21.仮想現実

1.調査テーマ

仮想現実技術の出願動向

2.調査目的

最近、テレビで仮想現実が紹介されていた。

高層ビルの間に張り渡した綱の上を歩くとか、離れた場所のユーザ同士で仮想ボールをキャッチボールするというものであった。

これらは娯楽用であるが、仮想現実の技術は実用的な用途もあり、既に多くの分野で利用されていると予想している。

そこで、今回は仮想現実の技術がどのように利用されているか、今後の動向はどうなりそうかなどを調べることとした。

3.調査対象

使用DB :SRPARTNER

対象公報:公開特許公報

対象期間:2011月1月1日〜2016月12月31日の発行

対象技術 : 仮想現実

4.概要

今回は仮想現実の技術がどのように利用されているか、今後の動向はどうなりそうかなどを調べたが、分析結果の注目部分をまとめると次のようになる。

まず、仮想現実に関する分析対象公報の発行件数は、継続して順調に増加し続けている。

出願人数も継続して順調に増加し続けている。

発明者数は2014年に少し減少したが、最終年の2016年発行分では大きく増加しており、調査期間全体では増加傾向を示している。

出願人別で見ると、第1位は任天堂で、4.5%であった。

以下、ソニー、キヤノン、コナミデジタルエンタテインメント、クゥアルコム・インコーポレイテッド、富士通、セイコーエプソン、スクウェア・エニックス、バンダイナムコエンターテインメント、KDDIと続いている。

上位10社で28.0%を占めているに過ぎず、仮想現実に関する技術は多数の出願人に分散しているようである。

所定条件を満たす重要出願人は次のとおり。

キヤノン株式会社

クゥアルコム・インコーポレイテッド

富士通株式会社

セイコーエプソン株式会社

技術として見ると、重要メイングループは次のとおり。

[G02:光学]

G02B5/00:レンズ以外の光学要素

G02B27/00:他の光学系;他の光学装置

[G06:計算;計数]

G06F3/00:計算機で処理しうる形式にデータを変換するための入力装置;処理ユニットから出力ユニットへデータを転送するための出力装置,例.インタフェース装置

G06Q50/00:特定の業種に特に適合したシステムまたは方法,例.公益事業または観光業

G06T1/00:汎用イメージデータ処理

G06T7/00:イメージ分析,例.ビットマップから非ビットマップへ

G06T19/00:コンピュータグラフィックスのための3Dモデルまたはイメージの操作

[G09:教育;暗号方法など]

G09B9/00:教習または訓練目的のためのシミュレータ

G09G5/00:陰極線管表示器および他の可視的表示器に共通の可視的表示器用の制御装置または回路

[H04: 電気通信技術]

H04N1/00:文書または類似のものの走査,伝送または再生,例.ファクシミリ伝送;それらの細部

H04N5/00:テレビジョン方式の細部

H04N21/00:選択的なコンテンツ配信,例.双方向テレビジョン,VOD

重要課題について分析した結果は以下のとおり。

[F01A:新規表示方式提供]

最終年の2016年に急増している。

所定条件を満たす重要メイングループは以下のとおり。

G02B27/00:他の光学系;他の光学装置

G06F3/00:計算機で処理しうる形式にデータを変換するための入力装置;処理ユニットから出力ユニットへデータを転送するための出力装置,例.インタフェース装置

G06T19/00:コンピュータグラフィックスのための3Dモデルまたはイメージの操作

G09G5/00:陰極線管表示器および他の可視的表示器に共通の可視的表示器用の制御装置または回路

出願人としては、セイコーエプソン、コロプラ、キヤノンが目立っている。

[B04C:データ作成]

全期間で見ると減少傾向を示している。

所定条件を満たす重要メイングループは以下のとおり。

G02B27/00:他の光学系;他の光学装置

G06F3/00:計算機で処理しうる形式にデータを変換するための入力装置;処理ユニットから出力ユニットへデータを転送するための出力装置,例.インタフェース装置

H04N5/00:テレビジョン方式の細部

用途しては、ゲームが多かったが、医療用などもあった。

サンプル公報を見ると、拡張現実の用途としては、次のようなものが考えられている。

・ゲームのようにエンターテイメント性を向上するもの。

・手術支援のように関連情報をシースルー表示で提示するもの。

・経路案内や作業支援のように次の行動を促したり誘導するもの。

・仮想試着のように現実に行なっている事柄を簡易に経験するもの。

・リアルなシミュレータにより訓練の効果を向上するもの。

総括すると、仮想現実に関する出願は今後も増加すると思われる。

リアリティ向上、小型・軽量化、取り扱い容易化などが当面の課題であるが、多種多様な用途に関する出願も増加すると思われる。

なお、この調査はほとんどがプログラム処理による簡易的なものであるので、さらに精度の高い分析が必要であれば、特許調査会社の専門家による検索式作成と全件目視チェックによる分析を依頼されたい(ただし数百万円と数ヶ月の期間が必要となることがあるが)。

※作成した図表は77図と13表