放牧で維持する草原のチョウ : 北上山地安家森(あっかもり)

吉田信代(東北農業研究センター)

北上山地では、山頂付近のなだらかな準平原に草原が広がっています。冬は寒く、強い西風が吹きつけるため、風衝草原のできやすい自然環境です。そこは昔から牛馬の放牧地や採草地として利用されてきました。

北上山地の草原の多くは、このように自然に人の力が加わってできた「半自然草原」でした。

ところが近年、草原の面積は各種開発、植林、草原の管理放棄等によって著しく減少しました。それに伴って草原を住みかとする草原性チョウ類も減少したと言われています。

安家森は北上山地北部に位置する標高1239mの山です。 ずっと日本短角種牛を放牧してきましたが、いったん放牧をやめた後、草原の景観を取り戻すため、2000年から放牧を再開しました。

牛の放牧は草原性のチョウにどのような影響を与えているのでしょう?植物とチョウの調査から、もし、放牧をやめてしまうと森林化が進み、草原性のチョウは次第にすめなくなるだろうと思われました。また、逆に放牧しすぎてもシバが優占し、それ以外の植物を餌にしているチョウはすみづらくなります。きっとこの間に丁度良い放牧圧があるのでしょう。

*安家森の草花やチョウ、放牧中の日本短角種牛は、パンフレット「放牧で草原を維持する-半自然草地の草とチョウ-」でご覧になれます。

東北農業研究センターのパンフレット紹介ページからダウンロードしてください。