研究費や治験薬管理費、IRB費、CRCの人件費など、施設やSMOに支払う費用は、 SMOフルサポートの場合、SMOの窓口と治験依頼者側の費用担当窓口で見積もりを作成する体制になっていることが多いと思います。その場合、モニターの関与はありません。(SMOフルサポートとは、SMOが治験事務局業務とCRC業務を受託して、実施医療機関をフルにサポートする体制を言います。)
しかし、そのような体制を敷いている企業でも、SMOフルサポートではない場合は、モニターが施設の担当者と打ち合わせて、費用の見積もりを作成していきますので、どのように進めていくのか、概要を紹介します。
大体次の3つの組み合わせパターンになります。一つは、費用計算の元となるポイント算出表について、施設様式を用いるか、依頼者様式を用いるか、二つ目は、費用の計算方法について、算定基準という言い方をしますが、施設側と依頼者側のどちらの基準を用いるかです。そして三つ目は、施設の事務局が作成するのか、モニターが作成するのかです。
ポイント算出表というのは、治験の難易度をポイント化して、難易度が高いほどポイントが高くなって、費用も高くなる仕組みになっている表です。例えば、試験のデザインがオープン試験か、単盲検試験か、二重盲検試験かでポイントが変わり、オープン試験ではポイントが低く、二重盲検試験では高くなります。治験薬の投与期間が短いか長いかでも、長い方がポイントは高くなりますし、被験者の適格基準、すなわち選択基準・除外基準の数が少ないか多いかによっても変わります。そのような、ポイントを算出するための項目が20くらいあって、それらを合計したポイントを算出し、経費を計算するときの基礎とします。
ポイント算出表は研究費のものと治験薬管理費のものがあり、治験薬管理費のポイント算出表では、治験薬の剤形や投与期間、保管条件などによってポイントを出し、治験薬管理費用の基礎としています。
そして、算定基準というのは、各種の費用毎に、その計算方法を定めたものです。例えば研究費は、研究費のポイント数×いくら×症例数で計算したり、CRCの人件費は、研究費×何パーセントで計算したりすることを定めたルールです。
費用の見積もりを算出した後、その見積もりを、依頼者が受け入れられるかどうかの承認手続きがありますが、ここで問題になるのが固定費比率と症例単価です。
固定費とは、症例数にかかわらずかかる費用、つまり治験を開始するまでの準備にかかる費用や、IRBの審査費用のような、症例数にかかわらず固定の金額がかかる費用です。 それから変動費というのは、症例数によって変動する費用で、治験が開始されてからのCRCの人件費や研究費などです。
また、症例単価というのは、変動費を症例数で割った金額になります。
これらの固定費比率や症例単価で、依頼者が受け入れられる金額をオーバーしている場合には、別途社内手続きを規定していることが多いかと思いますので、この時はプロジェクトの責任者が、費用の承認権限を持つ社内機関と調整することになります。もし、依頼者側の判断で、現状の見積もりでは高くて治験依頼できないという結果になったときは、モニターは施設の担当者にコンタクトをとって、問題となっている特定の費用について交渉を行います。
その他、最近の治験ではマイルストン支払いを採用していることがほとんどです。症例単価の金額を、症例登録された時点でポンと全額支払うのではなくて、最初は単価の30%、その後はビジットの進捗に応じて、例えばビジット3完了で20%、ビジット5完了で20%というように、最後まで完了した時に100%支払うようなルールを決めています。
そのマイルストン支払いについても、依頼者側の提案がそのまま施設に受け入れられるとは限りませんので、そのときは交渉して、詰めていくことになります。