7月 JST-SPRING国籍要件付与で思うこと
東京大学教養学部4年の金澤伶です。
(この文章は、8月1日「デマと差別が蔓延する社会を許しません」街頭宣伝に寄せたものです。※時間なく代読せず)
残念ながら、この場には来れませんでした。私たちは、常に経済的理由や、社会的な抑圧によって、顔や名前を出せない人、場に来れない人の想いを背負って活動してきました。
去年3月から、学費と奨学金が若者の未来を左右し、人生すら根こそぎ奪っていってしまうと気づいてから、私は学費と人権、大学と抑圧、政治と生活の問題に声を上げています。それを気づかせてくれた人も、自分から声を上げることが難しい、「定住者」という在留資格を持った、幼少期に来日したフィリピン国籍の友人でした。
「日系人として来日を許可されて、低所得世帯としてなんとか大学まで入って、でも在留資格と経済的問題に翻弄されて今に至る。改めて日本社会において自分の置かれている立ち位置がいかに不安定なのかを知った。どんなに頑張っても私の力だけではコントロールできない制度がたくさんあって社会に絶望している。」
その人が最初に自分の状況を語ってくれた時の言葉です。私は、この言葉を、反芻して生きてきました。先月26日にJST-SPRING国籍要件付与の方針に改悪されるかもしれない、と聞いた時、すぐさま仲間を集めよう、署名を立ち上げて文科省に提出しよう、と動きました。そして30日、決まってしまった時も、思い出して反芻していました。
私にとって大切な、在留資格のない高校生の友人たちは、デマによって広がる無理解や差別によって、受験できる高等教育機関を探したり学校を説得したりすることすら非常に苦労します。数少ない民間の奨学金しかなく、奨学金探しや合格のために奔走していた数年でもありました。
なぜ、同じように既にこの日本で生きている友人たちが、単に日本人ではないというだけで、または難民となり逃げた先で、時に「不法滞在者」などと呼ばれながら、平等である「教育を受ける権利」すら奪われてしまうのか、私は理解ができません。
「外国人が優遇されている」「留学生がお金をたくさんもらっている」
そういうデマが拡散され続け、参議院選挙でそれを訴えた参政党が当選しました。日本人学生がそのせいで苦労していると言わんばかりでした。いやいやいや、私たち学生は、学費値上げに反対し、政府の義務である無償化に向けて訴えを続けてきましたが、その声に耳を傾けましたか?そして、私たちは、JST-SPRINGの国籍要件付与にも反対しています。
国籍や在留資格によって、教育を受ける権利や研究という労働者の権利を侵害されることは、生存権の問題であり、深刻な人権侵害であり、人生の破壊行為だからです。
私はずっと怒っています。分断に。デマに。差別に。抑圧に。子どもの権利侵害に。知の営みの軽視に。労働者への権利侵害に。
どうか、私たち当事者の声を聴いてください。私は院進学には親の理解を得られず、今は企業で働きながら学生をしていますが、当事者の声を聴けと怒っています。それが連帯であり、それが社会を変えると信じています。