りんごを食べたい58文、通称りんご文とは、イジェール語作者であるざすろん氏によって作られた例文集です。人工言語作者の間で、人工言語の不足した文法の洗い出しによく用いられます。このページではりんご文のニョンペルミュ訳を解説します。
私はりんごを食べる.
la kja ljanful.
ニョンペルミュの文はSVO語順です。
私はりんごを食べた.
la tju kja ljanful. / la fatel kja ljanful.
ニョンペルミュは分析的言語であり、動詞には時制による屈折がありません。日本語の「~した」に対応する表現を行うには、完了の助動詞 tju を動詞の前に置くか、「過去に」という意味の副詞 fatel を用います。
彼はりんごを食べている.
selon sul kja ljanful.
sul は、今まさに進行している動作を表す助動詞です。
彼女はりんごを食べ終わっている.
senel tju nun kja ljanful.
助動詞 tju と、「~し終える」という意味の助動詞 nun を併用しています。助動詞は意味が矛盾しない限りいくつ併用しても構いません。
彼女はりんごを食べ終わっていた.
senel fatel tju nun kja ljanful.
例文5に副詞 fatel を用いることで過去完了を表しています。
私の妻はりんごを食べたことがある.
la mi kusfunel mu ne kja ljanful.
ニョンペルミュには経験を表す形態素はありませんが、mu ne「今までに」という前置詞句を用いることで経験を表すことができます。
私の妻はりんごを毎日食べる.
la mi kusfunel ljatis kja ljanful.
所有・所属・関係を表すには、後置詞 mi を用います。
私と私の妻は昨日りんごを食べた.
la sas la mi kusfunel fatis kja ljanful.
並列には接続詞 sas を用います。
私と私の妻は6日前にりんごを食べた.
la sas la mi kusfunel lolfa tis kja ljanful.
「~日前」を表すには、数詞に接尾辞 fa「~前」を付加して作った副詞で tis「日」を修飾します。つまり lolfa tis を直訳すると「6つ前の日」です。
彼らは明日りんごを食べる.
selonsju kotis kja ljanful.
彼らは6日後にりんごを食べる.
selonsju lolko tis kja ljanful.
「~日後」を表すには、数詞に接尾辞 ko「~後」を付加して作った副詞で tis「日」を修飾します。つまり lolko tis を直訳すると「6つ後の日」です。
彼女らは3日間りんごを食べている.(食事としてりんごだけを食べている)
senelsju sjus sjal tis kja ljanful.
「~日間」のような期間を表すには前置詞 sjus を用います。sjus の原義は「経る・通る」です。
彼女らはりんごを5分間食べ続けている.(りんごを食べる所要時間に5分かかっている)
senelsju sjus han kjultel sul kja ljanful.
助動詞 sul を用いることで進行中の動作であることを明示しています。
彼は常にりんごを食べている.(四六時中ずっとりんごを食べている)
selon ljatel kja ljanful.
りんごが3つある.
sjal ljanful su.
存在を表す動詞は su です。
りんご達がテーブルの上にある.
sjan ljanful hasu tos. / sjan ljanful su tos mi ha.
su は位置を表す単語を目的語にとることができます。「上にある」を表すには、 ha「上」との複合語 hasu を用いる方法と X mi ha「X の上」を su の目的語にとる方法の2つがあります。
誰かがあのりんごを食べてしまった.(その結果,あのりんごは今はない)
nitjun tju kja se ljanful.
「食べる」という動作が完了した後の状態(りんごがない状態)が継続していることを完了の助動詞 tju で表しています。
誰かがこのりんごを食べそうだ.(推量)
nitjun ljo kja ke ljanful.
ljo は話し手の推量を表す助動詞です。
誰かがこのりんご,そのりんご,あのりんごを食べたそうだ.(伝聞)
nitjun hona fatel kja se sjal ljanful.
hona は伝聞を表す助動詞です。ニョンペルミュの指示語には「この・その・あの」のような距離による区別がないので、se sjal ljanful「その3つのりんご」と表現を変えています。
りんごがひとつもない.
hje ljanful su.
直訳すると「0個のりんごがある」という意味になります。このように、hje「0」は否定文に用いられることがあります。
私はりんごを食べない.
la me kja ljanful.
否定には副詞 me を用います。
私はりんごを食べられない.(りんごがないので状況的に食べられない)
la me so kja ljanful.
so は可能を表す助動詞です。能力可能・状況可能といった区別はありません。
私はりんごを床に落とした.
la fatel pa kulmus hjunti ljanful.
pa は着点を表す前置詞であり、「着く」を意味する動詞から転用されています。前置詞句は動詞の前に置かれます。
りんごが床に落ちた.
ljanful fatel hjun kulmus.
ニョンペルミュの自動詞と他動詞は形態上の区別が明確になっています。例文23に登場した hjunti「落とす」は hjun 「落ちる」に他動詞化接尾辞 -ti を付加して作られた派生語です。
りんごは食べられない.(りんごの性質として,可食でなくなった)
ljanful na mekjatjen.
mekjatjen は「食用でない」という意味の形容詞です。形容詞を述語として用いる際は、コピュラ na の後に置きます。
私はりんごを食べたい.
la fen kja ljanful.
fen は願望を表す助動詞です。
私はりんごを買いたい.
la fen pjes ljanful.
このりんごは汚い.
ke ljanful na tjan.
このりんごは綺麗ではない.
ke ljanful me na ljun. / ke ljanful na me ljun.
