第5回:内容

■はじめに

この市民講座もおかげさまで第5回となりました。そんなことで,そろそろ潮時・・といいましても終わりではなく,前回と同様,今後も岩手県外からの研究者もお招きしつつ,さらにパワーアップしていこうと企てております。この先数年のプランを立てて,できれば1年に2回のペースでの市民講座を開いていく予定ですので,今後とも,よろしくお願い申し上げます。

さて,その節目となる今回のテーマは「見えない世界の生態学」。「おんせん」の微生物のはたらきや,きのこを含む菌類と植物の普通では「見えない」関係を見ていただきたいと存じます。肉眼では見えない世界,見えていても「みえない」世界の生態学をお楽しみください。

■鉄と硫黄と微生物-「いろ」で読む「おんせん」の生態学

牧 陽之助(まき ようのすけ)岩手大学人文社会科学部

微生物とは、「肉眼で見ることができないほど小さい生物」をいいますが、これを「見る」にはどうしたら良いでしょう。そう、顕微鏡で拡大すればいいのです。

では、顕微鏡の使えない自然の中での微生物の生活を知りたいときにはどうしますか。いろいろ方法はありますが、たくさんあつまった微生物を相手にしたり、微生物によって引き起こされる「目に見える」現象を手がかりにすること、などはそのひとつです。ここでは、「あかい」温泉「しろい」温泉、八幡平五色沼の湖色の変化の話、深海の「おんせん」の話など、硫黄と鉄をめぐる微生物の話を紹介します。

■菌に頼って生きる植物ー植物の根で展開する菌根菌との共生関係ー

横山 潤(よこやま じゅん)山形大学理学部

植物は光合成を行なうことができるので、一見すると独立して生活しているよ うに見えます。しかし、実際は多くの種類が、根で菌類と密接な共生関係を営 んでいて、この関係なくしては生きていくことすらできない植物もたくさん知 られています。中には、すっかり光合成をすることをやめてしまい、完全に菌類に頼って生活をする植物もいます。

本講演では、根という普段目にする機会の少ない部分で展開する、実に4億年にもわたる植物と菌類のパートナーシップの果てに、どのような植物と菌類の生き様が見られるのかについて解説します。