東京大学をはじめとする大学の学費値上げに苦しむ学生の声を聴く 6・14院内集会
学生の発言
学生の発言
2024年6月14日に開催しました、「東京大学をはじめとする大学の学費値上げに苦しむ学生の声を聴く 6・14院内集会」における学生の発言です。
※当日、時間の都合や体調不良により登壇が実現しなかった学生の原稿も掲載しております。
※所属等は当時のものです。
実際のスピーチのようすや、院内集会全体の内容については以下の動画をご覧ください。
私の方からこの院内集会の趣旨説明をさせていただきたいと思います。
私たち、学費値上げ反対緊急アクションは、先月、東京大学が授業料値上げの検討中を発表したことをキッカケとして、それに反対するべく立ち上がりました。
首都圏を中心として国立大学でも授業料が上がるなか、東京大学に続いて広島大学・熊本大学が授業料の値上げに言及しています。そして私立大学ではここ30年間で、平均して年間30万円ほど授業料が右肩上がりに増額しています。学費値上げの問題は、東京大学に留まらない、国公立と私立、両方を含むすべての大学の問題です。
大学が学費を値上げしてしまえば、本来すべての人に開かれるべき高等教育の機会を、閉ざしてしまうことになります。たとえば東京大学は、世帯年収が1000万円以上の学生が約5割、男子学生が約8割と、そもそも決してすべての人に開かれた大学とは言えません。これを改善し、大学をすべての人に開いていくためには、奨学金制度の拡充だけでは不十分です。それは、まず現状の多くの奨学金は貸与型であり、そして受給条件には家庭の収入や資産の上限が設けられている一方、学生が家庭から得られる援助は本当に様々だからです。社会的に弱い立場に置かれた多様な人々を含め、すべての人が安心して学習・研究できる環境を整えるためには、抜本的に学費を下げることが求められます。
さらに、現代の日本が抱えている極めて深刻な問題として、少子化があります。昨年の合計特殊出生率は1.20と、過去最低でした。少子化に歯止めをかけるためにも、大学の学費を下げ、物価高騰の煽りを受けている家計の教育負担を減らすことが必要です。
そこで私たちは、以下のことを要求します。国公立大学・私立大学を含むすべての国内の大学に対して、さらなる学費の値上げを行うことに反対します。そして政府に対して、高等教育無償化の選択肢を含め、大学・大学院の学費の低廉化を要求します。
以上になります。ご清聴ありがとうございました。
私が在籍しているのは教育学部という学部で、教育の理念と実践を研究する学問を学んでいます。 特に障害児教育や発達障害の研究に興味があり、学部での学びを深めつつ大学院へ進学し、 研究に取り組むことを夢見ています。 しかし、入学当初から教育学を学びたいと考えていたわけではありません。 実は、去年まで 経済学部で経済についての勉強をしていました。しかし、教育に関するアルバイトの経験を経て、 どうしても教育学の勉強がしたいと思い、東大にある 「転学部」という制度を使い、 1 年留年する扱いにはなるものの、 教育学部に入ることができました。 とはいえ、 私の家庭は決して裕福ではありません。 仕送りだけでは学費と生活費が賄えない ため、 貸与型奨学金という名の借金を背負うことで、東大生として学業を修めています。 な ので、1年分多く、少なくない額の学費生活費を家族に負担してもらっています。 まして や、学費が10万円も上がれば、親に、「卒業後は教育系の大学院に行って研究をしたい」 などとは口が裂けても言えません。 最先端の研究をするという夢への第一歩すら踏み出せないのです。 大学は「真っ白なキャンバス」 であり、 偶々とった授業や思い思いの興味関心に沿った サークル活動などを通じて、学生が将来について考え直せる場所であってほしいと思います。 学費値上げは、学生に「キャンバスに無限の可能性を描くこと」 をゆるさず、 学生の活動の可能性を狭めるものです。 金銭的な理由で学問をあきらめている、あるいはあきらめかけている東大生は、 自分だけで はありません。 周りには、家賃を浮かせるために大学から遠いボロボロの寮に不便を感じな がら住まざるをえなかったり、食費を削ったりしている学生もいます。 また、 経済的に恵まれた家庭であっても、保護者の理解が得られず、 地方から東京の大学への進学を反対されたりして、長時間アルバイトをして学費や生活費を工面しているような学生もいます。彼らは 世帯所得を基準とした既存の支援からはこぼれ落ちてしまっていますし、学費値上げの影響を受けることになります。 他の大学にも、同じ悩みを持つ大学生がたくさんいることを知っ ています。 今回の東京大学の学費値上げは、金銭的な困難に直面している全ての大学生にとって悲しい知らせです。最大で10万円もの増額は、果たして学食での食事何食分でしょうか。 また、東京都の最低賃金付近で換算すればアルバイトで80~90時間もの時間を割かざるを得ないのです。 さらに、東大に加え、広島大や熊本大といった多くの国立大学で検討されている値上げが今回を皮切りに実行される恐れがあります。 高等教育の機会は誰にでも公平に与えられるべきです。 しかし、現状では所得格差がそのまま教育格差になっているのです。 私は、そして私たちは、この学費値上げに反対します。 これは自分自身のためでもありますが、すべての同じ東京大学の学生、そして、金銭的な困難の中で学びや研究を続けようとしているすべての学生のための主張です。
そして政府には、 高等教育無償化の選択肢を真剣に検討し、大学と大学院の学費低廉化に全力を尽くすことを強く求めます。
ご清聴ありがとうございました。
