2021年10月12日
第13回研究報告会
金融プラス・フォーラム
事務局
金融プラス・フォーラム「第13回研究報告会のご案内」を送付させていただきました。今回は早稲田大学商学学術院の清水洋教授をお招きし、「流動性とイノベーション:国、企業、個人はどのように立ち向かうのか」と題して報告していただきます。先生は日本はもとよりシカゴ、ロンドン、アントホーフェン(蘭)で研究を重ねてきた新進気鋭の経営学者ですでに権威ある賞である日経・経済図書文化賞(2016年)、組織学会高宮賞(2017年)、シュンペーター賞(2021年7月)を受賞しています。特にイノベーション研究で国際的に最も権威あるシュンペーター賞は日本人で2人目の快挙とされています(1人目は故・青木昌彦教授)。これら受賞作は極めて学術的なものですが、これらの内容を比較的読みやすくした話題の著書が『野生化するイノベーション:日本経済「失われた20年」を超える』(2019年)で、研究報告会ではこの著書に沿ったかたちでお話して頂く予定です。
先生から寄せられた報告の概要は以下の通りです。
「イノベーションは、創造的な側面と破壊的な側面があります。持続的にイノベーションを生み出していくためには、この両方の側面を真剣に考えていく必要があります。今回は、イノベーションの歴史を踏まえながら、経営資源の流動性、企業の収益性、手近な果実もぎ、格差などの観点からイノベーションの多面性を考えていきます。また、経営資源の流動性が高まる中で、国、企業、そしてビジネスパーソンとしてはどのような対応がポイントになるのかを考えていきましょう。」
先生によればイノベーションとは「経済的な価値を生み出す新しいモノゴト」です。イノベーションが経済成長の源泉の一つであり社会的課題を解決し暮しに貢献する一方、他方では破壊的側面があり失業や格差を齎していることも事実です。特に、プラス、マイナスが時間差で現れることを強調しています。また、生産性のジレンマ(アバナシー)やイノベーションのジレンマ(クリステンセン)は個別企業の視点からのものであり社会的視点からの必要性を強調しています。例えば、よく引き合いに出される富士フイルムとコダック(倒産)の勝敗の例については、スピンアウト(インテルなど)やスピンオフを含めて評価すべきことを指摘しています。これら事例を、ヒト・モノ・カネといった経営資源の流動性という観点からイノベーションに迫る視点は刮目に値します。
当フォーラムの目的の一つに学際的研究の促進がありますが、今回の研究報告は極めて適合性が高いといえます。デジタル革命と超高齢化社会が急進展している折、また、成長と分配、格差、国家の役割といった現代的課題(永遠の課題)について極めて示唆的な研究報告会になるのではと考えています。質疑応答(及び懇親会)でも活発な議論を期待したいところです。研究報告会終了後、オンライン懇親会を予定しております(数グループ分け、一定時間経過後に入替。ビールで乾杯予定)。是非ご参加ください(どちらかだけの参加も可です)。
記
1 テーマ:「流動性とイノベーション:国、企業、個人はどのように立ち向かうのか」
2 日時:2021年12月12日(日)16時30分~18時00分
報告(16:30-17:40)の後、質疑応答を予定しています。終了次第、オンラインにて懇親会。
3 懇親会(オンライン:zoom):18時開始(~19時)
4 会費:報告会、懇親会とも無料
5 報告者:清水洋(早稲田大学商学学術院・教授)
1973年神奈川県生まれ。2007年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスでPh.D。アイントホーフェン工科大学フェロー、一橋大学大学院イノベーション研究センター専任講師、准教授、教授を経て2019年より現職。主な著書に『オープン・イノベーションのマネジメント』(2015年)、『ジェナラル・パーパス・テクノロジーのイノベーション:半導体レーザーの技術進化の日米比較』(2016年、日経・経済図書文化賞受賞、組織学会高宮賞受賞)、“General Purpose Technology, Spin-Out and Innovation: Technological Development of Laser diodes in the United State and Japan”,Springer,2019(2021年Schumpeter Prize受賞)、などがある。近著に『野生化するイノベーション:日本経済「失われた20年」を超える』(2019年、新潮選書)があるほか論文等多数。
6 主催者
金融プラス・フォーラム(会長:唐木宏一)
7 連絡先
野澤:ZZZZt-nozawakag「アットマーク」jcom.zaq.ne.jpZZZZ
宮下:ZZZZk-miyashita「アットマーク」yu-cho-f.jpZZZZZ
迷惑メール防止のため先頭と末尾のZは外し、「アットマーク」を@に変更して下さい。
8 過去の研究報告
<2017年>
第1回(12月):井上智洋(駒澤大学准教授)『人工知能は未来の経済をどう変えるか?』
<2018年>
第2回(3月):瀧俊雄(マネーフォワード取締役Fintech研究所長)『フィンテックのインパクト』
第3回(7月):宮村健一郎(東洋大学経営学研究科研究科長)『 アメリカ銀行業のP2Pレンディング戦略』
第4回(9月):駒井隼人(株式会社Delta Valuesチーフデータサイエンティスト)『ビッグデータから見た個人投資家行動』
第5回(12月):中村淳一郎 (株式会社IICパートナーズ代表取締役社長)『企業年金・退職金のエッセンスと企業経営に活かす視点』
<2019年>
第6回(3月):畔上秀人(東洋学園大学現代経営学部教授)『リスク評価の世代間継承-生命保険について-』、江口政宏(商工総合研究所主任研究員)『ブロックチェーンは次世代プラットフォームとなりうるか』、冨田洋介(共栄大学国際経営学部専任講師)『金融市場と経済格差に影響を及ぼす法的環境の実効性について-制定法と慣習法の相違を中心に-』
第7回(7月):牧野知弘(オラガ総研株式会社 代表取締役 / 不動産事業プロデューサー)『不動産価値革命と住宅―人生100年時代を迎えて―』
第8回(9月):武田泰弘(TRENDE株式会社テクノロジーディレクター)『電力流通とP2P電力システム』
第9回(12月)濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構研究所長)『人生100年時代の雇用と労働』
<2020年>
第10回(12月):駒井隼人(一橋大学経営管理研究科博士後期課程、株式会社Delta Values)・小谷野良太(株式会社Delta Values)『個人投資家は何を基準に投資の意思決定をしているか? ―株価からの一考察』
<2021年>
第11回(3月):野崎浩成(東洋大学国際学部教授)『地銀と持続可能性』
第12回(7月):森健(株式会社野村総合研究所未来創発センター・グローバル産業・経営研究室長)『コロナ禍が加速させるデジタル資本主義』