第10回研究報告会

2020年11月9日

第10回研究報告会

金融プラス・フォーラム

事務局

コロナ禍のなかお元気にお過ごしでしょうか。金融プラス・フォーラムは今秋から本格的に再開することになりました。その中心事業である研究報告会は今回が第10回目となります。ただし、コロナ禍はまだ続きそうでリアルでの開催は難しくオンライン(zoom)での開催となりました。研究報告者は2018年度の研究奨励賞受賞者である駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程、株式会社Delta Values)及び古谷野良太(株式会社Delta Values)の両氏です。会則第19条(研究奨励選考委員会)及び第20条(研究報告会)に基づいた研究報告会になります。受賞論文は「日本人のリスク投資行動と投資情報」(丸淳子・松澤孝紀との共著)『武蔵大学論集』第66巻第1号(2018年)ですが、「個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? ―株価からの一考察」と題し報告頂きます。

駒井氏による報告内容要約は「本研究は個人投資家がどのような株価指標(高値、安値、始値、終値)を意識しながら意思決定をしているのかという点についてマーケット環境や個人の異質性に配慮しながら実証的に分析する。個人に限らず株価指標は投資タイミングを測るための重要な情報と考えられるが、刻々と変化する株価について、いつ時点のどのような株価が意思決定のファクターになっているかはあまりよく知られていない。こうしたファクターを明らかにする事は、プロスペクト理論における参照点の検討や個人の投資行動を理解する上で有用である」というものです。

なお、駒井氏は第4回研究報告会(2018.9.28)の報告者でもあり、「ビッグデータから見た個人投資家行動」と題し報告頂きましたが、今回はもう一歩進めた研究発表になる予定です。駒井氏は株式会社Delta Values に在籍しながら2019年度より一橋大学経営管理研究科博士後期課程で研究を進めておられ、また共同研究者の古谷野氏も2020年度より一橋大学大学院経営管理研究科に研究補助員として同様な研究を進めておられます。

今回はオンラインとなりますが、質疑応答を交えた活発な議論を期待しています。研究報告会終了後にオンラインでの懇親会(数グループに分け、一定時間経過後に入替あり。ビールで乾杯予定)に入りますが、こちらの方にも是非ご参加ください(どちらかだけの参加も可です)。

(注)プロスペクト理論( Prospect theory)とは、不確実性下における意思決定モデルの一つで、1979年にカーネマンとトベルスキーが提唱した(カーネマンは2002年ノーベル経済学賞を受賞)。行動経済学における代表的な成果として知られているが、期待効用仮説では説明できない人間行動を捉えたものとなっている。例えば、ある参照点を境に損失と利得に別れる場合を想定すると、損失の悲しみは利得を上回る(人間本来の認知バイアスを取り込んだ価値関数)。投資行動としては利得局面では損失回避となり、損失局面ではリスク愛好的となる。

<参考>(株)Delta Valuesは2018年4月に(株)ビデオリサーチ社がデータサイエンス事業に特化した新会社として設立した会社(ビデオリサーチ100%出資)である。新会社設立の目的は「様々な企業でデータに基づく意思決定や企画立案の取り組みが進み、データ活用の重要性がますます高まっております。・・・。ビデオリサーチでは、データを活用した企業の事業支援のため、当社が保有する豊富なデータを活かしながら、外部データを繋げ、“意識と行動ログ”・“オフラインとオンライン”等のデータ統合による新しい価値を提案する取り組みを行っております。新会社ではこの取り組みを推進すべく、メディア/コミュニケーションを主たる領域としたデータサイエンス事業に特化し、「高度なデータ解析~ロジック/エンジン作成~ツール構築」の提供を実践します。・・・。ビデオリサーチグループは新会社を加え、データを活用した企業の一層の事業支援を行ってまいります。」(以上、ビデオリサーチ社2018年2月26日プレスリリースより)。

