第14回研究報告会

2022年1月19日

第14回研究報告会

金融プラス・フォーラム

事務局

金融プラス・フォーラム「第14回研究報告会のご案内」を送付させていただきました。今回は桜美林大学大学院教授で国立長寿医療研究センター理事長特任補佐の鈴木隆雄教授をお招きし、「日本の高齢者は若返っているか:科学的根拠に基づく高齢者の健康増進に関する戦略」と題して報告していただきます。先生は老年医学や疫学の分野の第一人者として広く知られていますが、長らく東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター)や国立長寿医療研究センター等で高齢者に関わる実証研究を進めてきています。近著の『超高齢社会のリアルー健康長寿の本質を探るー』(大修館書店、2019年)では「正しい健康の実態を理解し、科学的根拠に基づく予防対策を実行し、できるだけ疾病や要介護状態を先送りし、健康長寿の延伸に向けて歩むこと」が重要としたうえで、「生老病死」の現実について内外のデータと科学的根拠が紹介されています。また、「超高齢社会を健全に生き抜くためには、個人の心構えと努力はもとより、社会のしくみも変容していく必要がある」としています。

先生から寄せられた研究報告の項目と内容は以下の通りです。

「1 超高齢社会における老化の先送り現象、2 科学的根拠の重要性、3 健康寿命の延伸と老年症候群・フレイル予防、4健康寿命延伸のための予防戦略について」

「1超高齢社会における老化の先送り現象」では前期高齢者までの生存率が高水準に維持され後期高齢者になって急速に生存率が低下する「生存曲線の矩形化」が起こっていること、さらに団塊の世代が死亡のピークを迎える2030年頃には右肩がさらに右側に移動する可能性を指摘しています。この要因として後期高齢者における戦後の学童期の体力の強さや成人期における職域での検診の有所見率の低さがあるという以上のような見解は国立長寿医療研究センター等での歩行速度や握力等の縦断研究に基づいて示される。「2 科学的根拠の重要性」では縦断研究の重要性を指摘したうえで統計的問題にも触れる。特に、エビデンス・レベルやランダム化介入試験の重要性を理解しておく必要が挙げられる。「3 健康寿命の延伸と老年症候群・フレイル予防」と「4健康寿命延伸のための予防戦略について」では、健康寿命が重要としたうえで、具体的な予防戦略として、不健康寿命をもたらす(高齢期の)最大の原因である老年症候群やフレイル(健康障害につながる心身の脆弱な状態であり、ストレスに対する予備力の低下した状態)、さらには認知症(認知機能低下)などに対して科学的根拠に基づく適切な介入によって心身機能の維持・改善をもたらすことがポイントとなる。

 社会科学系の学会等では老年学(ジェロントロジー)は「金融ジェロントロジー」との関連で取り上げられるが、その際の「ジェロントロジー」は「高齢者(特に後期高齢者)の体力・知力の低下」が暗黙の前提として置かれているだけです。心理学系からのアプローチが主でその実態あるいは改善に迫った実証的研究は限定的です。ジェロントロジーに限らず関連領域での研究状況は進展が著しいものがありますが、今回の研究報告会では金融ジェロントロジーの前提を捉え返すきっかけになるのではと考えています。

質疑応答(及び懇親会)でも活発な議論を期待したいところです。研究報告会終了後、オンライン懇親会を予定しております(数グループ分け、一定時間経過後に入替。ビールで乾杯予定)。是非ご参加ください(どちらかだけの参加も可です)。

1 テーマ:「日本の高齢者は若返っているか:科学的根拠に基づく高齢者の健康増進に関する戦略」

2 日時:2022年3月13日(日)16時30分~18時00分

報告(16:30-17:40)の後、質疑応答を予定しています。終了次第、オンラインにて懇親会。

3 懇親会(オンライン:zoom):18時開始(~19時)

4 会費:研究報告会、懇親会とも無料

5 報告者:鈴木隆雄(桜美林大学大学院教授、国立長寿医療研究センター理事長特任補佐)

1976年札幌医科大学医学部卒業、1982年東京大学大学院博士課程修了(理学博士)。1990年東京都老人総合研究所疫学研究室長、1995~2005年東京大学大学院生命科学専攻分野客員教授、1996年東京都老人総合研究所疫学研究部長、2000 年同研究所副所長、 2009年国立長寿医療研究センター研究所長、2015 年桜美林大学老年学総合研究所所長、大学院教授(現在に至る)、国立長寿医療研究センター理事長特任補佐(現在に至る)。

著書に『超高齢社会のリアルー健康長寿の本質を探るー』(大修館書店、2019年)、『超高齢社会の基礎知識』(講談社現代新書、2012年)、『体の年齢事典』(朝倉書店、2008年)、『健康の基準』(小学館、2008年)、『骨から見た日本人』(講談社メチエ、2001年)、『骨の事典』(朝倉書店、2004年)。『老化の予防がわかる本』(技術評論社、2005年)、『骨から見た日本人』(講談社、2001年)、『老年病の疫学』(東大出版、1997年)。『日本人のからだ-健康・身体データ集-』(朝倉書店、1998年)、他多数。

6 主催者

金融プラス・フォーラム(会長:唐木宏一)

7 連絡先

野澤:ZZZZt-nozawakag「アットマーク」jcom.zaq.ne.jpZZZZ

宮下:ZZZZk-miyashita「アットマーク」yu-cho-f.jpZZZZ

迷惑メール防止のため先頭と末尾のZを外し、「アットマーク」を@に変更し、ご使用ください。

8 過去の研究報告

<2017年>

第1回(12月):井上智洋(駒澤大学准教授)『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』

<2018年>

第2回(3月):瀧俊雄(マネーフォワード取締役Fintech研究所長)『フィンテックのインパクト』

第3回(7月):宮村健一郎(東洋大学経営学研究科研究科長)『 アメリカ銀行業のP2Pレンディング戦略』

第4回(9月):駒井隼人(株式会社Delta Valuesチーフデータサイエンティスト)『ビッグデータから見た個人投資家行動』

第5回(12月):中村淳一郎 (株式会社IICパートナーズ代表取締役社長)『企業年金・退職金のエッセンスと企業経営に活かす視点』

<2019年>

第6回(3月):畔上秀人(東洋学園大学現代経営学部教授)『リスク評価の世代間継承-生命保険について-』、江口政宏(商工総合研究所主任研究員)『ブロックチェーンは次世代プラットフォームとなりうるか』、冨田洋介(共栄大学国際経営学部専任講師)『金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について-制定法と慣習法の相違を中心に-』

第7回(7月):牧野知弘(オラガ総研株式会社 代表取締役 / 不動産事業プロデューサー)『不動産価値革命と住宅―人生100年時代を迎えて―』

第8回(9月):武田泰弘(TRENDE株式会社テクノロジーディレクター)『電力流通とP2P電力システム』

第9回(12月)濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構研究所長)『人生100年時代の雇用と労働』

<2020年>

第10回(12月):駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程、株式会社Delta Values)・小谷野良太(株式会社Delta Values)『個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? ―株価からの一考察』

<2021年>

 第11回(3月):野崎浩成(東洋大学国際学部教授)『地銀と持続可能性』

第12回(7月):森健(株式会社野村総合研究所未来創発センター・グローバル産業・経営研究室長)『コロナ禍が加速させるデジタル資本主義』

第13回(12月)清水洋(早稲田大学商学学術院教授)「流動性とイノベーション:国、企業、個人はどのように立ち向かうのか」