第11回
文学だからこそ残せる歴史がある

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 『戦争は女の顔をしていない』(岩波書店、2016年)

本作は、第二次世界大戦に従軍したソ連女性たちの証言を集めた作品です。作中に「フェミニズム」や「ジェンダー」等の用語は登場しませんが、フェミニズムにも大いに関係のある内容なので取り上げました。建前上は男女平等を掲げ、女性を兵士としても”活用”していたソ連社会ですが、戦場における女性たちの証言は当時の女性差別を浮かび上がらせます。

歴史学を専攻してきた人間にとって、アレクシェーヴィチの作品はオーラル・ヒストリーのようにも見えます。しかし、彼女自身は「自分の作品は文学である」と位置付けます。「戦場でどんなことがあったか」ではなく「戦場で人間がなにを感じていたのか」という文学的関心を以て証言を集めることで、本作は「感情」を歴史として残すことに成功しています。

普段、この読書会では扱わない「文学」に触れたことで、歴史学の枠組みでは残しきれない「歴史」の存在を感じさせられました。(文責:azusachka)

オリジナルサブタイトル

※読書会のまとめとして、自分なりのサブタイトルを各自で考えて発表しています。
 詳しくは
こちらをご覧ください。

「あなたの声で語る大事さ。初めからそこにあった視点。」(PYALA)
「40年ぶりに明かされる、戦場の喜怒哀楽」(アントニン)
「英雄史への異議申し立てー愛と戦争と記憶をめぐる歴史」(たっくん)
「戦争における喜びや悲しみの感情」(berner)