形容詞が述語となっている文を否定する際は、副詞 me を na の前と形容詞の前のどちらに置いても構いません。
あのりんごは食べられそうだ.
ke ljanful lina kjatjen.
lina は視覚情報に基づいた推量を表す動詞です。na と同様に形容詞を目的語にとることができます。
あれはりんごではない.
ke me na ljanful.
これはりんごではなくみかんだ.
ke me na ljanful na tismol.
あなたはみかんを食べるか?
fi kja me kja tismol?
諾否疑問文は、me を挟んで動詞を反復させることで表します。このような文を反復疑問文といいます。
はい,私はみかんを食べます.
kja, la kja tismol.
諾否疑問文に肯定で答える際は、諾否疑問文の動詞を繰り返します。
あなたはみかんを食べないのですか?
fi kja me kja tismol? / fi me kja tismol? / fi me kja tismol, kja?
反復疑問文では肯定の疑問文と否定の疑問文を区別できません。あえて区別するなら、否定文のイントネーションを上昇調にして疑問文にするか、付加疑問文を用いる方法があります。
ええ,私はみかんを食べません.
me kja, la me kja tismol.
否定の疑問文を肯定する際は、動詞の前に me を置いて反復させます。
あなたはみかんを食べたかった.ですよね?
fi fatel fen kja tismol, me fen?
付加疑問文は、英語とは違って動詞を文末でそのまま反復させます。肯定文の場合は前に me を置いて反復させ、否定文ではそのまま反復させます。
いいえ,私はみかんを食べたくはありません.
me fen, la me fen kja tismol.
否定で答える際は、動詞の前に me を置いて反復させます。
あなたはりんごもみかんも食べないのですか?
fi kja me kja ljanful lel tismol? / fi me kja ljanful lel tismol? / fi me kja ljanful lel tismol, kja?
「~も~も…ない」を表す際には、「または」を表す接続詞 lel を用います。
いや,私はりんごを食べます.
kja, la kja ljanful.
否定の疑問文を否定する際は、動詞をそのまま反復させます。
私はみかんを食べない.だから,みかんは食べられない.(受け身の否定)
la me kja tismol. lus, tismol me kju kja.
受身を表すには助動詞 kju を用います。kju の原義は「得る」です。
りんごは食べることができない.なぜなら,りんごは綺麗ではないから.
ljanful na mekjatjen. semis ljasfe ljanful me na ljun te.
2文目には「~は…を引き起こす・~は…に起因する」を表す動詞 ljasfe を用いています。直訳すると「それはりんごが綺麗でないことに起因する」となります。te は従属節を作る後置詞であり、直前の ljanful me na ljun「りんごは綺麗でない」を名詞化しています。
りんごは汚い.一方で,みかんは綺麗だ.
ljanful na tjan. nil semis, tismol na ljun.
nil semis は「それとは違って」を意味する前置詞句です。
みかんを食べましょうよ?(勧誘)
lafi lo kja tismol.
勧誘は、lafi「(聞き手を含む)私たち」を主語にした命令文によって表します。lo は命令を表す助動詞です。
いいえ,お断りします.
me kja, la tessjen semis.
あそこでみかんを食べろ.りんごは食べるな.
lo su kelan kja tismol. lo me kja ljanful.
命令文では主語を省略することがあります。主語を省略すると語調が強くなります。
りんごを頂いても宜しいですか?みかんは差し上げます.
fi so me so pa la le ljanful? la pen pa fi le tismol.
依頼文は、助動詞 so「できる」を用いた諾否疑問文によって表します。pen はこれから行う動作やまだ行われていない動作を表す助動詞です。
私は「りんごは食べるな,みかんを食べろ」と言った.
la fatel pel "lo me kja ljanful, lo kja tismol" te.
従属節を作る後置詞 te は引用にも用いられ、通常省略されません。
あなたはりんごを食べろと言うのですか?
fi mi pelmju nen me nen "lo kja ljanful" te?
直訳すると「あなたの言葉は『りんごを食べろ』を意味していますか?」となります。
貴様はりんごを食べたいと言った.
fi tanjo fatel pel fi fen kja ljanful te.
tanjo は「奴・野郎」という意味であり、fi tanjo で「お前・貴様」となります。英語と同様、間接話法では人称は話し手を基準としたものに変わります。
私はりんごを食べたいと言った覚えがない.
la me fis la fatel pel la fen kja ljanful te.
この文は、"la me fis..."「私は~を覚えていない」、 "la fatis pel..."「私は~と言った」、"la fen kja ljanful te"「私はりんごを食べたい」という3つの文が入れ子状になっています。従属節が2つあるので、本来であれば後置詞 te が文末に2つ連続してしまいます。このような場合、te は1つのみ残し、他は省略して構いません。
あなたは確か「私はりんごを食べたい」と言ったはずだ.
fi ljo fatel pel "la fen kja ljanful" te.
私はもしかしたらそう言ったかもしれない.
la ljo fatel pel semis.
あなたは絶対に私に対して「りんごを食べたい」と言った.
fi ljafos fatel pa la pel "la fen kja ljanful" te.
彼は私にりんごを食べさせる.
selon pa la le kja ljanful.
使役を表すには助動詞 le を用います。使役を受ける者は前置詞 pa で表します。 le の原義は「与える」です。
みかんは私に食べられていない.
tismol me tju fe la kju kja.
受身文の動作主は前置詞 fe で表します。
りんごは彼によって私に食べさせられた.
ljanful fatel fe selon kju pa la le kja.
ここには何もない.
kelan sja hje.
「持っている」を表す動詞 sja は、「~には…がある」という意味でも用いられます。ここでは hje「0」を目的語にとっており、直訳すると「ここには0個のものがある」となります。