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2013年12月12日

学力世界No.1を取り戻せ!ニッポンの教育②

~福生市の英語教育充実に向けて~ 【中野 恵一

「伸びる余地のある子どもたちには積極的にその機会を提供し、

大いに能力を発揮し、そして世界で活躍してもらえるように

するために今、何ができるか」

福生という地域の資源・特色を活かすとすれば、まずは

“英語教育”が挙げられる。

このことは、以前より、市長はじめ多くの皆さんに提言させて

いただいてきたが、同様の意見が10月19日開催の第13回

福生市こども議会においても児童より提言されたそうで、

心強い限りだ。

さらに、12月3日開催の福生市議会第4回定例会では、

川越教育長より「英語教育推進委員会(仮称)の設置検討」

を含め、取り組みへの前向きな姿勢が示されている。

そしてその答弁の中では「国語力の充実が前提」という

発言もあった。

これは素晴らしい(なぜなら、ここで言われている“国語力”は、

読解力・論理的思考力・表現力を鍛えるものであると期待

しているので。ただし、その実践には課題があるだろうが。)。

“英語教育の拡充”と言うと、様々な意見が飛び出し、その議論

ばかりに終始し、なかなか具体的な動きにつながらない。

そうこうしている間にも、能力のある子ども、意欲のある子どもに、

その機会を提供できないのは、いかにももったいない。

要は、母語である日本語による教育と、国際語としての英語

による教育のバランスを取り、それぞれの良さを活かしながら、

子どもたちの意欲を引き出し、興味を喚起することにより、

よりよく“生きる力”が育成できれば良いわけだ。

その点で福生市は、英語による教育、英語に触れる環境、

英語を必要とする機会に恵まれている(あるいは恵まれる

可能性が高い)という地の利があるわけで、それを必要とする方、

関心のある方を惹きつける街になれるはずである。

そしてその環境で育った子どもたちが、日本の国際化の最先端で

活躍してくれることを期待したいものだ。

さて、『ニッポン未来会議』では、大津市の越市長が、自身の

留学経験も踏まえて、英語教育の重要性を訴えているが、

どちらかというとコミュニケーション手段の側面が主張されている

ように感じられた。

これは、本当は大切なことではあるが、しばしば英語教育拡充に

対しての消極論者による、「大多数の日本人にとっては英語による

コミュニケーションの機会は限られる」という主張を惹起する一因に

なっているように思う。

一方、もうひとりのプレゼンターである國領先生は、日本の強み

であり、弱みでもあることとして、“日本語による高等教育”を

挙げておられた。

これはとても大事なポイントであると思う。

母語で高等教育を受けられる国、母語で書かれている専門書が

非常に幅広い分野に対して容易に入手できる国というのは、

世界の中でそれほど多いわけではない。

私たちは、そういう意味では大変に恵まれた環境にいると思う。

しかしながら、世界中にある知的資源にアクセスすることを考えると、

特にインターネット経由での情報流通量が爆発的に増加している

昨今、これはもう英語で書かれたもの、話されたもの、が圧倒的な

分量を占めるようになっている。

例えば、「大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open

Online Course、通称ムーク)」により、世界トップレベルの大学の

良質な講義を受講することもできるのだ、英語力さえあれば。

そしてこのような良質な教育コンテンツを活用すれば、対面で

行われる学校教育の質を上げることも可能になる。

いわゆる反転授業がそれだ。

結局、これらをうまく融合することが、日本の子どもたちにとっての

強みとなる。すなわち、母語であり、世界的にも質が高く豊富な

知的資産を有する日本語により物事を深く理解し、批判的・創造的に

思考し、それを分かりやすく伝える表現力を身につけ、その上に、

英語による膨大な情報から得られる良質で多様な知識を組み合わせる

ことができれば、まさに鬼に金棒となるはずである。

参考:

「英語力のビハインドが招く国際競争力の低下」(主文)(資料

日本経済研究センター 2011年度研究生

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