安藤政輝リサイタル
「宮城道雄全作品連続演奏会 14」
2010/ 5/11
ごあいさつ
安藤政輝
本日はお忙しい中をご来場いただきましてありがとうございます。
宮城道雄の全作品を年代に沿って連続して弾いていくこのシリーズも、1990年3月以来これまでに180曲を弾き、今回で14回目を迎えることができました。これもひとえに皆様の温かいご支援の賜物と感謝いたしております。
今回は、1936年(昭和11年)の作品を中心に17曲をとりあげますが、前回に引き続き、子どものための「童曲」が11曲あります。 童曲にも3種類あって、2.《お清書》から7.《お早う》までは、子どもが弾き歌いをする簡易な曲、 8.《とび》から10.《ヘイタイサン》と、13.《お手々ポンポン》14.《金の鯱(しゃち)》は、 大人の伴奏で子どもが歌う曲です。 これは、子どもは涼しい顔をして歌うのですが、伴奏は結構難しく、大人は汗をかきかき弾くことになります。 ちなみに、他の1種類は、大人が子どもに聴かせる曲で、たとえば《三つの遊び》(《まりつき》《かくれんぼ》《汽車ごっこ》)などが挙げられるでしょう。
1.《那須与一》は、『平家物語』の「扇の的」を題材とした合唱合奏曲で、物語的な展開を見せますが、あまり演奏される機会がありません。
11.《野に出でよ》は、本来、高低箏2部と十七絃、三絃に胡弓が入った合唱合奏曲ですが、見つかった楽譜は断片的で、胡弓の分は・Sくありませんでした。 きっと宮城道雄先生が演奏なさってそのままになってしまったのでしょう。ですから、前奏では「穴があいた」ようになっていますし、前奏の後「胡弓ソロ14小節」も割愛せざるを得ませんでした。 歌詞も、高野辰之氏自筆の作詞素案ノートである『野人集』で確認したところ、2番に相当する部分があるのですが、「大いなる工匠(たくみ)の鑿(のみ)も ここにして 工匠の刷毛 ここにしてあり」とあって、 1番に比べて1行分足りません。しかし、楽譜は1番が終わった後2番へ戻るような形でもあり、 三絃のパート譜だけにはコーダのような形で1番とは違う終りの部分があるので、きっとこの「素案」の後2番の歌詞ができて演奏されたのではないかと思われます。 本日は、1番部分のみの演奏といたしました。そのため、終りの部分も尻切れトンボになっています。このような不完全な形での演奏は取りやめようか、あるいは最小限の補作をしようかと迷ったのですが、 とりあえず現在分かっている部分だけを「音」として発表し、今後の資料提供をお願いするという形をとることにいたしました。
12.《済美高等女学校校歌》は、校歌としては珍しい箏伴奏のもので、ピアノ伴奏の形も後に作られています。 現在ネットで公開されている「済美高等学校校歌(保存版)」は、ピアノ伴奏譜を基にしたと思われる箏二重奏の伴奏であり、 歌詞にも異同がありますが、原作の形を再現するように致しました。 歌唱は、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校(芸高)で生田流箏曲を専攻している2・3年生にお願いしました。
15.《袖ひぢて》は、前回・前々回の《小夜ふけて》《かざしの菊》と同様、「古曲入門」の曲です。
終わりになりましたが、解説と年表をいただきました宮城道雄記念館資料室の千葉優子氏、藤原道山氏をはじめ賛助の皆様、 その他会の開催にご援助・ご協力をいただきました皆様に、心から御礼を申し上げます。
宮城道雄全作品連続演奏会-第14回に寄せて
宮城道雄記念館資料室 室長 千葉優子