるか練習する。
→練習の結果をもとに修正し、修正のポイントをWord等の記述する。
📌個人で実施
📌グループで各自のタスク実施内容を共有:7分間
各列の発表代表者1名を決定しておくこと
📌各列の代表1人からタスク実施内容を発表:10分
スクリーンに媒体とアンケートを映しながら発表する
選択した自治体名、分野、健康課題を述べてから発表する
📌レスポンスシートに入力:2分
0. 健康教育予行演習の進め方(グループ内ローテーション形式)
事前準備
講義開始前に 4人1グループ に分かれておく
他のグループと 声が聞こえづらくならないよう距離を保って着席
階段教室の場合:2人づつ上下に分かれて座る
1. 講義のねらい
実際に企画・設計した健康教育をグループ内で模擬的に実施し、「実施者としての体験」と「参加者としての視点」を通して、健康教育の実施力・修正力を高めることを目的とする。
準備段階で気づかなかった課題や参加者との対話を通じて得られる反応をもとに、内容や伝え方の改善点を把握し最終発表へ向けてブラッシュアップする。
2.予行演習の流れとルール
3. 留意点と工夫のポイント
📝タスク:
予行演習を実施し以下を記述する
①自身の健康教育の所要時間
②参加者からの意見と意見に対する修正内容
📌レスポンスシートに入力:2分
0. 事前準備(講義開始前までに実施)
4人1グループ に分かれる
他のグループと 声が聞こえづらくならないよう距離を保って着席
階段教室の場合:2人ずつ上下に分かれて座る
グループ間は上下1列、左右2席の間隔を空けて座ること
1.集大成である本番の健康教育を行政保健師として行う
行政保健師役は、前回の予行演習をもとに改善した健康教育を実施する
行政保健師役は、健康教育中の参加者の反応や環境にも目を向ける(評価シートで評価できるように)
行政保健師役は、アンケートを 作成している場合は実際に参加者に回答してもらう(評価に利用するため)
参加者役は、恥ずかしさをすべて捨てる。参加者になりきって健康教育を受ける。
参加者役は、様々な地域住民を想定し多様な参加者になりきる。
例:高い健康意識、家族から何度も言われて気乗りせず参加、富裕層と貧困層、孤独を感じている、集団の場にでることが苦手など
2.本番発表の流れとルール
📝タスク:本番の健康教育の評価と修正を行う
①評価シートの「健康教育後に決定」の各欄に入力する
※表のコピペ不具合は解消されていません。表形式が難しい場合は、各項目について箇条書きの文章として作成してください。
評価結果:a:改善している b:変わらない c:悪化している
参加者の反応や意見とアンケート結果を参考に入力する。
「今後の方向性」には修正案を具体的に入力する
②「健康教育を企画・実施した感想」について記述する
文字数は150文字~200文字の範囲であること
③これまでの全てのタスクが完全に記述されていることを確認する
④PDFに変換しファイル容量が10MB未満であることを確認する
📌レスポンスシートに入力:2分
https://forms.office.com/r/NWKnAdCnVY
📌教育支援課より説明
提出可能期間(厳守)
第15回終了後~2025年7月24日(木)23:59まで(厳守)
期限後はシステムにより自動で遮断されるため登録できません
ネットワーク障害等のリスクもあるため必ず余裕をもって提出すること
提出物
15回すべてのタスク実施内容が記載されたファイル
提出前の事前準備
15回すべてのタスクが記述できているか確認する
ファイルはPDFに変換しファイル容量が10MB未満であることを必ず確認する
*PDF以外のファイル形式は登録できません
*10MBがシステム上の容量上限のため、超過するとエラーが発生し登録できません
提出方法
WebClassの「ヘルスプロモーションと健康教育」に提出する
問1に最終成果物を提出する(全員)
問2は媒体を多くのアニメーション付きで作成した学生のみが提出する
*該当しない学生は問2には何も提出しないこと
*問2のみ、PDF以外のファイル形式も提出可能