安藤政輝リサイタル
「宮城道雄全作品連続演奏会 9」
2007/ 9/27
宮城道雄全作品連続演奏会の再開にあたって
安藤政輝
本日はお忙しい中をご来場いただきましてありがとうございます。
宮城道雄の全作品を連続して弾いてゆこうというこのシリーズも、1990年3月以来これまでに93曲を弾き、今回で9回目を迎えることができました。これもひとえに皆様の暖かいご支援の賜物と感謝いたしております。
1999年(平成11年)には、宮城道雄生誕百年を記念する事業の一環として、千葉潤之介・千葉優子両氏の編著になる『宮城道雄音楽作品目録』が(財)宮城道雄記念館から出版されました。これまでは『宮城道雄伝』『宮城道雄作品解説全書』が作品リストとしての拠り所であったわけですが、これらの補遺を行ったこの書は、この演奏会シリーズを行っていくにあたっては非常に大きな支えとなってくれる資料です。しかし、その中で「楽譜あり」と表記されていても、その楽譜が断片的であったり、尺八と合奏してみると寸法が合わなかったりすることもあり、実際に演奏する場合には一つひとつ検証をしていかなければなりません。
≪新暁≫は、前回までに演奏してきた≪天女舞曲≫≪花園≫の流れを汲むもので、この女声合唱の型は1931年(昭和6年)の≪秋韻≫へとつながっていきます。≪新暁≫は、箏高低2部と尺八で演奏されることが多いのですが、今回は原曲通り笙と胡弓を加えて演奏いたします。
≪石清水≫は、箏本手・替手と尺八の曲でしたが、本手を宮城道雄先生から習われた広岡柔甫氏が宮城数江先生に送られた楽譜を基にいたしました。
今回も子どものための「童曲」の割合が多く、11曲になります。次代を担う子どもたちへの期待を込めた子どものための作曲は100を越え、作詞者・葛原しげるとのコンビは1956年(昭和31年)に宮城道雄が亡くなるまで続きました。
作曲当時の有名なソプラノ歌手佐藤千夜子らを想定した大人のための「歌曲」も数多くあるのですが、今はあまり世に知られた存在ではないのが残念なことです。今回は、東京芸術大学名誉教授の嶺貞子氏に歌をお願いしました。
前回、松尾葉子氏の指揮で≪越天楽≫≪壱越調≫≪盤渉調≫≪神仙調≫の箏協奏曲4曲を東京交響楽団と演奏して以来、いつの間にか13年の月日が経ってしまいました。その間、宮城数江先生が、そして吉川英史先生も旅立たれました。このシリーズ第1回のプログラムの中で「この連続演奏が完了するまでは、うかつに死ねない」とおっしゃっていた先生のご期待に添えず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。今度は、「全曲弾き終えるまで死ねない」と私自身が言わなければなりません。
陣容と気持ちを新たに再開し、最後まで頑張るつもりですので、どうぞよろしくお願いいたします。
終わりになりましたが、解説と年表をいただきました宮城道雄記念館資料室の千葉優子氏、賛助の皆様、その他会の開催にご援助・ご協力をいただきました皆様に、心から御礼を申し上げます。
宮城道雄全作品連続演奏会-第9回に寄せて
宮城道雄記念館資料室 室長 千葉優子