2024年10月21日
第21回研究報告会
金融プラス・フォーラム事務局
金融プラス・フォーラム「第21回研究報告会ご案内」を送付させていただきました。今回は上智大学経済学部の中里透准教授をお招きし「東京は「ブラックホール」なのか:少子化と東京一極集中について考える」と題して報告していただきます。
人口問題は人口の増減から生じる様々な社会問題のことですが、日本では将来推計人口の減少と少子高齢化問題として捉えられています。特に、人口戦略会議のレポート(2024.4)で東京都の16区がブラックホール型自治体にあたると発表されて以降、「東京はブラックホール」という議論がマスコミを賑わすと同時に、7月の都知事選挙では少子化対策が争点の一つとなりました。年間出生者数72万人台に低下(2023年)、合計特殊出生率1.20に低下(東京は0.99)はショッキングなニュースですが、対策(政策)に関して各方面から疑念が提示されています。特に、中里准教授は合計特殊出生率を基にして地域差を論じる場合には問題が生じるとしたうえで東京ブラックホール論に説得あるデータで異議を唱えています。進学や就職で東京に集まる未婚女性が分母にカウントされることから東京の合計特殊出生率は小さくなります。他方、結婚している女性を対象にした出生率(有配偶出生率)では東京は必ずしも低くはありません(注)。東京ブラックホール論は「都市伝説」とも指摘しています。今回の報告では東京に焦点を絞りますが、中里先生のご専門はマクロ経済、財政運営、経済政策であり、少子化の問題と地方分散の問題を結びつける議論は問題を孕むという観点からさらに論点を敷衍されるものと思われます。中里先生から送られてきた報告概要は以下の通りです。なお、今回もリアルとオンライン(zoom)の同時開催となります。
(注)合計特殊出生率の分母は出産可能年齢(15~49歳)の女性数(年齢階層別)、有配偶出生率の分母は出産可能年齢(15~49歳)の有配偶女性数である。
<報告概要>
一般に広く用いられている出生率の指標(合計特殊出生率)は、足元の出生の状況や将来の人口の推移を把握するうえで有益な指標ですが、出生率の地域差について論じる場合には留意すべきことがあります。それは、若年女性の流入あるいは流出がある場合、合計特殊出生率は歪みを伴う指標になるということです。この効果により、東京都の出生率は押し下げられている可能性があります。「出生率が低いにもかかわらず、東京に若者が集まる」という話には、「東京に若者が集まるから、データとして観測される出生率が低くなる」という面もあることに留意が必要となります。この報告では具体的なデータをもとに上記の点を確認するとともに、少子化の問題と地方分散の問題を分けて考えることを提案します。東京一極集中の問題については是正の対象とする「東京」の範囲を明確にすることが必要となります。別の問題であるにもかかわらず、少子化の問題と東京一極集中の是正(地方分散)の話がなぜあえて一緒に論じられるのかということについても論じてみたいと思います。
記
1 テーマ:「東京は「ブラックホール」なのか:少子化と東京一極集中について考える」
2 研究報告者:中里透(上智大学経済学部准教授)
1988年東京大学経済学部卒業。日本開発銀行設備投資研究所、東京大学助手を経て現職。日本政策投資銀行設備投資研究所客員主任研究員を兼務。最近の論文に「「物価高」と異次元緩和:日銀は「出口」を出られるか」(『証券アナリストジャーナル』2024年4月号)、「異次元緩和の10年:評価と課題」(『景気とサイクル』第76号,2023年11月,景気循環学会)などがある。
3 日時:2024年10月19日(土)16時30分~18時
報告(16:30-17:45)の後、質疑応答を予定しています。
4 開催会場:ゆうちょ財団会議室及びオンライン(zoom)、 会費:無料
住所:新宿区市谷本村町2-1クイーポビル9F(HPご参照)
アクセス:JR中央線総武線・都営新宿線「市ヶ谷」駅 徒歩5分、東京メトロ南北線・有楽町線「市ヶ谷」駅 徒歩3分
5 懇親会:18時15分~20時15分
懇親会場:四川料理「萬達」:TEL.050-5485-1524(ゆうちょ財団から徒歩1~2分)
新宿区市谷本村町3-20(HP参照)、JR中央線 市ケ谷駅 徒歩5分、地下鉄 市ケ谷駅 徒歩5分、都営新宿線 曙橋駅 徒歩8分
