2021 November

24 Nov 2021 :  3 pm - 5 pm

1st  part : 3 pm - 4 pm

2nd part : 4 pm - 5 pm

Speaker : 

Masato Mimura  見村万佐人
(Tohoku University 東北大学)

My Ph.D. advisor was "Taka" Ozawa at RIMS, and he is an operator algebraist. Various examples of operator algebras have been constructed by discrete groups (one of main constructions is to embed the complex group ring into a certain operator algebra, and to take the closure inside it). I studied analytic properties of discrete groups from this motivation when I was in the graduate school. However, as "Many go out for wool and come home shorn," I have somehow dove into the world of "geometric group theory." The research field of the topic of my talk is "additive combinatorics," and it might not be so close to geometric group theory. This work is an outcome of the seminar I launched in 2018 with Shin-ichiro Seki, who was a post-doc at Tohoku University at that time. The class of "amenable groups" plays an important role in geometric group theory; there is a certain result in additive combinatorics which applies to amenable groups. There might be an interesting connection between these two research fields.

私の師匠の小澤登高氏(数理解析研究所:当時は東大数理)は作用素環の研究者です。作用素環では離散群を用いて作用素環を作るという構成があり(主な例として、複素群環を適切な作用素環の代数的部分環だと思って閉包を取る、というものがあります)、群の解析的側面を研究することでそうしてできた作用素環の理解が深まります。院生時代はもともとそのような動機で群論を勉強していたのですが、「ミイラ取りがミイラになる」を地で行ってしまい気がついたら群自体の研究の道にがっつり入っていました。私の主な専門分野は幾何学的群論と呼ばれるもので、群を幾何学的な対象(多様体や何らかの複体など)や解析的な対象(ヒルベルト空間など、無限次元のバナッハ空間)に作用させることで研究するものです。今回の講演でお話しする内容は「加法的組合せ論」の結果で、幾何学的群論とはまた毛色が異なるものです。これは 2018年に当時東北大学のポスドクだった関真一朗氏らと始めた自主セミナーをきっかけにできた共同研究です。幾何学的群論では「従順群」と呼ばれる群のクラスが重要ですが、加法的組合せ論でも従順群に対して成り立つ結果もあるそうです。人生何があるかわかりません。


Title : 

The Green--Tao theorem for number fields


Abstract:
The celebrated Green--Tao theorem states that an upper dense subset of the set of rational primes contains arbitrarily long arithmetic progressions. Later, Tao proved that an upper dense subset of the set of Gaussian primes, namely, prime elements in the integer ring $\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]$ of the number field $\mathbb{Q}(\sqrt{-1})$ contains arbitrarily shaped constellations. (We will explain the precise statement in the talk.) In the paper, Tao asked whether the same conclusion holds in the setting of arbitrary number fields. In this joint work with Wataru Kai (Tohoku U.), Akihiro Munemasa (Tohoku U.), Shin-ichiro Seki (Aoyama Gakuin U.) and Kiyoto Yoshino (Tohoku U.), we answer Tao's question in the affirmative. We have an application to the setting of a binary quadratic form. More precisely, given a form $F$, we study combinatorics on the set of pair of integers $(x,y)$ for which $F(x,y)$ is a rational prime. No serious background of number theory is required for this talk.


題名:
代数体での素元星座定理


概要:
有名な Green--Tao の定理は「有理素数のなす集合の上密な部分集合は、任意の長さの等差数列を含む」ことを主張している。その後 Tao は「ガウス素数全体のなす集合の上密な部分集合は、任意の形状の星座を含む」ことを証明した。これは、Green--Tao の定理において体を $\mathbb{Q}$ から $\mathbb{Q}(\sqrt{-1})$ に置き換えた際の結果である。(Tao の定理の主張の正確な内容は講演で説明する。)Tao は論文内で、「任意の代数体で同様の結果を得ることができるか」を問うた。甲斐亘氏(東北大)、宗政昭弘氏(東北大)、関真一朗氏(青山学院大)、吉野聖人氏(東北大)との本共同研究で、Tao の上記の疑問に肯定的な解決を与えた。本共同研究では整数係数 2 元 2 次形式への応用も得たので、それについても説明したい。これは、与えられた 2 次形式 $F$ に対し、$F(x,y)$ が有理素数となるような整数 $(x,y)$ の組に関する組合せ論的な結果である。本講演では、専門的な数論の知識は仮定しない。気軽に講演にお越し下さい。


Discussion Theme (for the 2nd part of the event)

On the diversity of ways to choose a field of study in mathematics

With these questions in mind:

How does one decide on one’s research field in modern mathematics in these times of high fragmentation and specialization?

