よりアクセシブルな
資料の作り方
2023年に、登壇者さんへ情報保障チームからのお願いとして作成したものを公開いたします。
0. はじめに
この大会では、かなり早い時期に、事前に、手話通訳者・文字通訳者に渡すデータのご用意をお願いしております。
大会での貴重なお話を、参加者の皆様に伝えることを大事にしたいと考えているからです。
★★★…【必須】登壇者にしかできない作業で、必須の作業
★★…【推奨】登壇者にしかできないものの、必須でない作業
★…【希望】スタッフ側でも担当できるものの、登壇者に実施してもらうとありがたい作業
1. 事前にご提出いただきたい資料
1-1. スライド、または登壇にあたって作成した資料(メモ程度)。
(★★★必須)
Googleスライド推奨(ギリギリまで修正できる。更新しても送り直す必要がないため)。
作成途中でも、URLを公開していただけると嬉しいです。
※Googleスライド形式への変換も可能。GoogleスライドのWebアプリで直接PowerPointを開いたり、修正したりすることも出来ます。
同じファイル名のPowerPointをGoogleドライブにアップロードすることで更新することもできます(確認が表示されるので、前のファイルは保存せず上書きを選択してください)。
1-2. 登壇者データ
(★★★必須)
講演者入力シートへ記入いただいています。それぞれ通訳する際に必要な情報となります。
希望する代名詞(手話では、英語のように性別による区別があります。女性代名詞、男性代名詞、どちらも使用しないなど)
名前の表記(漢字表記、つづりなど)
所属団体など
1-3. 関連資料、書籍、ウェブサイト
(★希望)
講演の前提となるような、その分野での基本となる文献(もしあれば)。
2. スライド資料の参加者への事前共有
(★希望)
参加者(または、情報保障が必要な方)に事前に、Googleスライドのリンクを送りたいです。
視覚障害者は、Zoomの画面が見られない。また発表を聴きながら資料を読むことは難しい。
手話通訳を利用する聴覚障害者の場合、スライドと手話通訳を同時に2つ見るのは負担となる。
3. スライドの作成について
3-1. 動画を事前撮影する場合文字は、35pointほどの大きさにしてください。
(★希望)
動画編集の際に、字幕や手話通訳を挿入する関係で、全体のサイズが小さくなるためです。
事前に資料共有が難しい場合は、特に読みやすいサイズで作成してください。
3-2. 代替テキスト
(★希望)
写真や表やグラフについて。本文中または、代替テキストとして記載。
その視覚コンテンツを入れなかった場合にどういった文章を書くか。または、電話で説明するとしたらどのように伝えるか、と考えると作りやすいです。
代替テキストの入れ方が分からない場合は、記載したい文章を教えてください。大会側でGooleスライドであれば、更新できます。
代替テキストの例
代替テキストとして、例えば、
写真:スーツ姿の人物が表彰状を持って座っている。バリアフリー化推進功労者表彰式
といれる。
3-3. 配色について
色の違いでのみデータを示したグラフは、使用しない。もしくは、各項目が何であるか、グラフ中にテキストで書くなどをするのが望ましいです。
(★希望)
白と黒だとコントラストが強くなり過ぎるので避けた方が良いですが、基本的に明度のコントラストが強い方が見えやすいです。
明るさに差をつけると、単色(正確には同じ色相の色)やモノクロであっても、違いが分かります。
たじまちはる『配色デザイン良質見本帳』、p159より引用
逆に、“色弱の方に見分けにくい色の組み合わせをグレースケールで見てみると…見事に明度差がない”
Twitter投稿による説明文より一部引用
白黒変換(見分けづらいことが分かる。明度が近い色の組み合わせになってしまっている)
色の組み合わせついては下記のホームページが参考になります
Googleスライドの場合。ページを貼り付けるだけで、カラーユニバーサルデザイン機構が作成したパレット(CUD配色セット)が作れます。「カスタム」の中に出来ているものがそうです。
ページ比率の違いで、2通りのCUD配色セットです。カラーユニバーサルデザイン機構で公開されているパワーポイントから変換しました。これらのページをコピーするとパレットが使える状態となります。
(配色例1)背景が白、または薄いグレーの時
(配色例2)背景が濃いグレーの時
(配色例3)背景が黒の時
写真または、グラフを引用する場合は難しいと思いますので、修正はしなくても大丈夫です。その場合は、質問などで対応するような形としましょう。
(参考)多様な色覚特性をシミュレートするアプリもあります。興味を持った方は、使ってみても良いと思います。
Chrome拡張機能(現在は公開停止?)
iPhoneアプリ
Androidアプリ
コントラストのチェック(Windows, Mac)
3-4. (参考)フォントについて
モリサワの「BIZ UDゴシック」が商用無料で公開されました。
それに伴いGoogle系のアプリ(GoogleドキュメントやGoogleスライド)でも使えるようになりました。
UDとあるようにユニバーサルデザインのフォントです。Pがついているのは、文字ごとに文字幅が調整されているプロポーショナルフォント。ついていないものは、等幅フォントです。
デフォルトでは選択肢にないですが、下記の手順で追加できます。
[フォント横の▼]をクリック
[その他のフォント]をクリック
[“BIZ”]と入力して、検索
[“BIZ UDGothic”にチェックを入れる]
OKボタンを押す
4. 事前の録画や大会当日の登壇の際、意識していただきたいこと
(★★★必須)
途中で間違えたからといって、撮り直しは必要ありません。
必須となっていますが、情報保障しやすい話し方をしていただくよう心がけることを必須としている意味合いです。
句読点を意識して、1文のまとまりで話す。
1人ずつ話す。うまく音声認識できないため。また手話通訳も難しい。
発話者が変わる時は、「○○です」と名乗る。(話者の人数が10人以上の時は)誰が話し始めるのか分かる様に、手も上げて名乗ると分かりやすいです。
専門用語の略称について。少なくとも一番はじめに使う時は、正式な名称で話す。
例)「とくようで働いています、△△です。よろしくお願いします。」
この場合「とくよう」は、特別養護老人ホーム? 特別養子縁組?
録画・登壇する際、できればマスクを外す。手話が分からない難聴者は、唇の動きを補助的に使ってコミュニケーションします。
また、聴覚障害者にとっては、顔の表情も大事な情報になります。字幕では、話し方といった情報もなくなってしまいます。
「こそあど言葉」のような指示語は避けて、できるだけ具体的に話す。
例)「これを見ると分かる様に」ではなく、「この感染者数の増加グラフを見ると」といったように内容を具体的に話す。
99.もっと知りたい人のための参考資料
- 書籍
太田良典 (著), 伊原力也 (著)『デザイニングWebアクセシビリティ』ボーンデジタル; 第一版 (2015/7/27)
- テキスト資料(配色)
- テキスト資料(フォント)
- テキスト資料(代替テキスト)
- テキスト資料(全般)
『困ったを解決するデザイン』の付録「『困った!』に先回りするデザインチェックリスト」。特設サイトからダウンロードできます。