A08:課題分析ツール

これまでに公開した出願動向調査はExcelマクロで集計や図表作成を行なっているが、このほど課題ペースで分析するためのマクロを改訂したので、このマクロによりどのような分析が可能かを説明する。

元データは「自動車安全化技術の出願動向調査2017版」のデータを使用した。

以下、「自動車安全化技術の出願動向調査2017版」の追加データという体裁をとり、今回作成したExcelマクロによる課題ベースの分析方法を説明する。

1.コーディング

母集合とした公報件数は15,626件であり、Excelマクロによりこれらの公報に技術分類コードと課題分類コードの二種類のコードを付与した。

(1)技術分類コードの付与

今回のテーマではFI特許分類が整備されていたので、これをベースとして15,626件の公報を分類することとした。

FI特許分類を整理してコード化した結果、分類コードは133項目となった。

この分類コードとFI特許分類との対照表であるコード変換表を作成し、別途作成したExcelマクロを使用して各公報に分類コードを付与した。

コード変換表は1つの分類コードに対して複数のFI特許分類が割り当てられているものがあるため、364項目となった。

このコードを技術分類コードとした。

なお、以下では技術コードと略記している。

(2)課題分類コードの付与

上記母集合15,626件の公報データの発明の名称、要約、課題その他の公報内容を別途作成したExcelマクロにより分析し、課題分類コードを付与した。

このExcelマクロでは、現時点で14,389件の課題キーワード(最大3語句、語句長は不定)と、課題コード表(5階層で11,293行)の補助データを使用し、公報の発明の名称、要約、発明の目的、利用分野、従来の技術、発明の効果、課題に含まれる語句と照合することにより課題分類コードを付与している。

付与された課題分類コードは1,944項目であった。

なお、以下では課題コードと略記している。

2.課題ベースの分析方法

以下のようにして技術コードと課題コードとが付与された公報データおよびコード表設定し、以前に作成したExcelマクロと、今回作成したマクロとにより分析した。


(1) 公報データおよびコード表の設定

今回作成した「課題別Graph作成200409.xls」のマクロでは次のデータを設定している。

・ 対象公報データ(公報番号、出願番号、発行日(公報)、発明等の名称、出願人・権利者(最新)、発明者または考案者(最新)、IPC(最新)、FI(最新)、Fターム(最新)、課題コード、要約、抽出課題、技術コード)

・ 課題コード表(課題コード、課題内容)

・ 技術コード表(技術コード、技術内容)

・ 処理する課題コード(設定されなければ全課題が対象)

・ 処理する技術コード(設定されなければ全課題が対象)


(2)作成される図表

上記(1)のデータを設定し、マクロを実行すると以下の図表が一括作成される。

・ 発行件数年別推移(縦棒グラフ)

・ 三桁課題年別バブルチャート(バブルチャート、最終年がピークの課題、所定条件により重要と判定された課題)

・ 四桁課題年別バブルチャート(バブルチャート、最終年がピークの課題、所定条件により重要と判定された課題)

・ 五桁課題年別バブルチャート(バブルチャート、最終年がピークの課題、所定条件により重要と判定された課題)

・ 新規課題バブル(バブルチャート)

・ レポートリスト(発明等の名称、出願人・権利者(最新)、要約、抽出課題、技術コード、新規課題などのデータを含む公報番号リスト、新規課題の課題別集計表、出願人別集計表)

・ 要約リスト(要約を含む公報データ、各公報の全課題、新規課題などを含むリスト、全課題を展開・集計した課題別集計表)

・ 三桁課題コード・一桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 三桁課題コード・三桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 三桁課題コード・四桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 三桁課題コード・六桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 四桁課題コード・一桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 四桁課題コード・三桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 四桁課題コード・四桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 四桁課題コード・六桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 五桁課題コード・一桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 五桁課題コード・三桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 五桁課題コード・四桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート

・ 五桁課題コード・六桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート


(3)分析方法の概要

このようにして作成したチャートやリストにより分析を行なったが、分析を進める手順の概要は以下のとおりである。

同じような分析を繰り返しているのは、分析項目数が多すぎるとグラフ化できないため徐々に分析対象項目を絞り込んでいるためである。


3-1 公報全件の分析

まず、上記母集合15,626件全件についてマクロを実行し、作成された図表から「五桁課題年別バブルチャート」を選択し、マクロにより重要と判定された課題コードを抽出した。

さらに、この抽出した課題コードから目視確認で件数が60件以上の課題に絞り込んだ。

この絞り込んだ課題コードを重要課題コードとした。

また、「四桁課題コード・三桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート」において各課題が集中していた技術コードを選択した。

この選択した技術コードを重要技術コードとした。


3-2 重要課題コードと重要技術コードによる分析

ここまでの分析結果を踏まえ、最終年に増加傾向を示した以下の重要課題コードと、上記[四桁課題三桁技術バブルチャート]で多くの課題コードとの相関が強かった以下の重要技術コードだけに絞り込んでさらに詳細に分析した。

この分析により、新たな重要課題コード7項目、高評価の新規課題コード5項目、新規課題公報サンプル266件を抽出した。

また「五桁課題コード・四桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート」において課題コードが集中していた技術コードを調べ、さらに詳細に分析する技術コード3項目を抽出した。


3-3 技術分類コードによる追加分析

上記技術コード3項目に絞り込み、再度、全課題を対象としてマクロを実行し、追加分析した。

このマクロ実行により作成された「五桁課題年別バブルチャート」により新たな重要課題11項目を抽出した。


3-4 新たな重要課題による追加分析

さらに、この新たな重要課題で絞り込み、「五桁課題コード・六桁技術コードを縦軸・横軸とするバブルチャート」を参照することにより、上記技術コード3項目と関連が深い課題コードを抽出した。

また、上記技術コード3項目において特に新規性が高いと思われる課題コード5項目を抽出した。

さらに、同時に作成されたレポートリストから上記5項目の課題コードを含む公報を選択し、上記技術コード3項目における新規技術の内容を確認した。

分析の具体的な内容は下記PDFをご覧ください。