安藤政輝リサイタル
「宮城道雄全作品連続演奏会 7」
1993/ 7/27
宮城道雄全作品の演奏会(7)にあたって
安藤政輝
本日はお忙しい中をご来場いただきましてありがとうございます。
約300曲と言われる宮城道雄の全作品を連続して弾いてゆこうというこのシリーズも、1990年3月以来これまでに70曲を弾き、今回で7回目を迎えることができました。これもひとえに皆様のご支援の賜物と感謝いたしております。
今回は、1928年(昭和3年)の作品を中心に、1926年(大正15・昭和元年)からの19曲を取りあげます。
1928年(昭和3年)の年表で目立つことは、「宮城関係」でいえば、東京以外での演奏や放送が増えてきていることと、 御大典奉祝大音楽会に<越天楽変奏曲>を新交響楽団と協演したということでしょう。 次回は、この<越天楽変奏曲>を含めてオーケストラとのコンチェルトをまとめて演奏したいと思っております。 また、「その他」の欄では、社会情勢の不安がどんどん増していっている点が注目されます。
今回も子供のための「童曲」の作曲割合が多く、前回演奏できませんでした<きれいなお正月>を含めて9曲になります。 作詞者・葛原しげるとのコンビは1956年(昭和31年)に宮城道雄が亡くなるまで続き、時代を担う子どもたちへの期待を込めた子ども向けの作曲は100を越えています。 このことが、内田百閒の諌言に対する無言の回答であったと考えられるでしょう。
<花園>は、前回演奏した<天女舞曲>で合唱が使われたのに続くもので、 この女声合唱の型は次回演奏予定の<新暁>から1931年(昭和6年)の<秋韻>へとつながっていきます。
<法政大学航空歌>は、法政大学の航空部の部歌ですが、現在では全く歌われておりません。 と言うより、その存在すら明らかではありませんでしたが、法政大学体育会航空部60年史「飛翔」(年刊)の中から見つけ出すことができ、 ここにまた1曲、光を当てることができました。ご尽力いただいた三田航空クラブ(慶応義塾大学体育会航空部OB会)の栗山脩氏、 および内山俊範氏をはじめとする法政大学航空部の関係者の方々にお礼を申し上げます。 今回は法政大学アリオンコールの方々に出演をお願いし、元来ピアノで伴奏するようになっておりますが、 5音音階で書かれていることでもあり、箏と十七絃とで演奏いたします。
終わりになりましたが、解説と年表をいただきました吉川英史先生、毎回心よく出演をお引き受けくださる山本邦山氏をはじめとする賛助の皆様、 その他会の開催にご援助・ご協力をいただきました皆様に、心から御礼を申し上げます。