2022 June

 3 Jun 2022 :10am -      11:30am


第二部(パネルディスカッションとブレイクアウトルームセッション)のみの談話会を行いました45〜50分のパネルディスカッション、20分の少人数でのブレイクアウトルームセッション、20分の全体でのまとめのディスカッション、を行いました。

パネリスト:

Shingo Saito 斎藤新悟(Kyushu University  九州大学)

Mao Shinoda 篠田万穂(Ochanomizu University  お茶の水女子大学)

Hiro Lee Tanaka(Texas State University  テキサス州立大学)

Michio Yoshiwaki吉脇 理雄(Japan Science and Technology Agency (JST)   国立研究開発法人科学技術振興機構)

モデレータ:

Makiko Sasada 佐々田槙子(University of Tokyo  東京大学)


Discussion Theme  : 

『政府や大学は、「なぜ」研究者や学生の女性比率をあげようとしているのか?それは、数学分野の一人一人にどのような良い影響を与えるだろうか?』

The ’’why” behind the effort to achieve better gender balance in employment and student enrollment and impact of such efforts to every individual in mathematical fields.

研究者や理数系分野のジェンダーギャップ問題は、近年盛んに話題になっているが、「女性比率をあげる」ことが最終目標のように誤解されることで、かえってジェンダー間の摩擦がうみ出されたり、女性研究者への不当な低評価につながるなど、本来実現が望まれる、多様性・包摂性を持つ研究コミュニティと真逆の方向にすすみかねない危険を孕んでいる。

ジェンダーギャップ解消は、あくまでも、異なる背景や事情を持つ一人一人が公平に尊重され、安心して力を発揮できる研究コミュニティを実現するための「手段」の一つである。多様性や包摂性を考える上で、人々の「属性」に注目することは、一人一人を個人として尊重することと一見矛盾するようにも思えるが、なぜ「ジェンダーギャップ」に注目して、これを解消していくことが、ジェンダーに限らないさまざまなマイノリティ、さらには自身はマジョリティだと認識している一人一人にとってもより良い研究コミュニティの実現につながりうるのか、について議論をしたい。


Feedback for Breakout  Room  Discussion from participants : 


·       今日もありがとうございました。まだまだ話足りないと言う感じでした。女性限定公募や数値目標に関して、日本の研究機関が海外の研究者にとっても魅力的であれば、問題なく越えられる目標であるという点がとても目から鱗で、まさにそうだと思いました。最後にコメントのあった性別による無意識の思い込みに関するチェックシートの共有はすごく良いアクションだと思います。


·       大学におけるダイバーシティの現状を知る上で、次は貴重な資料だと思います。2020年度「東京大学におけるダイバーシティに関する意識と実態調査」報告書 https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/actions/diversity-report-2020.html


·       良いパネルディスカッションでした。議論をためらわないこと、継続して行うことが大事だと思います。


·       We discussed how the ratio of women in mathematics is a symptom of how the academic world works (within wider society). Thus, whilst changing the ratio is not a crucial aim in itself, it is important to understand and address any inherent unfairness contributing to the current situation. Particularly, we exchanged views on the role of gender stereotyping and unconscious bias/discrimination, even amongst women themselves, and how raising consciousness of these issues can help people to either change their own behaviour and/or challenge certain behaviours in others (whether it affects themselves or not). Indeed, it takes effort to speak up, and one needs to learn how to do this effectively. Whilst it might be discouraging if the rate of change towards any particular numerical target is slow, we can hope to remove some of the obstacles from the paths of those around us and those who follow.


·       以下は、議論を行って持った、個人の意見ですが、議論の趣旨に沿っていると思いますので、述べさせて頂きます。  例えば、女性の方々、障碍を持っている方々など、のマイノリティーに属する方々の意見というのは、なかなか反映されにくいため、それらの方々から、積極的に情報発信をすることが大事であるし、マジョリティーに属する方々は、それらの方々の意見を意思決定に反映することが必要であると感じました。また、マジョリティーに属する方々は、マイノリティーの方々が意見を述べづらい場合もある点を考慮に入れ、積極的に改善すべき点について、マイノリティーの方々に直接尋ねるなどの意見調査を行っていくことが、大事であると感じました。


·       パネリストが自己紹介でおっしゃっていた、自己紹介をするとそのレッテルで発言を位置付けられてしまうことは功罪ある、という観察、今まで気がついていませんでしたが、なるほどその通りだと思いました。


·       女性の数を増やすことで解決できる問題と、それだけでは根本的な解決にはつながらない問題とがあるという視点は、本質的だと感じました。また、個人として見てほしいのに、ある特定のアイデンティティの元での発言を半ば矯正される場面があるというお話は、自分がそれを矯正する側になっていないか、常に気をつける必要があると思いました。 これに関連して、自分のマイノリティとしてのアイデンティティをオープンにすることで、そのような人としてしか見てもらえなくなるんじゃないか、という感覚は私も障がい者として感じていたことでした。 マイノリティの参画を推し進めるということは、一人一人が他の人を一人の人間として受け入れるということなのだと、改めて感じました。

·   研究者同士というより以前に男女間のコミュニケーションの取り方は高校以前の教育環境に依存するところが大きいと改めて感じました。米国の事情は比較的紹介されていると思いますが、アジア・オセアニアの各国においても女性の高等教育における環境や男女共学の教育環境についても情報を共有して頂けたら、女性数学者の立場についても多角的な理解が進むのではと思います。