24.腎臓病治療技術
1.調査テーマ
腎臓病治療技術の出願動向
2.調査目的
腎臓病で苦しんでいる人は多いが、腎臓の機能はいちど失われると回復することがない場合が多く、慢性腎不全といわれる病態になるとのことであり、厄介な病気である。
しかし、医療技術の進歩は目覚ましいものがあり、腎臓病の治療も透析以外に研究されているかもしれない。
そこで、今回は腎臓病の治療に関する過去の出願を調べ、現在どのような状況にあるのか、新たな治療技術としてどのようなものが注目されているかを調べることとした。
3.調査対象
使用DB :SRPARTNER
対象公報:公開特許公報
対象期間:2011月1月1日〜2016年12月31日の発行
対象技術 : 腎臓病の治療技術
4.概要
腎臓病の治療に関する過去の出願を調べ、現在どのような状況にあるのか、新たな治療技術としてどのようなものが注目されているかを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。
2011月1月1日〜2016年12月31日の6年間に発行された公開特許公報から腎臓病に関する公報を検索し、さらにノイズ公報を除去した公報1,574件を分析対象公報とした。
この腎臓病に関する分析対象公報の発行件数は増減しているが、2015年発行分から増加傾向し続けている。
出願人数や発明者数もほぼ同様の傾向を示している。
出願人別で見ると、日機装、アスチュートメディカル,インコーポレイテッド、バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド、バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム、ニプロ、フレゼニウスメディカルケアドイッチェランドゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング、旭化成メディカル、フレセニウスメディカルケアホールディングスインコーポレーテッド、テルモ、フレゼニウスメディカルケアードイチュラントゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツングと続いている。
特筆すべき点は上位10社のうち8社が外国企業であることである。
また上位10社で25.5%を占めているに過ぎず、腎臓病治療技術は多数の出願人に分散しているようである。
その中では、日機装、アスチュートメディカルが重要と思われる。
新規参入企業としては次の出願人の評価が高かった。
アスチュートメディカル,インコーポレイテッド
ベーリンガーインゲルハイムインターナショナルゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング
セラヴァンスバイオファーマアール&ディーアイピー,エルエルシー
所定条件を満たす重要メイングループは以下のとおり。
A61K31/00:有機活性成分を含有する医薬品製剤
A61M1/00:医学用の吸引またはポンプ装置;体液を除去,処理,または導入する装置;排液システム
A61P9/00:循環器系疾患の治療剤
A61P13/00:泌尿器系疾患の治療薬
A61P43/00:グループ1/00から41/00に展開されていない特殊な目的の医薬
個別のコードについても分析したが、技術的にはコメントするような特徴が見つからなかった。
在宅透析や携帯用透析装置なども含まれていたが、減少傾向を示しており、大きな変化は無いようである。
ただし、出願人ついては次のような傾向が見られた。
・次のコードは外国出願人が多かった。
[A:腎臓病]
「C:検査・診断など」
「D:細胞・遺伝子レベルの治療」
「F:治療剤」
これらの分析結果を総合すると、腎臓病の治療に関する技術はまだ透析が中心であり、この技術については国内企業が中心であるが、細胞・遺伝子レベルの治療や、治療薬については外国出願人が中心となっており、この分野でも日本の技術は遅れをとっているようである。
なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。
※ 作成した図表は51図と16表