会費:5千円
6 主催者
金融プラス・フォーラム(会長:唐木宏一)
7 連絡先
野澤:ZZZt-nozawakag「アットマーク」jcom.zaq.ne.jpZZZ、TEL.090-3318-4815
宮下:ZZZk-miyashita「アットマーク」yu-cho-f.jpZZZ
迷惑メール防止のため、「アットマーク」を「@」へ変更し、Zを削除してご使用ください。
8 過去の研究報告
<2017年>
第1回(12月):井上智洋(駒澤大学准教授)『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』
<2018年>
第2回(3月):瀧俊雄(マネーフォワード取締役Fintech研究所長)『フィンテックのインパクト』
第3回(7月):宮村健一郎(東洋大学経営学研究科研究科長)『 アメリカ銀行業のP2Pレンディング戦略』
第4回(9月):駒井隼人(株式会社Delta Valuesチーフデータサイエンティスト)『ビッグデータから見た個人投資家行動』
第5回(12月):中村淳一郎 (株式会社IICパートナーズ代表取締役社長)『企業年金・退職金のエッセンスと企業経営に活かす視点』
<2019年>
第6回(3月):畔上秀人(東洋学園大学現代経営学部教授)『リスク評価の世代間継承-生命保険について-』、江口政宏(商工総合研究所主任研究員)『ブロックチェーンは次世代プラットフォームとなりうるか』、冨田洋介(共栄大学国際経営学部専任講師)『金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について-制定法と慣習法の相違を中心に-』
第7回(7月):牧野知弘(オラガ総研株式会社 代表取締役 / 不動産事業プロデューサー)『不動産価値革命と住宅―人生100年時代を迎えて―』
第8回(9月):武田泰弘(TRENDE株式会社テクノロジーディレクター)『電力流通とP2P電力システム』
第9回(12月)濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構研究所長)『人生100年時代の雇用と労働』
<2020年>
第10回(12月):駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程、株式会社Delta Values)・小谷野良太(株式会社Delta Values)『個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? ―株価からの一考察』
<2021年>
第11回(3月):野崎浩成(東洋大学国際学部教授)『地銀と持続可能性』
第12回(7月):森健(株式会社野村総合研究所未来創発センター・グローバル産業・経営研究室長)『コロナ禍が加速させるデジタル資本主義』
第13回(12月):清水洋(早稲田大学商学学術院教授)『流動性とイノベーション:国、企業、個人はどのように立ち向かうのか』
<2022年>
第14回(3月):鈴木隆雄(桜美林大学大学院教授、国立長寿医療研究センター理事長特任補佐)『日本の高齢者は若返っているか:科学的根拠に基づく高齢者の健康増進に関する戦略』
第15回(10月):近藤一仁(岡山商科大学客員教授)『IR(インベスター・リレーションズ)の過去・現在・未来について~変わらない IR の本質を説き、真の企業価値の向上と評価改善を提言する~』
第16回(12月):猪俣哲史(ジェトロ・アジア経済研究所 海外研究員)『グローバル・バリューチェーンから見た米中デカップリング』
<2023年>
第17回(3月):掛下達郎(福岡大学商学部教授/公益財団法人日本証券経済研究所客員研究員)『GAFAの銀行化・金融機関化:金融化との関連で』
第18回(10月):冨田洋介(東洋学園大学現代経営学部准教授)『潜在的な経済的不平等と政府の再分配に影響を及ぼす法の起源』
第19回(12月):遠藤正之(静岡大学情報学部教授)『金融DXの動向、銀行は生き残れるのか』
<2024年>
第20回(3月):勝池和夫(タタ・アセットマネジメント アドバイザー)『インド経済の可能性とあなたの金融資産の未来』
(注)第10回(2020年12月)から第17回(2023年3月)はオンライン開催、第20回(2024年3月)以降はリアル、オンラインの同時開催である。