第18回研究報告会

第18回研究報告会

2023年9月3日

金融プラス・フォーラム事務局

金融プラス・フォーラム「第18回研究報告会ご案内」を送付させていただきました。今回は冨田洋介東洋学園大学現代経営学部准教授に「潜在的な経済的不平等と政府の再分配に影響を及ぼす法の起源」と題して報告していただきます。報告のベースとなっている内容については今春に刊行された著書『資本主義はなぜ多様化するのか:法の起源から考える金融市場の国際比較』(ミネルヴァ書房)に詳しいが、報告者の予てからの研究課題、法の起源との関連から全面展開されるものと思われます。著書では「本書は多様なコーポレート・ガバナンスのタイプをもたらす要因は法の起源であり、その基礎となる法源が及ぼす影響力は経路依存性を通じて現在にまで継続するという仮説に基づいている。但し、経済的な成果については、法の起源だけではなく、その法の起源と各国の内生的制度の適合性こそが重要であるとの立場を本書は採用している」(「おわりに」)と研究者としての立場は明解です。関連した学術論文「金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について―制定法と慣習法の相違を中心に」『年報 財務管理研究』第30号(2019年5月)は日本財務管理学会の第5回学会賞(論文の部)を受賞している。報告者から寄せられた研究報告の概要は以下の通りです。


<研究報告概要>

「近年、経済発展にもかかわらず経済格差が拡大している。本研究では、ジニ係数を税や社会保障による分配前の「潜在的な経済格差」と政府の「再分配」機能に分割して考察する。①43カ国のクロスカントリーデータを4種類の法の起源に分類し、潜在的な経済格差が財産権に依存するのかを調査する。②潜在的な経済的不平等の拡大が再分配の水準を高めるという仮説が、各々の法の起源について成立するか否かを検証する。③潜在的な経済格差が一人当たりGDPに与える影響を法の起源別に検証し、その限界効果を示す。推定の結果、財産権の拡大が潜在的な経済的不平等を低下させるという常識的な解であった。しかし、ドイツ法起源では、財産権の拡大は潜在的な経済格差を拡大させる。一方、再分配の水準は、潜在的不平等が拡大するにつれて、イギリスとドイツを法的起源とする国々で仮設通り高くなる。しかし、潜在的な経済的不平等の拡大は、フランス法起源の再分配を高めることにはつながらなかった。経済生産性と潜在的不平等との関連は、イギリスとフランスの法的起源では正であるが、ドイツとスカンジナビアの法的起源では負である。資本主義の収斂が新古典派経済学で議論されているものの、各国の資本主義は多様化していることから、政策は世界各国画一的なものではない。本研究のインプリケーションは資本主義の多様化を支持するものである。」


研究報告会、懇親会とも4年ぶりのリアル開催となります。是非ご参加ください(どちらかだけの参加も可です)。


1 テーマ:「潜在的な経済的不平等と政府の再分配に影響を及ぼす法の起源」

2 日時:2023年10月7日(土)16時15分~17時45分

報告(16:15-17:30)の後、質疑応答を予定しています。

3 開催会場:東洋学園大学 1号館1304教室

住所:東京都文京区本郷1-26-3(HP参照)

アクセス:東京メトロ丸ノ内線「本郷三丁目」駅(改札を出て左)徒歩4分、都営大江戸線「本郷三丁目」駅(改札を出て右)徒歩6分、JR総武線「水道橋」駅(東口)から徒歩7分、都営三田線「水道橋」駅(A6出口)から徒歩3分、東京メトロ丸ノ内線/南北線「後楽園」駅(1~3番出口)から徒歩7分。

会費:無料

4 懇親会:18時~20時

懇親会場:You Me(ユーミー)

住所:文京区本郷1-27-8 本郷ハウス(HP参照:東洋学園大学の目の前)

アクセス:地下鉄丸ノ内線 後楽園駅 2番出口 徒歩7分、都営三田線 水道橋駅 A6出口 徒歩5分、JR 水道橋駅 東口 徒歩8分

会費:5千円程度

5 研究報告者:冨田 洋介(東洋学園大学現代経営学部准教授)

2002年中央大学商学部卒業、2015年中央大学商学研究科博士後期課程修了。博士(金融学)。証券会社(新光証券)、投資顧問会社(朝日ライフアセットマネジメント)、投信委託会社(東京海上アセットマネジメント)に勤務後、共栄大学国際経営学部専任講師を経て東洋学園大学専任講師。2021年4月より同大学准教授、2023年4月より同大学大学院准教授。研究分野は金融論、法と金融、制度経済学。

