有害事象とは、あらゆる好ましくない事象のことで、治験薬との因果関係は問いません。ですので、たまたま病院の帰りの駅でつまずいて怪我をしたら、それも有害事象です。
直接閲覧の際は、他の項目と同様に、カルテに記載された事象と、症例報告書に記載された事象に齟齬が無いかどうかを確認する訳ですが、主には、症例報告書に報告されていない、未報告の有害事象が無いかどうかを確認します。
その見つけ方には、様々な見方がありますので、有害事象になるかもしれない事項を、次に挙げていきます。
・カルテの診察記録の中の、医師が記載した他覚所見や、被験者が訴える自覚所見が、有害事象かもしれません。
・患者日誌に記載された、被験者の症状、治験薬の服薬状況、他の薬剤の服薬状況から、有害事象が見つかるかもしれません。
・プロトコル規定の検査結果の中に、有害事象があるかもしれません。
・プロトコル規定外の検査を実施している場合には、その検査結果か、検査を実施した理由の中に、有害事象があるかもしれません。
・併用薬の追加や、中止、変更が有る場合には、その理由が、有害事象かもしれません。
・他院や他科を受診している場合には、受診理由や、受診結果の中に、有害事象があるかもしれません。
・規定通りに来院していない場合には、それは、有害事象のせいかもしれません。
・サプリメントや、OTC薬剤を使用している場合には、その使用理由の中に、有害事象があるかもしれません。
・普段の生活習慣に変化が有る場合、その理由の中に有害事象があるかもしれません。
このように色々なところに、有害事象が潜んでいる可能性が有り、症例報告書に記載されていない有害事象かもしれない事象を、CRAが直接閲覧中に発見することは多々あります。
そのような場合には、責任医師や、担当の分担医師に、有害事象ではないかどうかを確認し、確認結果を、原資料に残してもらいましょう。その記録が無いと、監査等でも、「これは有害事象ではないでしょうか」と問い合わせを受けることがあります。そのとき、担当医師が、既にほとんど忘れてしまった記憶を基に、「そう言われると、有害事象かも」などと答えると、本当は有害事象ではなかった事象も、症例報告書に追加することになってしまいます。そうならないよう、有害事象かもしれない事象はもれなく医師に見解を確認し、その記録を残します。