第27回
トイレやお風呂だけじゃない、人生の話としての『トランスジェンダー問題』に出会うための第1歩
トイレやお風呂だけじゃない、人生の話としての『トランスジェンダー問題』に出会うための第1歩
周司あきら・高井ゆと里『トランスジェンダー入門』(集英社、2023年)
概要
開催日:2023年7月
課題本:周司あきら・高井ゆと里『トランスジェンダー入門』(集英社、2023年)
参加者:Kimiko、berner、azusachka、アントニン、はりねずみ、ノビツムリ(聴講)
内容:トランスジェンダーが抱える困難や差別について学ぶ。
選書担当:berner
議事録作成担当:azusachka
標題作成:はりねずみ
選書の理由
前回の読書会時、最近いくつかの女子大がトランスジェンダー女性の入学受け入れを発表していること、それに対して反発も起きていることが話題になった
理解法もメディアで取り上げられていたのでこの本を読むことになった
感想
生きづらさという一言では片づけられない、生命に関わってくる話が随所に見られた。メンタルヘルスを回復させるために行った医療機関でも差別を受けたり、性暴力被害にあったあとに頼った支援サービスもまた安全ではなかったりする。人権以前の話。生きづらさは色々なところで言われてきたきたことだけど、「生きづらさ」という言葉では生易しすぎる。衝撃的だった。
トイレや着替えの話に矮小化されてしまいがち。トランスジェンダーがどのように生きているのか、何に困っているのか。生命の危機。
この本を読むことによって、自分は理解不足だと感じた。基礎的なことを学ぶのは大事だと感じた。
トランスジェンダーの生き方や受ける差別、抱えている生きづらさは日本のメディアからは伝わってこない。トイレや浴場に矮小化されている。当事者の生きづらさをもっと伝えるべきだと思った。
本当に入門の本。ネット上の議論をかいつまんで見ているだけだと、アンチトランスのフェミニストの意見も一見筋の通ったもののようなものに感じてしまう。でも、「お風呂の問題ではなく人生の問題」と作中にあった。生きづらさだけの問題ではない。
自分の仕事上、特に医療の章が参考になった。医療として必要なことだと思って取り組んでいることにも、色々な問題がある。医療という当然の権利からトランスを遠ざけている。
法律の問題、経済的な問題、格差問題など、他のマイノリティと連帯する可能性が伝わってきた本。
これまで自分は、トランスジェンダーが「命を脅かされている」というイメージを持っていなかった。なので衝撃を受けた。
最近、自殺した芸能人について。性別変更要件に「現に未成年の子がいないこと」という内容がある。その芸能人には子がいる。この場合は性別を変えられないのだと驚いた。
フェミニストの中にもトランスジェンダーを排除している人がいる。左派も一枚岩ではない。
自分の職場にもトランスジェンダーの当事者がいたことがある。その人が自分の職場に来る前、部署ではトイレ等をどうするか、という話になった。しかし、一緒に働いてみて人間同士の付き合いをしたら、そういうトイレの話は日常の一部でしかなく、些細な問題だった。それから数年が経った今では、その人がどちらのトイレを使っていたのかは覚えていないほど。
女性がトイレを安心して使えていない現状があるから、トランス排除も過剰になる。
日常的に性犯罪に巻き込まれてしまう可能性があるのが日本。たかがトイレ、されどトイレ。作中では「トイレの問題は些末な問題」と書かれてはいるけれど…
トイレに入る前に男女分かれるのではなく、個室だけの形にする(全てを多目的トイレにする)のは?
p170の「架空の混乱」のくだりはWhataboutismではないのか。
論点ずらしのパターンは褒められた手段ではないとは思う。ただ、自分はこのように指摘してもらえて良かった。
昔、職場の同僚にトランスジェンダーがいた。なぜ手術していないんだろう、と自分も当時思った。この本を読めば、そういうぶしつけなことを質問せずに済む。
オリジナルサブタイトル
※『トランスジェンダー入門』に続くサブタイトルを考えました。読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「“架空の問題”を心配する前に」(azusachka)
「公共空間だけの問題ではない―様々な差別問題を超えて捉えるトランスジェンダー問題―」(Kimiko)
「本から知っていくトランスジェンダーと社会」(ノビツムリ)
「ジェンダー差別の根源を考えるための一冊」(アントニン)
「この本に関係のない人はいない! ~トイレやお風呂だけじゃない、人生の話としての『トランスジェンダー問題』に出会うための第1歩~(はりねずみ)
「身体をめぐる制度的問題」(berner)