2023 December
18 December 2023: 10 am - 12 noon
登録フォーム(Registration form):
https://forms.gle/h6Ywd8Rb8Xmbgb7S9
登録締め切り(deadline for registration):
12月13日17時 (5pm on 13 December)
Speaker:
河東泰之 氏(東京大学)
Yasuyuki Kawahigashi (The University of Tokyo)
記憶にある限りの昔から,算数,数学が好きで数学者になりたいと思っていました.大学院でアメリカのUCLA に留学して Ph.D. を取り,Berkeleyのポスドクもしていました.海外で過ごした期間を全部合わせると10年を超えていると思います.作用素環の数理物理学への応用を研究しており,最近はトポロジカル量子計算に現れる数学的構造に興味を持っています.
I have always loved mathematics and wanted to be a mathematician since as far back as I can remember. I got a Ph.D. at UCLA in the U.S. and was a postdoc at Berkeley. The total length of my oversea stays is more than 10 years. I have been studying applications of operator algebras to mathematical physics, and recently got interested in mathematical structures appearing in topological quantum computations.
Title (first part):
2次元トポロジカル秩序,テンソル圏と作用素環
Two-dimensional topological order, tensor categories and operator algebras
Two-dimensional topological order, tensor categories and operator algebras
Abstract (first part):
2次元トポロジカル秩序が物性物理学で大きな関心を集めているが,それはエニオンと呼ばれる新しいタイプの準粒子が現れると思われているからであり,さらにエニオンはトポロジカル量子計算機に応用できるのではないかと期待されている.エニオンの数学的振る舞いはテンソル圏の言葉で記述される.物理学でテンソルネットワークの言葉を用いて行われているテンソル圏の研究は,作用素環論のジョーンズによる部分因子環論で知られているものとよく似ていることが最近明らかになって来た.これについて初等的な側面を解説する.作用素環論についての予備知識は仮定しない.
Two-dimensional topological order has caught much attention in condensed matter physics partly due to possible emergence of a new type of a quasi-particle called an anyon and its potential application to topological quantum computers. Mathematical behaviors of anyons are described with tensor categories. It has been recently recognized that studies of such tensor categories in physics in terms of tensor networks have much similarity to what has been known in subfactor theory of Jones in operator algebras. We present elementary aspects of this approach. No knowledge on operator algebras is assumed.
Title (second part):
日本の数学界におけるダイバーシティの欠如について
Lack of diversity in the Japanese mathematical community
Lack of diversity in the Japanese mathematical community
Abstract (second part):
残念ながら現在の日本の数学界はダイバーシティについて満足すべき状況にない.特に以下の3点について個人的な経験をもとに話す.
(1) 女性が少ない.
(2) 外国人が少ない.
(3) 有名な数学者の多くが少数の有名高校出身者に集中している.
少なくとも最初の2点については,問題があることは広く知られていると思うが,3番目も大きな問題であると考えている.
The situations of diversity in the Japanese mathematical community is not satisfactory at present, unfortunately. I will talk about the following three points based on my personal experience.
(1) The number of women is small.
(2) The number of foreigners is small.
(3) A small number of prestigious high schools produce a disproportionately large number of well-established mathematicians.
The first two problems are at least widely recognized. I believe the third one is also a big problem for Japanese mathematics.
Feedback from participants:
Diversity に関連して;1970年代、カナダ(オタワ)に留学(PhD)する機会がありました。数学(確率・統計解析)の学会なのに、Cancer という言葉を聞いてびっくりした経験(記憶)があります。自然(生命)現象に触れてどんな数学を描いたらいいか? カナダは、農業(漁業資源)国 資源を枯渇させないためにはとか、数学の応用は広いと後で思いました。数学オリンピック(?)では、高校生くらいで優秀な学生さん達が、大学の先生たちと交流を持っていたりしていました。自分も(高校時代に)そのような環境があったりすれば、よかったかもしれないと思ったりしました。
早い段階で文系,理系に分ける教育は好ましくないことを議論したい.
