私たちが2025年5月8日に開催した院内集会にて、文部科学省・財務省・総務省との意見交換を行いました。その際、事前に8項目の質問状を3省に送付していたのですが、時間の都合上、院内集会で回答をいただくことができませんでした。そこで後日、3省に書面回答を要求し、その内容を6月13日の記者会見で発表させていただきました。本ページはその内容になります。
なお、記者会見全体の内容については、下(PC等の場合は右)の動画をご覧ください。
以下が、その質問と回答の内容をまとめたものです(スクロール可)。
まず質問1について、2025年4月に開始した多子世帯の学生等に対する授業料等無償化を実施したことについて言及されていたが、すでに多くの当事者より、それでは不十分との声が上がってきている。こちらの声をもっと真摯に聴いていただきたい。
質問2の運営費交付金に関する質問も同じく、必要な経費を確保してきたと考えていると回答があったが、それが実際はできていないからこそ、学費値上げに歯止めがかかっていない現状があると思う。もう少し、学費値上げの問題の現実に対して向き合って回答していただきたかったというのが正直なところだ。
質問3において、私学助成を重要なものとして位置づけて思っていただいているということに関しては、とてもうれしく思える。しかし一方、私学助成がやはり私学にとっての基盤的経費だとおっしゃるのであれば、もう少し分厚く補助していただきたいと思っている。また、質問中にも述べられている「私立大学に対する国の補助を二分の一とする」とした1975年の国会の付帯決議を、きちんと建設的に、適切に国の責任として政治行政を果たしていってもらいたい。
質問5に関しては、当事者である学生やその保護者、大学等の教職員の声を踏まえたご指摘を要請書よりいただいたと言っている。そうであれば、もう少し当事者の声とか実態とか、困難に向き合って、そこからぜひ出発をして、政策だったり、政治の場で、より活発に議論してほしいと思う。正直、先日の院内集会でも申し上げたが、今の現状、当事者として声を聴いていただいているという感覚はあまりなく、むしろ蔑ろにされていきている感覚がある。そこについても、向き合っていただきたい。
財務省回答の要諦は、文部科学省との責任の分有、既存の支援体制の維持強化、そして学生側の政府に批判的な指摘に対する政府公式見解の指摘による上書き、というこの三点にある。
第一に、文部科学省との責任の分有である。こういう言い方をすると聞こえがいいが、実際は文部科学省と財務省の連携を妥協的にしつつ、責任の所在を曖昧化し得る危険性を帯びる手法である。質問2への回答で「国立大学法人運営費交付金のあり方について、文部科学 省としっかり議論してまいります」、質問8への回答で「文部科学省からの概算要求を踏まえ、予算編成過程においてしっかり議論してまいります」とそれぞれ言っているのはその証左である。この点については、文部科学省からの概算要求の実数値と厳密な比較を行い、「議論」に基づいて概算要求を反映していると言えるか、主権者による点検を必要とするであろう。いずれにせよ、この精度の説明で、文部科学省の名が一度ならず出ていることは、一定程度の財務省のエージェンシーの限界と逃げを含意しつつ、財務省と文部科学省の間で責任の所在が曖昧な箇所が存在するということの証左であるとも言える。
第二に、既存の支援体制の維持強化も顕著である。質問1への「まずはこうした拡充を着実に実施に移す」という回答、質問5への「引き続き、高等教育費の負担軽減のあり方について…議論」という回答などが好例である。つまり、財務省は既に「拡充」「負担軽減のあり方」について施策を打っており、それをどう継続するか、という問題に焦点化して事態を捉えているようである(裏を返せば、より根本的でラディカルな施策への実施には消極的である、とも言えるであろう)。
第三は政府公式見解の指摘による上書きである。この流れは、高等教育予算の不十分を指摘すべく、要請側が具体的な数値を出して要求すると、財務省側は高等教育予算の充実をすべく、別の数値や見解を出して問題無しと答える流れである。例えば質問2で要請側が「近年国立大学への運営費交付金は、年間約 1 %ずつ減らされてきており」と云ったことに対し、財務省は「令和7年度予算においては対前年度同額となる1兆784億円を措置するなど、近年は同額程度で推移しているところです」と回答している。恐らく要請側は年間1%ずつという経時的変化を見て減ったとしているが、財務省は令和7年度とその前年度の不変性を見て減っていないとしている。情報の切り取り方の問題ではあるものの、かなり対照的な結論が出るように要請内容を操作しているといっても過言ではない。換言すれば、「上書き」である。
財務省は質問5に「当事者である学生やその保護者、大学等の教職員の声を踏まえた御指摘をいただいたと承知しております」と回答している。確かに令和7年度予算での運営費交付金は1%も減っていないかも知れない。確かに、支援もする気はあるようである。然し、これだけ責任の所在が曖昧で、質問5で支援体制の変更を迫られても他質問への回答で現行支援策を墨守し、「上書き」的な要請内容の操作から異なる結論を導く点で、今回の回答は些かなりとも表面的譲歩であり、全く楽観出来るものではないと評価出来る。
総務省は、質問4に関してのみ、回答いただいた。具体的今後の公立大学の授業料のあり方については、公立大学法人及び設立団体の責任において、検討すべきものと認識していると述べいるが、具体的にどのような方向でかについて明確に回答していない。また、6は管轄外との回答だったが、そのほかの質問については、理由を明記せず回答をいただけていない。
これらの回答は「公立大学の授業料については、公立大学法人と設立団体である地方公共団体の判断で個別に定めているものであり、国としての評価は差し控えたい。 また、今後の公立大学の授業料のあり方については、公立大学法人及び設立団体の責任において、検討すべきものと認識している」というものであり、公立大学法人と地方自治体に全責任を帰している。「活力ある公立大学のあり方に関する研究会」や地方財務関連の幾つかの研究会の開催なども行っているところと思われるので、そのような活動の中で集まった知見も活用して頂きたい、また公立大学法人と地方自治体に任せるままでは、自治体ごとの経済格差や政策的差異がそのまま地方の高等教育に反映されてしまい、国内での教育を受ける権利及び機会均等に抵触する虞があることから、国内での複数自治体を俯瞰して地域間格差を是正する役割があるのではないかと提案申し上げたい。