2nd. blog by Tom
前回の「大三島合宿の魅力」ブログで、仕事と仕事以外の余暇を同じ会社のメンバーが一緒に過ごすことによって、お互いの関係性が深まるチームビルディングの例を紹介しています。大三島での合宿の多くは、同じ企業に所属するメンバーで行われますが、ここでは、複数の企業のメンバーが一緒に参加して、ワークショップを行った例をご紹介します。
このワークショップは、異なる業種の2つの会社が、合同で数か月間検討していたプロジェクトの一部となります。両社から3,4名ずつが参加しました。それまでに、同じメンバーで、何度かオンラインやお互いの社内会議室で論議を進めてきていました。ワークショップは、進めてきた論議から提案をまとめるフェーズであり、Face to Faceで集中的に実施したかったため、合宿形式のワークショップを行うことに決めました。
日程は2泊3日で、1日目の午前中と3日目の午後は、東京方面⇔大三島の移動時間に充てています。移動方法はメンバーにより異なり、航空機を利用して広島空港からレンタカーに同乗したメンバーと、新幹線を利用して福山駅からバスで大三島に来たメンバーがいました。
背景で述べた通り、このワークショップの目的は提案をまとめることでした。それまで数回の論議により、ワークショップの途中で新たに調査しなければならない事項は少なく、そのため全員が議論に集中することができて、予定していたよりも短い時間で提案をまとめることができたと思っています。
このワークショップ以外にも、我々は大三島に滞在し、リモートワークをしながら、島の生活を満喫するという合宿を行うことが多くあります。その際、次回の合宿をより意義あるものにしたいという思いから、KPT法による振り返りを毎回の参加者にお願いしています。KPT法は、行動や結果を「Keep(継続)」「Problem(問題)」「Try(挑戦)」の3つの観点から整理して、プロジェクトや活動を振り返るフレームワークです。自分たちの行動を振り返って、良かったから次回以降も継続したいこと、あまり良くなかったから次回は変えたいこと、今回できなかったことや、より良くするために次回チャレンジしたいこと、を簡潔に箇条書きするものです。
今回のワークショップでも、参加者全員のコメントをKPT法で集めました。全員の生のコメントを集め、同じような内容をグループにまとめたものが以下のようになります。
KPT法での振り返り(生の声)
これを要約すると、以下の通りです。
Keep
効果的にチームビルディングができたことは狙い通り
仕事と余暇が密接する状況でリフレッシュできたこと、地元の食材を使って自炊で食事を共有できたこと、は予想していたよりも高く評価された
Problem
せっかくの機会なので、もっと余暇に時間を割ければよかった
特に島内での移動がクルマに依存してしまったこと
Try
自転車に乗ることなど、島に滞在してみて、自分もやってみたいというアクティビティに気づいた
合宿形式のワークショップの魅力は、仕事の成果だけではありません。普段とは違う場所で、同僚や家族以外のメンバーと一緒に、仕事以外の時間を過ごすことは、大きな魅力です。ここでは、「余暇の過ごし方」と「食事」の2つについて、気づいた魅力をご紹介します
余暇の過ごし方
風光明媚な景色、自然、文化
宿周辺への朝の散歩は好評でした。柑橘類を中心に畑が多く、海岸も近いため、島特有の香りや野鳥のさえずりを感じることができます。
大三島にある大山祗神社の荘厳さは、島に滞在している間に一度は体験したい経験です。伊予の国の一ノ宮でもあり、様々な歴史や伝説がある、日本の海の神様です。
多くの方はクルマやバスでしまなみ海道を通って来島されると思いますが、時間の余裕があれば、ぜひフェリーを乗り継いで島々を渡り歩くのをお勧めします。潮風を感じながら瀬戸内海の穏やかな海を渡るのは爽快です。
余暇にも十分に時間を配分しましょう
どうしても、ワークショップでの仕事を優先してしまうのですが、仕事は集中して短時間でこなし、残りの時間で余暇を楽しみましょう。
たった1度の滞在だけで、島の魅力の全てを体験するのは難しいです。できれば、リピーターとなって、毎回新しい体験を獲得するのが望ましいと思います。
レンタサイクルを活用しましょう
レンタカーなどでグループで来島すると、島の中でもグループで移動することが多くなります。より自由度がある移動を実現するために自転車をレンタルすると、余暇を満喫することが可能になります。
食事
