安藤政輝リサイタル
「宮城道雄全作品連続演奏会 6」
1993/ 2/27
宮城道雄全作品の演奏会(6)にあたって
安藤政輝
本日はお忙しい中をご来場いただきましてありがとうございます。
約300曲と言われる宮城道雄の全作品を連続して弾いてゆこうというこのシリーズも、これまでに55曲を弾き、 今回で6回目を迎えることができました。これもひとえに皆様のご支援の賜物と感謝いたしております。
今回は、1926年(大正15,昭和元年)と1927年(昭和2年)の作品を中心に15曲を取りあげます。 今回の年表でも目立つことは、1926年の元日を含む放送の回数の多さです(ラジオ放送の開始は1925年)。 宮城作品に混じって<萩の露><菜蕗><夕べの雲>などの”古典”の存在が目を引きます。 レコードへの吹き込みも続けられ、日本ビクター蓄音機(株)が1927年9月に設立されると、11月にはその専属芸術家となって、 以後30年間にわたるビクターにおける録音活動がはじまります。 また、演奏会への客演も多くなっている中で、1927年11月に開催された三曲聯合大会に個人でなく宮城社中として参加しているのが注目されます。
前回に引き続いて子どものための「童曲」の作曲割合が多いのですが、残念なことに、<人形><燕の巣><朝顔のラジオ店> <豊年萬作御世萬歳><星の国><きれいなお正月>の6曲は、曲名だけが残っていて内容は不明です。 しかし、1920年(大正9年)作曲の<野の小川>の楽譜が入手できました。 これは、福山圭子さんが矢島凱子さんから採譜なさったものです。
第1曲目<和風楽>と最後の<天女舞曲>で「玲琴」が使われておりますが、 玲琴は前回述べましたように田辺尚雄氏が考案された低音楽器です。 本日は、令息の田辺秀雄氏お迎えしました。 「玲琴」のこと、田辺尚雄さんと宮城道雄先生のこと等、とっておきのお話を伺えるのではないかと楽しみにしております。 なお、楽器は、中井猛氏より拝借いたしました。
<天女舞曲>という曲は、非常に欲張った曲で、箏3面に、大・小の十七絃、笙、胡弓、玲琴、尺八、打物(太鼓とトライアングル)、それに女声2部という構成です。 それだけに、演奏の機会の少ない曲になってしまいました。初めは<五節舞曲>という曲名だったようで、天女が袖を翻して5度舞ったという言い伝えのように繰り返して歌が歌われます。 大小2種の十七絃の音色の変化を出すために、前回同様小十七絃を宮城数江先生から拝借いたしました。ありがとうございました。
終わりになりましたが、お話をしていただく吉川英史先生、田辺秀雄先生、毎回快く出演をお引き受けくださる山本邦山氏をはじめとする賛助の皆様、 その他会の開催にご援助・ご協力をいただきました皆様に、心から御礼を申し上げます。