著書に『資本主義はなぜ多様化するのか:法の起源から考える金融市場の国際比較』(ミネルヴァ書房、2023年)、共著『グラフィック経営財務』(新世社、2019年)がある。論文に「金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について―制定法と慣習法の相違を中心に」『年報 財務管理研究』第30号(2019年5月)、「生命保険会社におけるリスクと法の起源-責任準備金、運用資産、保険料収入に関する国際比較-」『生命保険論集』第220号〔2021年度生命保険文化センター研究助成成果報告論文〕(2022年9月)。The nexus between entrepreneurship and property rights: Role of legal origin in entrepreneurship, property rights, and economic growth(共著 、 2022年12月 / Research Square)、Effects of the rule of law and central bank independence on economic inequality and surplus value(2022年7月 / Applied Economics, Volume 55, Issue 11)など多数。

6 主催者

金融プラス・フォーラム(会長:唐木宏一)

7 連絡先

野澤:ZZZt-nozawakag「アットマーク」jcom.zaq.ne.jpZZZ、TEL.090-3318-4815

宮下:ZZZk-miyashita「アットマーク」yu-cho-f.jpZZZ

Zを削除し、「アットマーク」を@へ変更してください。

8 過去の研究報告

<2017年>

第1回(12月):井上智洋(駒澤大学准教授)『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』

<2018年>

第2回(3月):瀧俊雄(マネーフォワード取締役Fintech研究所長)『フィンテックのインパクト』

第3回(7月):宮村健一郎(東洋大学経営学研究科研究科長)『 アメリカ銀行業のP2Pレンディング戦略』

第4回(9月):駒井隼人(株式会社Delta Valuesチーフデータサイエンティスト)『ビッグデータから見た個人投資家行動』

第5回(12月):中村淳一郎 (株式会社IICパートナーズ代表取締役社長)『企業年金・退職金のエッセンスと企業経営に活かす視点』

<2019年>

第6回(3月):畔上秀人(東洋学園大学現代経営学部教授)『リスク評価の世代間継承-生命保険について-』、江口政宏(商工総合研究所主任研究員)『ブロックチェーンは次世代プラットフォームとなりうるか』、冨田洋介(共栄大学国際経営学部専任講師)『金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について-制定法と慣習法の相違を中心に-』

第7回(7月):牧野知弘(オラガ総研株式会社 代表取締役 / 不動産事業プロデューサー)『不動産価値革命と住宅―人生100年時代を迎えて―』

第8回(9月):武田泰弘(TRENDE株式会社テクノロジーディレクター)『電力流通とP2P電力システム』

第9回(12月):濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構研究所長)『人生100年時代の雇用と労働』

<2020年>

第10回(12月):駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程、株式会社Delta Values)・小谷野良太(株式会社Delta Values)『個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? ―株価からの一考察』

<2021年>

第11回(3月):野崎浩成(東洋大学国際学部教授)『地銀と持続可能性』

第12回(7月):森健(株式会社野村総合研究所未来創発センター・グローバル産業・経営研究室長)『コロナ禍が加速させるデジタル資本主義』

第13回(12月):清水洋(早稲田大学商学学術院教授)『流動性とイノベーション:国、企業、個人はどのように立ち向かうのか』

<2022年>

第14回(3月):鈴木隆雄(桜美林大学大学院教授、国立長寿医療研究センター理事長特任補佐)『日本の高齢者は若返っているか:科学的根拠に基づく高齢者の健康増進に関する戦略』

第15回(10月):近藤一仁(岡山商科大学客員教授)『IR(インベスター・リレーションズ)の過去・現在・未来について~変わらない IR の本質を説き、真の企業価値の向上と評価改善を提言する~』

第16回(12月):猪俣哲史(ジェトロ・アジア経済研究所 海外研究員)『グローバル・バリューチェーンから見た米中デカップリング』

<2023年>

第17回(3月):掛下達郎(福岡大学商学部教授/公益財団法人日本証券経済研究所客員研究員)『GAFAの銀行化・金融機関化:金融化との関連で』

(注)第10回(2020年12月)から第17回(2023年3月)まではオンライン開催である。