1 日時

2020年12月13日(日)16時30分~18時00分

報告(16:30-17:45)の後、質疑応答を予定しています。終了次第、懇親会。

2 懇親会(オンライン(zoom):18時開始~19時

3 会費

無料。

4 主催者

金融プラス・フォーラム(会長:唐木宏一)

5 テーマ:「個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? -株価からの一考察」

6 報告者:

① 駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程)

2010年武蔵大学大学院経済学研究科修士課程終了。臨床試験受託分析会社、情報通信コンサルタント会社、大手データベンダーを経て、2018年より株式会社デルタバリューズに所属。主にTVオンラインのクロスメディアに係る分析担当として、消費者行動分析、広告効果検証、シミュレーションツール開発業務に従事。論文としては宮川大介・駒井隼人・古谷野良太「Contrarian Trades and Disposition Effect: Evidence from Online Trade Data」『ICS-FS Working Paper Series』FS-2017-E-004巻 2017年、丸淳子・駒井隼人・松澤孝紀「インターネットと個人投資家」『証券経済研究』第93号 2016/3、駒井隼人・岡修平「日本株アクティブ・ファンドのパフォーマンス:分散化と規模の経済」『証券アナリストジャーナル』第50巻第8号 2012/8、丸淳子・駒井隼人・武藤寛之「銀行の投資信託窓販開始後の日本株アクティブ・ファンドのパフォーマンス」『武蔵大学論集』第59巻第3号 2012/2などがある。

② 古谷野 良太

2013年早稲田大学大学院創造理工学研究科経営システム学専攻(修士課程)修了。情報通信コンサルタント会社、大手データベンダーを経て、2018年より株式会社デルタバリューズに所属。主にTVオンラインのクロスメディアに係る分析担当として、消費者行動分析、広告効果検証、シミュレーションツール開発業務に従事。論文としては駒井隼人、古谷野良太、松澤孝紀、丸淳子「日本人のリスク投資行動と投資情報:インターネットユーザーのアンケート・パネルデータによる分析」『武蔵大学論集』第66巻第1号、2018年8月、Hayato komai,Ryota Koyano,Daisuke Miyakawa「Contrarian Trades and Disposition Effect: Evidence from Online Trade Data」『ICS-FS Working Paper Series』FS-2017-E-004巻 2017年。研究報告としては駒井隼人・古谷野良太「インターネットと個人投資家:個人投資家の株式銘柄選択行動」第25回日本ファイナンス学会などがある。2020年4月より一橋大学大学院経営管理研究科に研究補助員として在籍中。

7 過去の研究報告

<2017年>

第1回(12月):井上智洋(駒澤大学准教授)『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』

<2018年>

第2回(3月):瀧俊雄(マネーフォワード取締役Fintech研究所長)『フィンテックのインパクト』

第3回(7月):宮村健一郎(東洋大学経営学研究科研究科長)『 アメリカ銀行業のP2Pレンディング戦略』

第4回(9月):駒井隼人(株式会社Delta Valuesチーフデータサイエンティスト)『ビッグデータから見た個人投資家行動』

第5回(12月):中村淳一郎 (株式会社IICパートナーズ代表取締役社長)『企業年金・退職金のエッセンスと企業経営に活かす視点』

<2019年>

第6回(3月):畔上秀人(東洋学園大学現代経営学部教授)『リスク評価の世代間継承-生命保険について-』、江口政宏(商工総合研究所主任研究員)『ブロックチェーンは次世代プラットフォームとなりうるか』、冨田洋介(共栄大学国際経営学部専任講師)『金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について-制定法と慣習法の相違を中心に-』

第7回(7月):牧野知弘(オラガ総研株式会社 代表取締役 / 不動産事業プロデューサー)『不動産価値革命と住宅―人生100年時代を迎えて―』

第8回(9月):武田泰弘(TRENDE株式会社テクノロジーディレクター)『電力流通とP2P電力システム』

第9回(12月)濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構研究所長)『人生100年時代の雇用と労働』