簡単に私のバックグラウンドを紹介させていただきますと、父を早くに亡くし、女手一つで育てられました。入学後は大変ありがたいことに授業料免除を受けることができ、そのおかげで4年生までやってこられました。 しかしこの経歴を踏まえても、学費を値上げしても授業料免除を拡充すれば対応できると言う意見には断固反対です。なぜなら、授業料免除を受ける学生の置かれる苦しい境遇を実際に体験してきたからです。 学費は免除になっても、生活費が必要ですからアルバイトをしておりますが、学業との両立は大変なものです。大学に通いながら働くため、平日は早朝や深夜に働かざるを得ず、疲労から授業の予習復習が追いつかなかったり、ときには体調を崩してしばらく寝込んだりすることもありました。 生活のために長時間のアルバイトをせざるを得ないのにもかかわらず、授業料免除を受ける学生は、いい成績を取り続けてストレートで卒業することを求められます。 東京大学の授業料減免制度には、「最短修業年限を超過している場合、原則授業料減免の対象とならない」という規定があり、なんらかの理由で留年してしまった場合、その時点で授業料免除が打ち切られてしまいます。 さらに、授業料免除には成績要件が存在するため、良い成績を取り続けなければ授業料免除を打ち切られ、学費が払えなくなって大学にいることができなくなってしまうのではないかというプレッシャーを強く感じてきました。 また、経済的支援を必要としていても支援を受けることが難しい学生も多くいます。 私は、わかりやすく支援の基準に当てはまっており、かつ家族が支援の申請に協力的だったため授業料免除を利用することができました。 しかし私の友人たちの中には、親などの生計維持者の望む特定の学部に行かないのであれば学費は出さない、あるいは実家から通える大学でなければ学費は出さない、といった理由で学費を出してもらえなかったという人がいます。 世帯収入を選考基準としている奨学金や授業料減免制度では、このような学生を救うことはできません。 今回の東京大学の学費値上げ案がこのまま通ってしまったら、それをモデルケースとして全国の大学が値上げを検討するのではないでしょうか。 私は次の春には卒業して大学を去る身です。しかし私は、これから大学・大学院で教育を受けようと志すすべての人に、私のしたような苦労をしてほしくありません。そのためには、まず今回の値上げを絶対に食い止めることが必要です。そしてゆくゆくは、高等教育の無償化に向け、学費の値下げが検討されるべきです。 私は一学生でしかありませんが、ここにいらっしゃる皆様一人ひとりのお力添えをいただければ、より良い方向へ向かっていけると信じています。未来の学生たちのために、どうかご協力をお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。
現在、広島大学学費値上げ阻止緊急アクション代表として、学費値上げに反対する学生の声を届けるために活動しています。学費問題の本質的な解 決、そして大学の独立性を取り戻すためには、こうした学生による自主的な取り組みが必ず必要 になると考えています。
私たちの通う広島大学では、東京大学の1週間後に授業料の値上げが検討されていることが発表されました。これまで首都圏に集中していた授業料の値上げが地方国立大学にまで波及した ことについて、教育格差の深刻化を招くのではと危機感を持って受け止めています。2週間前、そ うした思いを共有する学生たちによって署名運動などの抗議活動が開始されました。その取り組 みの一つとして行われた学外者向けのオンライン署名は今日までに約5000筆が寄せられ、次第に注目を集めるようになっています。署名の請願趣旨としては、まず大学の運営におけるガバナ ンスにフォーカスし、その改善を求めるものとなっています。授業料の値上げは、最大の利害関係者である学生との本質的な対話を経ることなく、2年間も秘密裏に検討されてきました。これを 学長の選出過程といった大学運営におけるガバナンスの欠如と同軸の問題として捉え、批判す ることが重要と考えています。私たちはまず大学の独立性を取り戻すことが、本質的な問題解決 への第一歩であると確信しています。20年前の国立大学法人化以来失われてきた大学の独立性が再び取り戻されることを願い、学費の値上げを止めるために活動していきたいと考えていま す。
また、このような学費値上げの問題は、全人的な教育機関としての環境を破壊するだけでなく、 研究機関としての大学の意義すら蔑ろにするものであることを強調しておきたいと思います。授業料に頼って運営交付金をこれまでのように減額し、アカデミアの自助努力だけを学術とするならば、社会はいっそう貧しくなるほかありません。私は現在、中国哲学を学んでおり、卒業後は文系大学院への進学を志望していますが、学費の問題のみならず、こうした状況は大きな困難として私の将来に降りかかることが予想されます。哲学を学び、研究したいと考える学生や研究者に 対して、学問で金を稼ぐことを求めるならば、例えば哲学のようなあらゆる問題解決の基礎となりうる学問は必ず衰退するでしょう。文系に限らず、基礎研究の軽視はやがて社会を支える学問を崩壊させるものであり、これを防ぐためにまず大学の独立性を取り戻すことが必要であると考えています。
私たちはすべての人の学ぶ権利を守り、そして学問そのものを守っていくために、これからも活動を続けていきます。最後になりますが、本日このような発言の場を用意してくださった皆様に心 より感謝申し上げます。皆様とともに学費値上げを止められるよう、声を上げ続けますので、今後とも応援いただければ幸いです。
ご清聴いただき、ありがとうございました。