What should one do when one wants to change the direction of one’s research field?

数学の研究分野(の選び方)の多様性について

想定される質問例:

細分化・専門家が進む現代の数学で、研究分野をどのように決めたらよいでしょうか?

研究分野の方向性を変えたいとき、どうしたらよいでしょうか?


Feedback for Breakout  Room  Discussion from participants : 

・       The topic was well chosen and the speaker did a very good job. It is good to cast such a wide net in the list of topics of the colloquium. 


・       Even I have collaborators, it is interesting topic how do we find/meet a collaborators.


・       専門分化と広い知識、視野は矛盾するもので はないと理想論では思うが、現実には厳しい競争が待っている。これを克服するような方法があれば、共有したい。


・       議論の部で、お話したことに補足して、以下、思うことを述べたいと思います。 数学で、様々な分野に興味を持つことは、もちろん良いことであり、それが新しい研究方向に繋がっていくこともあると思いますが、実際問題としては、自身の専門の最近の進展を十分にフォローし、その上で、自身の研究結果を出して行くだけでも、相当に時間を要する大変なことであり、なかなか他の分野の見識を深める時間を取ることは難しいと思います。 そのため、実際のところは、自身の専門以外のことについては、耳学問に頼らざるを得ない部分が多いと思います。 専門家同士の交流は貴重なものであり代え難いものである一方、専門の異なる方に、自身の専門の内容について、質問されたときに、どのように説明すると、より理解していただけるかを考えることによって、自身の専門に対する理解が深まっていくところもあると思います。自身を含めて申し上げますが、一般的に、自身の専門以外の、自身が詳しくないことに対して、的を射ない質問をするのを恥ずかしく感じるという方が多いため、専門の異なるもの同士の交流がなかなか深まらないのではないか、と考えております。さらに、同じく、自身を含めて申し上げますが、質問される側も、専門家以外の方に質問されることに、慣れていないことが多いような気がいたします。その辺の事情が改善されていくと、(数学内および数学外の)異分野間の交流がより促進されていくと思われます。諸外国において、そのような状況がどれぐらい異なるかどうかについては、十分な見識を持ち合わせておりませんので、判断できかねます。改めて、「おいでMath」の議論の場で、関連する内容の議論ができたら、嬉しく思います。 最後になりますが、「おいでMath」が、分野間を超えた人々の交流の場となることを祈念いたします。


・       数学の分野を変えたり、分野をこえて研究することについて、多様な意見がありました。 具体的には、 *理想としては様々な分野を学びたいし、興味はあるけれども、現実には時間がないことや、若いうちは業績を出さなければというプレッシャーがあり難しい。 *応用に近い研究をしているので、様々な数学を使うのはむしろ当たり前で、使えるものはなんでも使う。そのたびに新しい分野を勉強している。 *実際にはいくつもの分野に関わる研究をしていても、あの人は〇〇分野の人、というイメージのようなものができてしまうことがある などの意見があり大変興味深かったです。 時間のなさやプレッシャーの問題を解決するには、分野を変えたり異分野との共同研究に対するインセンティブが必要ではないか、という意見もありました。 私自身の感想としては、近年は、分野をこえた共同研究が非常に盛り上がっているように感じており、分野の細分化の時代は過ぎつつあり、様々な分野が再度融合して新しい数学を作る時代になっているのではないか、と感じています。そのような中で、分野を基準とした研究グループや評価などのあり方についても、今後変化が求められていくのではないか、と思いました。

 



Oide-math_mimura_2021Nov.pdf