20170117nakano01
2017年1月17日
福生市公共施設等総合管理計画(素案)に対して【中野 恵一】
平成29年1月6日(金)から1月20日(金)まで募集されて
いる、福生市公共施設等総合管理計画(素案)への意見を
以下のとおり提出した。
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まず指摘すべき問題点は、策定が要請されているのが
「総合管理“計画”」であるにもかかわらず、それを
「公共施設等の今後のあり方に関する基本“方針”」に
“置き換えている”か、あるいは“すり替えている”ことである。
前者であるとすると、“計画”と“方針”の区別がついていない
(*1)、ということを示しており、所内の教育に課題が
ある可能性を示唆している。一方、後者であるとすると、
不誠実の謗りを免れない。
いずれにしても、このような基本的な用語に対する理解の
不十分さ(あるいは誤魔化し)が露呈してしまっている、
レベルの低い文書が公式に、対外的に出てしまう状況に
ついては、所内のチェック体制についての点検が
急務である。
*1:
以下に示されているとおり、“およその方向”を示すだけでは、
“計画”にはなりえない。
計画=将来実現しようとする目標と,この目標に到達する
ための主要な手段または段階とを組合せたもの。
目標の達成時点や目標の内容が明確にされている
こと,また目標を最も能率的に達成する手段が
選ばれていることが計画の重要な特性をなす。
<https://kotobank.jp/word/%E8%A8%88%E7%94%BB>
方針=物事や計画を実行する上の、およその方向。
<https://kotobank.jp/word/%E6%96%B9%E9%87%9D>
では、この“方針”に過ぎない内容を“計画”と呼べるものに
するにはどうすればよいか?
少なくとも以下の3点を再考し、見直す必要がある。
1)“目的”と“手段”を混同しないこと
「身の丈に合った行政運営を目指しつつ、時代とともに変化する
市民ニーズに対応するため、公共施設等の全体の状況を把握し、
長期的な視点をもって、複合化・集約化・長寿命化などを
計画的に行うことを目的」と書かれているが、
「身の丈に合った行政運営を目指しつつ、時代とともに変化する
市民ニーズに対応する」を“目的”とみなすことはできるものの、
「公共施設等の全体の状況を把握し、長期的な視点をもって、
複合化・集約化・長寿命化などを計画的に行う」は手段
(といっても、あくまでも(抽象的な)“目的”に対応したもの
なので具体性には乏しいもの)である。
2)目標の達成時点や目標の内容を明確にすること
上記の「身の丈に合った行政運営を目指しつつ、時代とともに
変化する市民ニーズに対応する」を目的としたとき、そこに至る
“過程”を想定し、それを基に、計画に盛り込むべき目標の内容・
達成時期を具体化(*2)する必要がある。
そのためには、目的が達成された際の“あるべき姿”と“現状”の
ギャップを“問題”と認識し、その問題解決に至る複数の
ルートと、それぞれのルートにおける複数のマイルストーン
(段階)を設定しなければならない(*3)。
この各マイルストーンに到達するために“なすべきこと”が
“課題”である。
そしてこの“課題”に、基準(どこまで、どのように、
何を、など)と期限(いつ、いつまでに、など)を加えたものが
“目標”にほかならない。
*2:
目的と目標の違い1:目標は目的のためにある。
目的と目標の違い2:目標は具体的に、目的は抽象的に。
目的と目標の違い3:目標は見えるモノ、目的は見たいモノ。
目的と目標の違い4:目標は過程、目的は行き先。
目的と目標の違い5:目標は複数、目的はひとつ。
目的と目標の違い6:目標は諦めても目的は諦めない。
目的と目標の違い7:目的は目標の先にある。
<https://thechange.jp/mokumoku7-6829.html>
*3: <http://www.teoria.jp/?p=2251>
3)目標を最も能率的に達成する手段を選ぶこと
目標を達成する手段(=課題解決策)は通常、複数考えること
ができる。
その中で、最も能率的なものを選択する必要があり、かつ
その選択を納得してもらうための論理的な検証がされて
いなければならない。
そのためには、複数の解決策の案を、費用対効果/実現性/
リスクなどの観点で分析し、根拠を持って優先順位を決める
必要がある。
この優先順位は、実行場面における状況変化等により、
一度選択した解決策を変更する際の拠り所にもなるものである。
以上に述べたとおり、現状の文書は、上記の1)2)3)の
内容がまったくないか、あるいは不十分であり、とても“計画”
とは呼べるものになっていないので、全面的に見直すべき
である。
以上の見解は、執筆者個人の意見であり、
特別に断り書きがある場合を除き、本会は
もちろん、執筆者が所属するいかなる団体・
組織をも代表した見解ではありません。