第10回
女性のジェンダー規範の確立と揺らぎ

ニナ・シルバー『南北戦争のなかの女と男――愛国心と記憶のジェンダー史』(岩波書店、2016年)

現代米国の人種問題を考える上で、南北戦争の評価は今日まで影響していると語られることが多い。北・南部の男女は南北戦争に何を見出し、誰のために戦ったか。著者はジェンダーの切り口を導入し、南北戦争の再考を試みている。

私たちが南北戦争と聞くと戦禍の中で家族を守ろうとする「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラのたくましい様子を思い出すであろう。彼女が劇中で描写されているように、南部の白人は性別役割分業に忠実で、自らの家族や家庭を守るために戦った。

一方、公私の領域が分断されていた北部の白人は、自らの家族・家庭よりも広範な存在である連邦に献身した。戦後、北・南部の女性は徐々に公的領域に参入していった。

第二次世界大戦と女性の役割や領域拡大の連関性はよく語られるが、南北戦争も白人女性に活動の幅を広げ、自由をもたらしたことは新たな視点であった。

「南北戦争のなかの女と男」という邦題だが、男性のジェンダー規範の変化については言及されていなかったため、その影響も気になるところだ。(文責:berner)

オリジナルサブタイトル

※読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。
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「『愛国』に振り回される女性たち」(アントニン)
「『風と共に去りぬ』の時代 南北アメリカの戦争と女らしさ/男らしさとは」(はりねずみ)
「ないものとされた女性の意思と戦後の社会的活動」(midori)
「戦争を通じて築かれるジェンダーロール」(azusachka)