最近は共学校の方が人気があるようですが、有名高校は男子校や女子校が多いのでは? 経験則から言いますと、共学校出身の方より 男性だから女性だからと言うことに関する偏見が少ないような気がします。男性か女性かと言うよりそれぞれの個性だと言うことに気がつくからでしょうか。
第二部の議論の場では、日本の数学会において、多様な環境の実現について、どのような方向で努力していけば良いのかということを主に議論した。私の参加したグループでは、地方の高校出身の方が複数おり、そのことで、かなり教育面で不利益を被っていると感じているとのことだった。そして、大学に入学した後でも、有名な中高一貫校で教育を受けた人と比べて、周りからあまり評価されていないように感じ、そのことで勉強意欲が削がれるようなことがあるのではないか、との話があった。経済的に困窮しているような場合は、そもそも勉強のために必要な本を購入するのも難しいとの訴えもあった。そのような方々に対して十分な教育環境を確保するために、難しいことであるとは思うが、居住地または世帯の収入状況によらず、日常的に、良い先生、仲間、教材と接することのできる環境を確保できるのが望ましいと感じた。
また、一部の大学において、推薦入試の要件として、科学五輪で活躍していることなどの項目がある場合があるが、それだけでは十分な多様性を確保することになっていないので、地方から積極的に学生を受け入れるなどのことをするべきだとの意見があった。数学者育成と高校出身が、今回の一つのテーマでしたが、面白い論点であるかと思います。「これは数学だけの問題なのかな?他の分野(文系も込)ではどうかな?」とは思いました。。私もそう考えておらず、歴史とか情報も少ない為、色々な方からの経験談や統計的データないし証言を知りたいと思いましたし、考えたいかと思いました。
残念ながらその直前で退室しました
女性の立場から、どのような意見を、申し上げるべきか難しく感じました
Both talks were fascinating. It is very useful to hear the observations and thoughts of such an experienced leader in the Japanese mathematical community.
講演で河東先生が仰っていた様に、数学会における女性や外国人の割合については今まで(勿論、本談話会でも)議論されてきたと思う。一方で、先生が挙げられていた出身校の偏りというのは、改めて言語化して頂いたことでやはり問題であるのだという事を認識する事が出来た様に思う。この三つ目の問題について、自信が(いわゆる有名高校ではない)田舎の出身であることから色々と思う事があった。あらゆる情報がネットで得られる様になった現代においても尚、人生を懸けて何をするのかを選択する時には、ネットで得られる情報よりも実際周りにどの様な(参考にできる)大人がいるのかが重要だと思う。従って、数学者は研究することは勿論だが、適当に地方に散らばることによって、より若い世代に影響を与えることも重要であると思う。しかし、同じ場所に集まって集中的に研究を行うことも一方では重要であるとも思う。従って、ある程度若い時には研究に重きを置けて、その後例えば定年を迎えた後などには適当な地方に異動して若い世代に影響を与えられる、というようなシステムを日本全体で作って行っても良いのではないかと思った。
また最後に、これはtea timeで少し近いのことが挙げられていたが、数学者や大学の影響力が少ない地方においては、人だけではなくいい本にアクセスできるということも重要であると以前から感じてきた。これは、Web上でアクセスできるという意味ではなく、できれば図書館のような形式であることが理想出来であると考える。何故なら、今まで自分の中になかった新たなものに出会う為には、図書館の様に様々な種類の本がある程度乱雑に置かれているという状況が必要であると思うからである。(実際私が数学に興味を持ったキッカケは、人ではなく、図書館で出会った一冊の本であった。)図書館自体は田舎でもあると思うが、専門書などまでは取り揃えていない所が多い様に思う。実際私の場合は、高校生の時に初めて大きな書店がやっと出来た。その時に初めて数学の専門書にリアルで触れることができた。(図書館にその様な本は無かった為、その本屋で何度も長時間立ち読みした記憶がある。)