我々のワークショップでは、宿のキッチンを使って、自炊することが多いです。今回は料理に積極的なメンバーが2名参加していました。この2人が中心になってシェフを担当してくれておいしい食事を共有することが出来ました。
地元ならではの食材をいろいろと食べることができました。例えば、
地元の無農薬野菜。今回は特に、普段見ることが少ない、花オクラを食べることができました。
しまなみの美味しいお魚のお刺身は、地元の食堂からケータリングしました。
大三島島内で作られている吉野豆腐は、味も食感も格別でした。
愛媛県の特産である、伊予のみそと松山あげは、お味噌汁をいつもとは違う味わいに感じさせてくれます。
バーベキュー
メンバーの親睦を高めるため、夕食では、宿の庭でバーベキューも楽しみました。
バーベキューでは、特に島で捕れるイノシシ肉が美味しいです。
自炊にあたって、現地調達については、下調べが必要かもしれません。期待して行ったら、お店が休みで食べられない、ということも起きます。また、今回は9月の訪問だったため、時期的においしい柑橘類は楽しむことができませんでした。それでも、予想外の味に出会える偶然を楽しめると思います。
グループでのワークショップを、普段の仕事環境と異なる場所で行うことは、それ自体が魅力的であり、効率的な運営ができれば、良いワークショップになることが期待できます。さらに、より素晴らしいワークショップとするために、以下の3つのことをお勧めしたいと思います。
計画を練ろう
地元の本当の良さは、その土地に、しばらく住んで暮らしてみないと分からないと思います。
初めて訪れた場所で2泊3日くらいの短い滞在では、その地元の良さに気づくきっかけが得られるだけかもしれません。
最初の滞在が良かったと思えれば、それをきっかけにして、また来よう、次はこうしよう、と考えるようになり、自分にとってその場所は特別なものになっていきます。
何度も訪ねよう
今回のワークショップ以外でも異業種交流会などで大三島を何度も訪ねていますが、訪ねる季節が違うと、その季節ごとの魅力に触れることができます。ガイドブックには載っていない知らない魅力を体感すると、まだ行ったことのない人に自慢して、一緒に行くように誘うようになっていきます。
今回の訪問は9月で、島の主要産業である柑橘栽培の収穫時期からは外れていましたが、その季節なりの魅力を感じることができました。
あえて大三島のお勧めの季節を挙げると、高級柑橘の収穫時期である12月と2月、それから島全体が柑橘の花の香りに包まれる5月かな、と思います。また、夏場7~9月の大潮の前後は、島中でアカテガニが歩き回っている姿を見ることができます。危うく道で踏みそうになるだけでなく、玄関で脱いだ靴の中、置いていたカバンの中、車の中に、勝手にカニが入り込んでいるということを経験します。自然とともに生きていることを実感できる瞬間かもしれません。
訪ねる理由を作る
仕事と余暇の両方を満たしてくれる充実した訪問にするためには、地元に行かなければならない理由があること/理由を作ること、が大切です。オンラインでの会議では得られないような、訪ねて実際に見ないと分からない、地元の課題や地元の方々の生活を、訪問する理由にしっかりと据えて、計画を立てることが必要です。
地元の方々や地方自治体の方々の多くは、自分たちの自治体の訪問客をもっと多くしたい、と考えておられます。そのためには、なぜその地元を訪問しなければならないか、という質問に答えやすい理由を作ってもらいたいと期待します。単純にネット環境などの仕事環境が良い、食事がとりやすい、などの「訪問のための必要条件」以外の「特別な理由」を提供してくれることが、様々なところからの訪問客を増やすことにつながると思います。
大三島をはじめとする瀬戸内しまなみ地域の島々は、様々な魅力にあふれた地域です。私は7年前に初めて大山祇神社の参拝で大三島を訪れて以来、縁があって何度も訪問し、その魅力に惹かれました。様々な魅力の奥深さが、大三島を何度も訪問する理由かも知れません。訪れるたびに、自分が知っている魅力の一部を再確認すると共に、新しい魅力を発見しています。深い歴史と文化、自然を持つ大三島を究めるには、まだまだ滞在日数が足りないと感じています。また、しまなみ海道やフェリーを使って、足を踏み入れただけで、その文化や人々の生活をじっくり見ていない島々も数多くあります。それらの島々をすべて訪ねるのは難しいと思いますが、大三島に魅せられた時と同様に新しい縁があれば、別の島を訪ねていき、その魅力を感じられることがあるでしょう。このブログを読んだみなさんが、自分も大三島をはじめとするしまなみ地域を訪ねてみたいと、少しでも感じていただけると幸いです。