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2012年6月15日
「信じられる学校づくり」が急務 【中野 恵一】
教員の仕事は本来、生徒に向かってなされるべきである。
目の前の児童・生徒が、できないことをできるように、
分からないことを分かるようにすること。
豊かな世界観を育み、柔らかな人生観が持てるよう
指導すること。
そのことに全力を尽くしてほしいのが、教員に対する
親の願いであるはずだ。
教員が余計なことで忙しくなり子ども達に向き合う時間が
減れば、集団生活では自然に起きるイジメやちょっとした
事件に対して、それを発見し、適切に処置することに
隙ができても不思議はないだろう。
人数が増えない前提ならば、もう一度教員が子ども達に
寄り添う時間が増えるように、余計な仕事を大幅に
削減するためのシステム上の大改革が必要なのである。
教務の指導は指導主事の仕事だ。
そして、その指導主事も例外ではなく、文書業務の
嵐の中で機能低下を起こしているのである。
本来、教頭は軍曹として授業を観察し教員を指導
しなければならない立場にあるのに、授業を観察する
暇もない教頭が増えた。
学校を足しげく訪問し、よき実践を他校に普及させるべく
指導助言する役割の指導主事も、現場を巡ることができない。
この人たちを解放して、真に子ども達のための仕事に
集中させるには、文科省や上位の教育委員会が作成し
学校現場に回答を迫る膨大な文書をバッサリ切る以外ない。
その大半が国民や住民、そしてそれらを代表する議員の
質問に答え、責任を逃れるための、文科省あるいは
教育委員会の上部官僚の「免責文書」なのだから。
校長には人事権はない。
教員の任免権は、都道府県の教育長の権限に属するからだ。
いまでは、本人の意向にかかわらず、配属から3年以内でも
ダメ教師を追い出すことが可能になったし、6年以上経って
いても学校の事情によって異動を留保することができるようになった。
ただし、相変わらず採用する権限もクビにする権限もない
から、だましだましの人事であることに変わりはない。
「信じられる学校づくり」が急務である。
まず、上部組織が現場を「信じられない」として調査を
乱発すると、膨大に書類が増えてゆく。それが、本来の
仕事──生徒に向き合う仕事──ができない教員を増やしていく。
保護者が学校を信じない前提では、学校はすべての
チャレンジを封じられてしまう。前例から少しも踏み
外さないように、失敗しないように、余計な説明を
しなくていいようにという力学が現場に働くから、
改革は結局、起こらないだろう。
そしてなにより、信じられていない学校では、教育活動
そのものが成立しない。子ども達は、親たちが信じない
ものを信じることはないからだ。
以上は、都内では義務教育初の民間人校長として、
杉並区立和田中学校校長に就任し、その後、
『よのなか科』の創設や、〝ドテラ〟(土曜寺子屋の
略)、学習塾と連携した有料の課外授業「夜スペ」などで
知られる、藤原和博氏(現在:東京学芸大学客員教授、
大阪府知事特別顧問)による連載記事からの引用である。
藤原氏に関しては、さまざまな批判もあるが、そういった
先入観を抜きに、これらの主張を一度、読んでみてはどうだろうか。
ここに挙げられているような処方箋がすべてだとは
思わないが、特に上に引用した箇所などは、共感する
部分である。
そういえば、以前に聞いたところによれば、福生市の
学校で校長先生が使っておられる業務用のパソコンには、
いわゆるフィルタリングソフトが設定されており、例えば
教育上、大変興味深いサイトをご紹介したにも関わらず、
学校からは見ることができない、と言われたことがあった
(たぶん、ブログの記事か何かだったから。<掲示板等と
同じ”コミュニケーション系”のカテゴリとなり、”子ども”
向けにはブロックの対象とすることがある>)。
そこでよくよく聞いてみると、「i-フィルター」という、
学校関係ではとてもポピュラーな、有害サイト
フィルタリングソフトが設定されている、ということだった。
確かにこれは学校への導入実績は高いものだし、
その後のバージョンアップもあって設定によっては
有効なものであるが、一般には「お子さまが1人で
インターネットをはじめたら」というキャッチフレーズが
使われているように、子どもたちを守るために導入するものだ。
もちろん、危険なサイトに不用意にアクセスして
しまうことは大人でもあることなので、一般企業でも
今はフィルタリング設定されていることが多いし、
そういう観点での設定なら理解できるが、その当時、
聞いていたレベルはとてもそんなものではなく、
おそらく、子ども向けと同レベルだったのではないだろうか。
そしてその設定を解除する権限は学校現場にはないのである。
これこそ、現場が「信じられていない」ことの典型的な
表れのように思うが、現状はどうなっているんでしょうね?
以上の見解は、執筆者個人の意見であり、
特別に断り書きがある場合を除き、本会は
もちろん、執筆者が所属するいかなる団体・
組織をも代表した見解ではありません。